山下美佐子さん(58歳)「これからわが家の酵素を作りまーす!」(赤松富仁撮影、以下Aも)
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飲んでよし、かけてよし
自分だけの「手作り酵素」熊本県合志市・野口清隆さんほか
編集部
こんだけ作物によかれば、人間にもよかばい
熊本県植木町のナス・ニガウリ農家・園木さん夫妻が植物酵素液「手作り酵素」を知ったのは12年前。「身体にいいから」と知人から一升ビンで譲り受けた。さっそく母ちゃんの淳子さんがコップに注ぎ、水で倍に薄め、口に含んだが「ウワッ。甘すぎて、とても飲みきれん」。そのまま台所の棚の奥にしまい込んだ。
ところが3年後、父ちゃんの薫さんが「いつぞやの酵素を出してくれ」といい出した。ナス苗にダニがつき、芯が止まったからだ。もう生長点がやられているから、クスリをかけても仕方がない。ダメでもともと、植物酵素液を1000倍に薄め、如雨露でかけてみた。すると、何と、3日後に新しい芯が出てきた! 驚いた園木さんらは「こんだけ作物によかれば、人間にもよかばい」と、自分たちで手作りすることにした。
植物酵素液は作物にも身体にもいい。左から野口清隆さん(76歳)、園木薫さん(59歳)、淳子さん(55歳) 淳子さんは以前、スイカを作っていたときから体調に不安を感じていた。春の交配時期は朝3時に起き、トンネルの中で1日しゃがみ仕事。ときどき天井パイプに中腰のままぶら下がって背筋を伸ばす。昼は気にならないのに夜中の2時ごろ、ちょっと寝返りを打っただけで腰と膝に激痛が走り、目が覚める。しまいには寝るのが怖くなり、毎晩12時まで起きていた。夏の収穫時期は1個6kg前後のスイカが1万玉。畑が道よりも下にあるぶん、トラックの荷台まで抱え上げなければならない。
トンネルが連棟ハウスに、スイカがナスとニガウリに替わって下半身の痛みは和らいだが、肩こりがひどく、頭痛に悩まされた。それが毎日、朝食前にコップ1杯、植物酵素液を飲むようになってからは、ウソのように治まった。
園木薫さんのナス。台風にやられて1カ月たっていないのに、芯に勢いがある(A) 節間が詰まり、葉が厚くなり、実にツヤ
手作り酵素は北海道帯広市の整体師・河村文雄さん(62歳)がみずからの慢性肝炎を治すために編み出し、それが全国に広がったもの。いろいろな旬の植物などを、発酵菌と一緒に白砂糖に漬け込んで発酵・熟成させた植物酵素液だ。
淳子さんは、この植物酵素液を飲むと身体の疲れが早くとれ、風邪が早く治り、傷口に塗れば早く癒えた。通いつめていた病院も定期健診だけになった。お通じがよくなり、肌もツルンツルン。そこで「こんだけ人間によかれば、作物にもよかばい」と、もっとたくさん使ってみることにした。手作りだから、おカネも気にならない。園木さんの場合、素材は6〜7月に大量に出るニガウリの規格外が使える。
ナスはセンチュウ対策に土壌消毒剤を処理して1カ月後の8月上旬に定植したら、植物酵素液を週1回ずつ、1000倍で殺虫剤に混ぜて散布する。これで節間が詰まり、葉が小さく厚くなり、実にツヤが出る。曇天が続いても新芽や腋芽の伸びが鈍らない。植物酵素液のベタベタが虫の気門を塞ぐのか、殺虫剤の効きもよくなる。
上は山下さんの秋の酵素作り素材(根菜・果実・穀類)と材料(A) ※春の素材はヨモギ、タンポポ、ウド、セリ、コンフリー、フキなどの野草、チモシー、クローバ、オーチャードなどの牧草、サクラ、ヤナギ、カシワ、ササ、タラノメなどの新芽・新葉 園木さんのほかにも「効いた」という農家は少なくない。「トマトは茎の途中、散布を始めた時点から上が急に太くなった」「キュウリは節間が普通なら伸びてしまう八節以降でも詰まったまま」「イネは苗にかけると追肥しなくても色落ちせず、ズングリと丸みを帯び、根がらみもよくなる」「お茶にかけると、新芽の伸びが早くなり、厚みが増し、そろいがよくなる」などなど。
