月刊 現代農業
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大人気となった篠塚さんのベビーリーフをサラダにしたところ
大人気となった篠塚さんのベビーリーフをサラダにしたところ。ルッコラ、デトロイト(食用ビート)、グリーンロメイン(レタス)、レッドオーク(レタス)、ミズナ、レッドアジアンマスタード(カラシナ)、ターサイの7種類をブレンドし、袋詰めにして出荷

次にくるのはミニ!
1本30円で売れる超密植のミニダイコン、ミニニンジン

千葉県多古町・篠塚正男さん

時代を先取りする人は、ミニ野菜に注目する

 「ミニダイコンとミニニンジンは2年前にホテルのレストランに納めている業者から頼まれて始めたんですけど、最初は売れないだろうとバカにしていました。でも、これが1本30円で売れるんですよ」

 篠塚正男さん(右の写真)は、約4町歩のハウスで、ベビーリーフなどのサラダ用野菜を無農薬・無化学肥料で周年栽培し、県内のこだわり野菜を扱う業者に出荷している。パートは常時40人以上で、年間の売り上げが約2億円の経営だ。

 経営の7割を占めるベビーリーフは8年前に始めたものだが、当時は国内で作っている人も少なく、世の中のサラダブームとも重なって、爆発的な人気となった。時代の流れをキャッチして、いち早く経営に取り入れる。そんな篠塚さんが、いま目を付けているのがミニダイコン、ミニニンジンといったミニ野菜なのだ。

シェフが求めるミニ野菜

 レストランのシェフは他店との差別化を図るため、お客さんが喜ぶ新しい食材を常に求めている。

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 ミニダイコンやミニニンジンがどのように使われるかというと、ハンバーグやステーキなどの肉料理の付け合わせにするそうだ。緑の葉を少し残し、皮を剥いて1本ずつセットにして肉料理の脇に添える。そうすると、白と赤の彩りがよく、見た目にも愛らしい。そのままサラダとしてかじることができるので、食感もよくて、味もさわやか。従来の甘い角煮ニンジンとはまた違った、まったく新しい感覚の付け合わせができる。

珍しい野菜は「外食→家庭」の順で流行る

 「珍しい野菜は最初売れるかわからないけど、外食でうけると、だいたいは流行りますね。

 ベビーリーフもそうだったけど、まずはホテル系の外食から始まって、次にファミリーレストラン系。それから百貨店やスーパーに行くというパターン。この流れは決まっています。消費者はレストランで食べたものが美味しいと、今度は自分で買ってきて家でも食べてみたくなる。『あの野菜はどこで売っているの?』と、いろいろなところで話す。すると、どんどん需要が増えてくるでしょう。

 ミニ野菜は、どこまで増えるのかまだわからないけど、今はその時期を待っているという段階ですね」

ずらーっとハウスが並ぶ。なんと、全部で151棟も
ずらーっとハウスが並ぶ。なんと、全部で151棟も。ベビーリーフをはじめ、回転率のいい葉物野菜が主体なので、毎日必ずどこかのハウスで、播種、収穫が行なわれる

 この2年間で、ミニ野菜が欲しいという業者は1社から5社に増え、3畝でスタートしたものが、いまは2反歩ほどになった。

 ちなみに、ミニダイコンは1週間単位の契約で、1日の出荷量は80〜100本くらい。多いときだと300本くらいの注文もある。

ダイコン18倍、ニンジン12倍の密植!

 篠塚さんは以前、春と秋に普通のダイコンやニンジンを作っていたことがある。それに比べるとミニは軽くて扱いやすいし、なんといっても回転率が上がるのがいい。それでいて1本30円となると、普通サイズのものと実際のところ値段もほとんど変わらないのだ。

 いま作っているミニダイコンの品種は「雪小町」(サカタ)。播種してから収穫までが冬以外の時期だとだいたい25日。夏に1カ月間、ハウスを熱水消毒するのだが、その期間を考えても年間7〜8回転はできる。植え付け本数も10a当たり普通サイズが5000〜6000本のところ、株間とウネ間から計算すると、約18倍の数が植わることになる。ちなみに、株間3〜4cmでウネ間は20cm。

収穫適期のミニダイコン
収穫適期のミニダイコン。「葉の部分はもうちょっとコンパクトに作れるといいな」と篠塚さん
このように曲がってしまうともう出荷できない
このように曲がってしまうともう出荷できない。とくに暑い時期が難しい

 ミニニンジンのほうは「ピッコロ」(タキイ)と「ベビーキャロット」(サカタ)。こちらは播種してから収穫までが冬以外の時期だと約60日で、年間3回転。植え付け本数は10a当たり普通サイズが3万〜3万5000本のところ、約12倍の本数が入ることになる。ちなみに、株間2cmでウネ間は15cm。

全部うまくできれば儲かるが…

 「これが全部うまくできれば儲かって仕方がないけど、難しいですよ。ちゃんと出荷できるのは5割くらいです。うちの場合、契約だから周年でやらないといけない。揃わないと大変なことになる。だからその分、面積を増やしてカバーしているという感じですね」

