月刊 現代農業
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巻頭特集

墓石屋さんのクズ石をタダで利用
いい水は身体にも作物にもいい

山形県川西町・松田鉄美さん

編集部

病院の「水道水」は身体によくない

 ちょうど10日前、母ちゃんのトモさん(74歳)は炊事場で急に胸が苦しくなった。それまでほとんど医者にかかったことがなかったから、父ちゃんの鉄美さん(75歳)はずいぶん心配した。病院で診てもらう頃には治まっていたものの、大事をとって入院することにした。

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 病室で、「困ったねぇ…」というトモさんに、「何も心配することはない」と鉄美さんが答えた。ところが、トモさんは「いや、そうじゃなくて、ここの水は晒粉(塩素)のニオイがして飲めないんだよ」という。鉄美さんは「なるほど水道の水か…。それじゃ、身体にもよくないな」と思った。

 そこで、鉄美さんは毎日欠かさず、作りたての“水”を1.5リットルのペットボトルに満たし、トモさんに届けることにした。もともと身体に問題がなかったのか、やはり普段から飲み慣れている水が効いたのか、さまざまな検査の結果、特に異常なし。トモさんは1週間で退院し、今は元気そのもの。

水づくり装置内
水づくり装置内の花崗岩、サンゴ化石、軽石、備長炭。曝気で岩石が水に溶けて丸く小さくなり、最後はなくなる
松田鉄美さん
松田鉄美さん。「ミニトマトが無農薬無化学肥料で栽培できるのも、この水のおかげ」

みずみずしい水がツヤのない水に

 「このあたりじゃ子供の頃、みんな川の水を飲んでいた」と鉄美さんはいう。「それが、昭和20年代に掘り抜き井戸ができてな。川から汲み上げなくても、ひとりでに水が噴き出て飲めるようになった」。飯豊山地の伏流水がそのまま湧き出たみずみずしい水である。それ以来、きれいな河川水を田畑に、おいしい井戸水を生活全般に使った。

 ところが、昭和30年代になって上水道がやってきた。炊事場で蛇口をひねれば水が出るから便利には違いないが、塩素のニオイが気になる。それに、ダム(米沢湖)でいったんせき止められ、延々とパイプ伝いに引かれたツヤのない年老いた水である。

 とはいえ、あらためて井戸水に戻るのも気が引けた。というのも、不便だからではなく、「何となく気持ちが悪い」からだった。「その頃には、みんな田んぼにどんどんクスリや化成を振り始めてたんだ。水の色や味が変わるわけじゃないが、身体によくないんじゃないかと思ってな」

 しかし10年前、鉄美さんはとうとう水道水にガマンできなくなった。ちょうど家庭用浄水器が普及し始めた頃で、「そいつを自前で作ってやろう」と思い立った。それも「どうせなら塩素を消すだけじゃなくて、身体にいい水を作ってやろう」と。

水と岩石の力を曝気で引き出す

河川水
キレイな水
河川水(上)を装置にかけると1日でキレイな水に(下)。目に見えない変化も起こっている

 装置といっても小さなステンレス製の箱に岩石を入れ、水道水を満たして曝気し、使ったらその分の水を継ぎ足していくシンプルな構造。曝気には、水に酸素を溶かしたり、水の物性を変えたり、水だけでは溶けにくい岩石を短時間で溶かすなどの働きがあると聞く。

 岩石は重量比で水の5%が目安で、箱の容積約40リットルに対して2kgくらい。溶けて減ってきたら追加する。鉄美さんが使っているのは次のような岩石。

 花崗岩 墓石屋さんから御影石のクズ石をタダでもらってくる。落ちている石の塊を拾って軽トラに積み、家に持ち帰ってからハンマーで適当な大きさに砕いて使う。多種類のミネラルが含まれており、水への直接的な波動作用もあると考えている。

 サンゴ 長崎県島原の知り合いから、海岸に打ち上げられたものを送ってもらい、海水を洗い落としてから使う。岩石というよりも化石のようなもので、カルシウムが豊富に含まれている。

 軽石 ホームセンターから買ってくる。無数の小さな穴で水の汚れをとったり、花崗岩とは組成の異なるミネラルを含んでいる。

 備長炭 これもホームセンターで買ってくる。岩石ではないが、軽石と同様に無数の小さな穴で水の汚れをとるほか、遠赤外線効果がある。遠赤外線は急激に焼き上げた炭よりも、3〜4日かけてゆっくり冷ました炭のほうが強いようだ。樹木のミネラルも含んでいる。

家庭用の水づくり装置

曝気で水と岩石の力を引き出す!
冷蔵庫隣のステンレス製の箱に水道水を入れて曝気し、飲用・調理に使う

水で味が変わる、身体が変わる

農業用の水づくり装置

河川水を5tタンクに注ぎ込む
中には岩石の入ったケース(この下から曝気する)
岩石はネットで吊るしてやってもOK

 水は新規に汲んでも、この装置で1時間くらい曝気すれば塩素のニオイが抜け、口当たりがやわらかくなって味が変わる。呑み仲間は「焼酎のお湯割りがうまい」、コーヒーがダメな娘さんは「ここでいれたのはおいしい」という。

 変わるのは味だけでない。近所で、1年前からこの水を汲んでいく人がいて、「不整脈がよくなった」とか、「胆石がたまらなくなった」という。食事の前にクスリを飲まないと胃が動かない人がきた時は「水を飲んだだけで胃が動き出した!」といった。ちなみに、その人はお医者さんだった。

 明らかに水道水とは異なる特徴もある。「この水を大学の先生に調べてもらったら、pH8.0以上のアルカリ性。沸点も110度くらいと高い。それに真夏でも水が冷たい」という。pHや沸点はカルシウムなど塩基類が溶け込むからか? 水温は曝気によって気化熱が奪われるためか?

 そのほかにも「生け花が15〜20日間は長くもつ」とか、「食品の色が冴えて褪めない」とかで、「いっそ、特許を取ったら?」と勧めてくれる人もいた。しかし、鉄美さんは「とにかく身体にいいんだから、みんな自由に真似ていい」と、求められれば隠さず作り方を教えている。

無農薬無化学肥料も水のおかげ

 身体にいい水だから作物にもいい。家庭用と仕組みは同じだが、農業用は水道水ではなく河川水で、装置も大きなものにする。5tタンクに岩石250kgをネットで吊るし、汲み上げた水を曝気する。これを雨よけハウス13aのミニトマト(4月上旬定植〜11月いっぱい収穫)、冬のホウレンソウ、イネ育苗のかん水に使う。

 まず、病害虫が出ても広がらない。鉄美さんは「水が病害虫に直接効いているのではなく、作物に効いているから」という。作物が水そのものやミネラルで活性化し、耐病虫性を高めるのだろう。「一度も石灰を振ったことはないが、尻腐れが出たり、下葉が枯れたことはない」というから、カルシウムも効いている。さらに、「ボカシ肥のアミノ酸効果を水が引き出してくれるようで、味がよくなる」という。

ホウレンソウ
水のおかげで、ピシッと葉が立つホウレンソウに

 すべて無農薬無化学肥料で、3年前に有機認証も取った。ミニトマトは破格値で取引、ホウレンソウも葉っぱが厚くて色がよく、日持ちもいいから引き合いが強い。また、紙マルチ栽培1.5haの田んぼでは、炭と軽石をネットに入れて水口に置き、河川水の汚れを取り除く。10aあたり7俵しかとらないが、1俵ン万円でさばいている(それぞれの単価はヒミツ)。

 このみずみずしい水づくりが今、鉄美さんの周りで静かに広がっている。

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