自分の常在菌で自分に効果的な植物酵素液
熊本県では山都町のイネ種モミ生産農家・山下邦征さん・美佐子さんが最初に手作り酵素に取り組み始めた。仕込み・発酵・熟成法は55〜57ページ、作り方のポイントは次の通り。
旬の素材を多種類 素材はその土地、その時期、その農家でもっともふんだんに手に入るものを主にする。ただし、一種類の酵素には一種類の働きしかないので、副素材は少量ずつ多種類を加え、さまざまな働きを持たせるようにする。美佐子さんは「家の周りに何が生えているかわかるようになった。それも楽しい」という。
春に作り、秋に作る おおまかには、春に作って夏に使う酵素は身体を冷まし、秋に作って冬に使う酵素は身体を温める。これは作物も同じで、「春の酵素」は伸長を促し、暑熱害を和らげ、「秋の酵素」は蓄積を促し、寒冷害を和らげる。ただし、厳密なものではなく、夏にウメで作ってもいい。
自分の常在菌で発酵 美佐子さんは「いちばん大切なのは途中、自分の素手でかき混ぜ、付着している常在菌で発酵させること」という。常在菌は人それぞれで違うから、出来上がる酵素も人それぞれ。それがその人にとってもっとも効果的な酵素になっている。
陸のものに海のもの 旬の素材を発酵させて作った「陸の精」には、最後に「海の精」を混ぜる。海のものを混ぜるのは、陸のものだけでは補いきれない成分を加えたいから。とりわけ酵素の働きを補うミネラル分やアミノ酸に富んでいる。
手作り酵素の仕込み 旬の素材を新鮮なうちに切る(かたいものは細かく)(A) 素材10kgに対し、発酵菌1袋、白砂糖11kgをよく混ぜ合わせる(A) 常温の薄暗い場所に静置。ゴミやホコリが入らないよう軽くフタをする(A)
(「手作り酵素の元 海の精」パンフレットより) 手作り酵素の発酵・熟成 毎日1回、素手でかき混ぜながら、5〜7日間発酵・熟成させる ザルにあけたり、ネットで吊るして荒搾り。ゴミが入らないようナイロン袋をかぶせる ザルの上にガーゼやさらしを敷いて本搾り。澄んだエキスになる エキス10〜12リットルに対し、海の精1本(720ml)を加え、よく混ぜる 1〜2リットル入りの容器に詰める。栓は緩めるなどして、密閉しない 冷暗所で保管。飲用の目安は朝・夕30ccずつを好みの量の水で割る 活きた酵素が安価に手軽に、甘くても安心
邦征さんは「手作り酵素のいいところは酵素が活きていること」という。人間用の市販酵素は食品衛生法の関係で加熱殺菌されていることが多く、それでかなりの酵素が失活している。農業用であっても、さらに発酵が進んで容器が破損したり、中身が変質したりしないよう、何かしら酵素の活性を抑える手立てが施してある。
山下邦征さん(63歳)が常備する素材別手作り酵素(A) 当然ながら、手作りだから安い。山下さんは手作り酵素を年間100リットルくらい作る。経費は発酵菌(ケルプ10個)が2万5000円、白砂糖が110kgで1万6500円、海のもの(海の精10本)が8万7000円だから、ぜんぶで12万8500円。飲用・散布濃度を考慮しても、市販酵素より相当安いはず。
人間用も作物用も同じものだから利用に融通が利く。たとえば山下さんは、上のほうの澄んだところを人間用に使っていき、下のほうに残っていく濁ったところを作物用に使う。作物用はかなり薄めて使うので不足することはない。
しかし、手作り酵素の初心者にとって、いちばん気にかかるのが、この甘味。人間用は倍に薄めるとはいえ、毎朝コップ1杯ずつ飲み続けたら、太ってしまうんじゃないか? 作物用は1000倍に薄めるとはいえ、甘いニオイでかえって害虫が寄ってくるんじゃないか?