 外食との契約は値段がいいが、規格が少し厳しいらしい。まず、サラダ用として使われるので葉が綺麗でないといけない。形もまっすぐで見た目も綺麗なものが求められる。太さと長さはちょうど薬指くらいが理想的。直径1cmくらいで、長さは8〜9cmくらい。これ以上長くなったり、形が揃わないものは取り扱ってもらえないのだ。

ミニダイコンの難しいところ

▼夏場は奇形が出やすく、スが入りやすい

 ミニダイコン作りで一番難しいのが夏場。ダイコンの生育適温は20度くらいで、これはミニでも同じこと。だが、ハウスの中だと簡単に35度以上になる。地上部に出た首の部分が暑さで細くなってしまい、地下部のほうは涼しいせいか膨らんで、団子形のいびつなダイコンになってしまう。

 それで、篠塚さんは昨年から遮光率50%の遮光資材をハウスの屋根にかけた。すると生育はよくなったのだが、出荷できる大きさになると、今度はハウスの両サイドから入る光を求めてダイコンが「くの字」に曲がってしまうようになった。出荷時期になってから少しでも時間を置いてしまうと、すぐにスが入ってしまうことにも驚いた。

ミニニンジン
かじってみるとミニニンジンは甘みがあって、ミニダイコンはシャキシャキとした食感がたまらない。どちらもじつにさわやかな味。上にあるのは普通のニンジンで、その下は最近試作した紫ニンジン

 暑くても作れるミニ品種が出てこないかぎり、これらの問題の解決は難しそうだ。

▼収穫適期は3日間

 収穫適期も短い。夏場のミニダイコンは3日間しかない。今日とれなかったら明日は出荷できない、篠塚さんはそんな気持ちでミニダイコンを見るようにしている。 

▼かん水を分けないと辛くなる

 それから、最近わかってきたことはかん水。葉物だったら播種後にたっぷりやって、その後はいっさいやらないほうが、根が深くまで張っていいものができるのだが、ミニダイコンで同じようにすると、口から火が出るような辛さになってしまう。だから、播種後、発芽してから10日後、15日後の3回に分けてかん水するようにしている。そうすると辛味も抜けるのだそうだ。

ミニチンゲンサイのクーニャン
ミニチンゲンサイのクーニャンも5畝ほど作る。普通のチンゲンサイは2個で50円だが、こちらは3個が100円で売れる。注文数はそれほど多くないが、作りやすい。「さらに小さい一口サイズの品種ができれば、もっと売れると思うよ」と篠塚さん

ミニニンジンの難しいところ

▼9月まきは根が長くなる

 ミニニンジンで困るのはまき時期によって、根が長くなりすぎてしまうこと。最近わかってきたことは、9月10日〜20日の間に播種すると根が異常に長くなりやすいということだ。

  「お盆までならまったく問題ないけど、その後、9月に入ってからまいたものはダメですね。どうしてかわからないけど、そういう性質があるみたい」

▼黒葉枯れとウドンコ

 それから、ニンジンはダイコンのように曲がったりスが入ることはないのだが、病気で葉がやられやすい。秋は黒葉枯れ病が出やすく、梅雨時期にはウドンコ病が出る。とくにウドンコは一度出るとしつこい。葉がやられてしまえば、いくら根が綺麗でもミニニンジンとしては出荷できない。

防虫ネット
すべて無農薬なので、害虫対策としてハウスに1.0mmの防虫ネットをつけている。最近は0.4mmも入れ始めた
赤軸ホウレンソウを収穫
サラダ用として人気の高い赤軸ホウレンソウを収穫。えぐみのないサラダを作るために堆肥にはかなりのこだわりがある。トウモロコシ、ソバ、ダイズなどが原料の3年熟成させたものを年に一度、ひとハウス(約3畝)に8tくらい入れる。肥料はこの堆肥のみ

 篠塚さんは無農薬栽培なので、病気対策としてpH2.2の強酸性水を葉面散布する。すべて抑えられるわけではないが効果はある。ただ、かける回数は1作で2回までで、それ以上かけると葉がいじけてしまうのだそうだ。

 ちなみに、ミニニンジンは、ミニダイコンのように収穫適期が数日間ということはない。1カ月近くはそのままにしても形が変わったりしないので、その点は扱いやすいのだそうだ。

えっ!?「わーふぁ道本」

 こうして悪戦苦闘しながらも、ミニ野菜の周年栽培を確立すべく、新しいことに挑戦する篠塚さん。自身でつけた農園の名前「わーふぁ道本」からも、その経営の考え方がわかる。

 「変わった名前でしょう。ワールドの『わ』とファーマーの『ふぁ』。ゴロ合わせだけど、世界に通用する農業で、輸入野菜に負けない農業を、という意味。それから道本は家の屋号。

 最初は覚えづらくて意味もわからない。みんな『なんだろう?』って、気になって質問したくなる。一回じゃ覚えられなくて、何度か聞くと二度と忘れない。わかりやすい名前はすぐに覚えてもらえるけど、印象に残らないでしょう。これも一つの作戦ですね。

 うちの農業はすべてがこんな発想で展開しています。人と同じことをしていたら生き残れない。今、消費者が求めているものは何か、次に求めるものは何か、何を作れば消費者が買ってくれるか。そこから供給が追いつかなくなるような食材を見つけて、作付けするようにしています」

 時代を先取りする男・篠塚正男さんの経営方針である。

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