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ハイ、僕はカビの仲間です。いわゆる糸状菌ってやつですね。ほら、よく何にでもカビがつくと、菌糸がフワフワの毛みたいになるでしょ。ああいうのはみんな僕の仲間なんだなー。
発酵のときは、たいてい僕が最初に働くんだよ。だから「発酵のスターター」なんて呼ばれてる。かっこいいだろ。味噌つくりだって、ボカシや発酵肥料つくりだって、土ごと発酵だって、僕がいなきゃ始まらないってことだよ。エヘン。
味噌のところの図に出てきたように、僕だって微酸性の分解酵素を出して、タンパクとか脂肪とかを分解することもできるんだけど、本当は難しい分解はあまり得意じゃない。セルロースとかの硬いものとか、有機物の細胞の中まではなかなか食い込めないんだ。味噌だって本当は大豆の皮が硬くてイヤなんだけど、人間が前もってつぶしといてくれるから、何とか頑張ってマメにも食いついてるんだ。
それより僕の特技はね、炭水化物―つまりデンプンだな。これを分解して、ブドウ糖とか果糖とかの単糖類にすることなんだ。微生物はね、全員甘いものが好き。僕だって好きだけど、他の奴らだってみんな好きで、まず糖をなめなければ、何も活動を始められないんだ。
だけど、糖がいくつも集まってできてる炭水化物のままじゃ、大きすぎて他の奴らはすぐ食べられないだろ。みんなもそれぞれ他の仕事があるからね。僕が最初に、小さい食べやすい糖をたーくさんつくっといてやるのさ。そしたら、他の奴らは出てきたらすぐに糖を食べて元気をつけて、自分の仕事に専念できるだろ。だから、ボカシつくりなんかで僕が働いてる間は、あまーい甘酒の香りがするよ。
温度はあまり高いのは好きじゃない。25〜30度くらいの温度で活発になるから、菌の中では低温〜中温菌ってことになるのかな? だから、季節でいうと、冬が好き。ほら、酒仕込むのも、味噌つくるのも、冬でしょ? ボカシつくるんだって冬がいいっていわれてるのは、スターターの僕が元気に働けるようにってことなんだよ。
でも発酵肥料つくってる途中で、45度とか50度とかになると、僕は死んじゃうよ。死んじゃうけど、僕の出した酵素だけは働き続けて糖化作用はどんどん続く。温度も60度くらいまでは上がっていくみたいだねー。そうすると、高温好きの納豆菌の野郎が、次に喜んで出てくるんだよね。えっ? 僕? 僕は全滅するわけじゃなくて、高温の間は温度の上がってない表面とか、空気中とかに避難しとくことにしてる。胞子を飛ばせばいくらでも動けるからね。
水分が多すぎるのもあまり好きじゃない。50%以下がいいね。「ボカシ肥の水分を40%くらいに」っていってるのも、僕のために環境を整えてくれてるんだね。
好きなpHは微酸性。自然界では、涼しい山林とかによくいるよ。冬から春、落ち葉の下から土着菌のハンペンとってきたら、そこにはたいてい僕がいるよ。春先のヨモギにも、たくさんついてるよ。
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