しかし、邦征さんは「発酵でショ糖がブドウ糖に変わっているから大丈夫。ショ糖は太るがブドウ糖は太らない。ショ糖は虫のエサになるが、ブドウ糖はエサにならない」という。甘味が苦手な人は、塩を少し加えると飲みやすい。春の酵素は野草類が多いのでややクスリくさいが、1〜2年熟成させると気にならなくなる。
農家ならば植物酵素液を自給できる
合志市の野口清隆さんはもと市販酵素の営業マン。現役を退いたとはいえ、今でも園木さんや山下さんなど、付き合いのある農家に酵素資材を販売している。にもかかわらず、作物用に手作り酵素を勧めてまわるのは、市販酵素に引けをとらない、いや、それ以上の効果を認めているからだ。
野口さんは「とりあえず、マニュアル通りにやれば、誰でも失敗せず、早く確実に作れる」という。しかし、農業用に限れば、素材、発酵菌、砂糖、海のものを農家が自給できるもので代用したり、ほかの方法でまかなえないわけではない。たとえば「上手に発酵させる自信があれば発酵菌は必要ないし、必ずしも白砂糖でなくてもいい」という。
黒砂糖は精製度が低く、浸透圧が低い分、抽出が遅くなったり、雑菌も繁殖しやすいが、作れないわけではない。もしも酒造りのように穀類(デンプン)をこうじや麦芽で糖化すれば(これも酵素の働き)砂糖も必要ない。素材は一度に多種類そろわないからといって買ったりせず、それぞれタダで手に入ったときに作り、あとで混ぜてもいい。
「海のものも必ずしも海の精でなくていい。コンブやワカメなどの海藻類、魚のアラなどが手に入るのなら、それを手作り酵素にして使えばいい」という。陸のものと別に作って最後に混ぜてもいいし、最初から混ぜて作っても構わない(海の精のように濃縮されていないので、なるべく海のものを多くする。できれば海と陸とで7対3くらいの割合がいいらしい)。
ただし、素材はなるべくなら酵素の多い状態・時期を選んだほうがいい。たとえば果実は皮を剥かない。太陽の光が当たって代謝が進むのか、「酵素は実と皮の間のところに多く含まれる」(皮ばかりで作ってもいい)からだ。また、穀類は仕込みの前日から水に浸しておく。発芽にともなう酵素を働かせるためだ。
さらに、あえて果実を未熟な状態で、たとえばカキはピンポン玉くらいのときに、ウメはツヤが出てきたばかりの小さいときに使う手もある。「果実は糖化が進む前が、もっとも糖化酵素を高濃度に含んでいる」からだ。
農薬で弱くなった微生物の働きを酵素で補う
野口さんは「酵素は作物に直接利用されるわけではない」という。そもそも酵素は分子が大きすぎて吸収できない。葉面散布で光合成が促されるのは、おもに分子の小さいブドウ糖が吸収されるからだろう。酵素は土壌中の有機物を微生物や作物が利用しやすい形に変える。それで活性化した微生物は、さらに有機物を作物にとって利用しやすい形に変えたり、土壌病害を抑えたりする。
酵素による生成物、微生物による分泌物はアミノ酸など肥料分のほか、ホルモンなどの生理活性物質も含み、作物に供給されるのだろう。野口さんが農家に勧める手作り酵素の作物への使い方は次の通り(いずれも葉面散布)。
イネ 1200倍に希釈。育苗期に発根促進で播種後半月くらい、芽が3cm伸びたときに1回、田植え直前に1回、田植え1週間後に分けつ促進で1回、田植え2カ月後の幼穂形成期に穂の充実に1回。
果菜 1000倍に希釈。スイカやメロンでは育苗期に1回、以降、着果棒を立てるたび、玉肥大に1回ずつ。キュウリやトマト、ナスは育苗期に1回、収穫が始まったから10日おきに1回ずつ。なお、酵素で養分吸収がよくなるので、肥料切れに注意する。
葉菜 1200倍に希釈。ハクサイやキャベツは結球が始まったときに1回。ホウレンソウは本葉3〜4枚のときに1回。
果樹 1000倍に希釈。使用目安は特にない。山下さんはカキで8月中旬の摘果のときに1回、殺虫剤に混ぜて散布している(玉肥りがよくなる)。
野口さんは「酵素は生命ではなく、触媒だから農薬の影響を受けない。今の農地は農薬で微生物が弱くなっている。その働きを補ってやるのが酵素だ」という。
※発酵菌・海の精など、手作り酵素に関するお問い合わせは 十勝均整社まで
お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp
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