新田みゆきさん(北海道稚内市)の卵の黄身はレモンイエロー 自然卵養鶏 うちの卵の黄身の色
道産小麦と牧草で「レモンイエロー」
新田みゆき
日本最北の街で自然卵養鶏
私は日本最北の街、北海道稚内市で250羽の平飼い養鶏をしています。農場の名前は「レラ」。自然に沿う暮らしを営んできた先人たちへ敬意をこめて、「風」という意味のアイヌ語から名付けました。
ここに移り住み、養鶏を始めて10年。厳冬期にはマイナス20度を下まわる日も珍しくなく、気温の低下とともに産卵率を激しく下げてしまったこともありました。今は床を十分に発酵させ、その熱で鶏舎内の温度を保つようにしています。
また、サロベツ原野が近く、サケが自然産卵する川が敷地内にあります。そのような豊かな自然環境のためか、クロテンやオコジョ(イタチの仲間)など希少種の鶏舎襲撃(?)に頭を悩ませたこともありました。
さらには1年半前の春、鶏舎が全焼し、鶏たちも全滅。生産活動がストップするという大きなアクシデントがありました。でも、たくさんの方から励ましをいただき、夫が5間×10間の木造倉庫を鶏舎に改築して再出発しました。鶏舎はエサづくりの作業場のほか、2つに仕切ってあり、育すう用に2間×4間、成鶏用に4間×6間(250羽1群)です。
農学や畜産学を学んだこともなく、研修経験もない素人の私が、なぜ、試行錯誤しながら鶏を飼うことになったのか? それはある出来事がきっかけでした。
筆者 娘のトウモロコシアレルギー
「えっ、トウモロコシも!?」
娘は生後6カ月のとき、アレルギー専門の病院で血液検査を受けました。その結果を聞いて、思わず出た言葉です。
アトピー性皮膚炎がひどかった娘の血液中のIgE(アレルギー抗体)は、3大アレルゲンと呼ばれる、牛乳・卵・大豆のみではなく、トウモロコシにも高い数字が出ました。何より驚いたのは、そのとき娘が口にしていたのは母乳が主だったことです。まだ一度も、疑わしい食べものを直接口にしたことがなかったのです。
鶏舎の発酵床とアルミサッシで寒い冬を乗り切る 診察したドクターからは「アレルギーは複雑な要素がいくつも絡み合って症状が出るので、血液検査のみで食物アレルギーを確定することは難しい」と説明を受けました。けれども、娘は私の母乳を通して間接的に口にしたにもかかわらず、アレルギーが誘発されたのです。食べものが身体に与える影響をあらためて感じさせられました。食べものの大切さが腑に落ちた出来事でした。
こうして身をもって経験してみると、家禽、家畜のエサのほとんどがトウモロコシであることが、とても気になり始めました。
そこで「トウモロコシを食べていない鶏の卵だったら、どうなのだろう?」といい出した私に、「やってみよう!」と夫が応えました。廃鶏10羽と小さな鶏小屋を用意してくれて、庭先で飼い始めることに。
日中は自由に鶏小屋と外を行き来できるようにし、穀物はクズ米や道産小麦の等外品を与えました。その鶏たちが産んだ卵をゆで卵にして、娘にひと口食べさせてみたところ……、アレルギー反応は出ませんでした。うちの娘は卵そのものに反応していたのではなく、鶏たちのエサとして与えられていたトウモロコシに反応していたようです。
緑餌は牧草を1羽1日100g以上、不定期ながらクズ野菜なども 稚内市内・Aコープ店舗の卵売場。うちの卵(矢印)は6個入り298円 ありのままの飾らない卵がほしい
その後、縁あって、自然卵養鶏を営んでいた方から成鶏を400羽買い取ることになり、平飼い養鶏家としての生活が始まりました。その卵を娘が食べられるよう、今でもうちの鶏たちのエサは道産小麦の等外品が主体です。そして地元のお米屋さんの米ヌカとホタテの貝殻、炭カルに、裏山で採った山ブドウの酵母を混ぜた自家配合飼料です。タンパク源には、稚内市内のサケフレーク工場から出る加熱済みの残渣を与えています。
世間では「いい卵、値段の高い卵は黄身の色が濃い」というイメージがありますが、小麦など色素の少ないエサを食べている、うちの鶏たちが産む卵の黄身の色は、レモンイエロー。黄身の色を濃くするための添加物は加えておらず、淡く色づいているのは緑餌によるものです。クローバーやオーチャード・チモシーなどの青草を1日当たり30kgほど刈って与えます。青草がない時期には、この辺りにたくさん生えているササやジャガイモやカボチャの規格外品を与えます。
生産者として、卵黄色と給与飼料の関係についての資料なども読みましたし、台所に立つ主婦として料理の見た目の大切さや、彩りとしての卵の役割も理解できます。でも母親としては、鶏たちが四季折々どんなエサを食べているのか様子を知ることができる、ありのままの飾らない卵がほしいと思うのです。いい卵は鶏が健康だからこそ。
今、気がかりなのは、黄身の色の濃さうんぬんよりも、冬場に血斑のある卵が時々見られること。これは鶏たちに何らかのストレスがあるサインです。もしかして小麦がトウモロコシに比べてビタミンAが少ないからか? 緑餌が少なくなるからか? 対策を思案中です。
これからも「いい卵ってどんな卵?」と自分自身や家族やお客さんに問いかけながら、丁寧なものづくりを心がけていきたいと思っています。
(北海道稚内市上勇知 ファーム&スペース・レラ)
お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp
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