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野菜・花

徒長させない苗つくり
青木東洋さん
青木東洋さん。手に持っているのがブロッコリーの苗。約5町歩の畑で、レタス、ブロッコリー、エダマメ、ニンジンなど露地野菜を中心に栽培(写真は※以外、すべて赤松富仁撮影)

重たい「覆土」と強い「光」で苗が変わった
悪天候にも負けないブロッコリー・レタスの苗つくり

茨城県八千代町・青木東洋さん

編集部

重たい覆土で徒長を防ぐ

重たい覆土で100%いい発芽

 2005年9月号で紹介したように、茨城県八千代町の青木東洋さんは、ブロッコリーのセル苗の覆土にバーミキュライトを使うのをやめ、それより8倍も重い稲作用育苗培土に替えた。以来、ずんぐりむっくりしたいい苗ができるようになった。

 「軽い覆土をしていたときは、ひょろひょろした苗や抜け上がりする苗が出て、気にくわなかったけど、重たい覆土にしたら、そういう苗が100%なくなりましたね」

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 今回は、そんな苗を実際に見るべく、昨年12月27日、ちょうど冬春の育苗が始まった現場にお邪魔させていただいた。

エチレン効果でずんぐりむっくり

 育苗ハウスにある苗は3月どりのブロッコリーとレタス。冬春はセルトレイではなくペーパーポットを使っているのだが、発芽し始めたブロッコリーの苗は、重たい土塊(覆土)を押しのけようと踏ん張っており、まるで音でも聞こえてきそうな感じだ。隣のトレイにある発芽し終わった苗はというと、胚軸も短くて太く、たしかにずんぐりむっくりした苗が出揃っていた。

ブロッコリー苗
重い覆土を押しのけて出てきたばかりのブロッコリー苗。胚軸が太く短く、いかにも丈夫そう

 「やっぱりエチレンの効果でしょう」

 青木さんは「植物が発芽するときにストレスを与えるとエチレンが働いて、胚軸が太くなり、ずんぐりむっくりしたものになる」と書いてあった本(『植物ホルモンを生かす』太田保夫著・農文協)をヒントにしてこの育苗を始めたのだ。

 同じ農事組合法人の仲間8人も、この話を聞き、さっそく重たい覆土を使い始めたところだが、皆口を揃えて「胚軸の伸びが少なくなった」と言っているそうだ。

発芽後の管理要素は4つ

稲作用育苗培土をまく
覆土にバーミキュライトより8倍重い稲作用育苗培土をまく
稲作用育苗培土(左)とバーミキュライト(右)
稲作用育苗培土(左)とバーミキュライト(右)。これで同じ40g。体積量は約8倍違う(※)

 「でも、覆土はあくまでも発芽のときだけの問題」と青木さん。徒長させずにいい苗をつくるには、その後のステージの管理も重要で、なかでもキーになる要素が4つあるという。それは、「光」と「温度」と「水」と「風」。

 では、ずんぐりむっくりしたいい苗に仕上げるために、青木さんは発芽後の管理をどのようにしているのだろうか。

光で徒長を防ぐ

▼光をいかに直接当てるかが重要

 青木さんがいま、もっとも意識しているのが光だ。とくにレタスは光を欲しがる作物なのでなるべく光を当ててやりたい。しかも「朝の青い光が生育によく、徒長も抑える」と『農業技術大系・野菜編』で読んだ。実際畑でも、朝日がよく当たる東側のウネはレタスの結球もよく、いいものがとれるということを青木さんも以前から感じていた。

 そんなことから、青木さんは育苗でも朝日の当て方を意識して、ハウス(南北ハウス)に置く苗の場所を決めている。とくに光を好むレタスは西側に並べ、それに比べると光には少し鈍感なブロッコリーは東側へ並べる。

大きな土塊を持ち上げてくる
こんな大きな土塊を持ち上げてくる

 青木さんの育苗ハウスは屋根に近い肩のところと地際に近いサイドの二段換気ができるのだが、まず、朝日が昇ってきたら東側の肩の部分を最初に開ける。すると、レタスの苗にちょうど朝日が直接当たる。そして、少し気温が上がってきたら東側の地際に近いサイドも開け、今度はブロッコリーにも直接光が当たるようにしている。

▼弱い苗は昨年の猛暑でかなり枯れた

 でもなぜ、青木さんがそれほどまでに光にこだわっているかというと、昨年の夏の出来事が大きなきっかけだ。

 昨年の夏はものすごく暑く乾燥も激しかったので、レタスは定植後、焼けるように枯れたり、活着が遅れたりして、いいものがとれない人が多かった。なかには全滅した圃場もあったという。

青木さんの育苗ハウス
青木さんの育苗ハウス(手前が北で奥が南)。天候を見ながら「光」「温度」「風」を意識して、肩換気とサイド換気を小まめに使いこなす

 だがしかし、青木さんの苗は活着もスムーズで、その後の生育もよかった。収穫適期の短いレタスだが、ばらつきもなく、一斉収穫することができた。

▼光で苗を充実させる

 この差は何なのか? 青木さんは育苗を、ハウスではなく露地でやったせいだと考えている。 

 きっかけは、やはり『農業技術大系・野菜編』のレタス記事。そこには「光の強さが弱くなると、葉柄がいちじるしく伸長するとともに葉身も伸長して、葉は薄く細長いものになる。さらに困ったことに茎も伸びてしまう」と書かれてあった。さらに、強い光のほうが、葉重、根重が重くなり、茎長も短くなるというデータものっていた。

 ハウスで真夏に育苗するには、温度を下げるためにビニールの上に遮光資材をかける必要がある。でも、これでは光線がいちじるしく弱くなってしまうではないか。温度が高くて乾きやすいので水もたくさんやることになるから、徒長する条件はますます整う。だったら、外で直接強い光を当てて育苗してやれば、徒長も抑えられ、強い苗がつくれるかもしれない。

青木さんの苗
仲間の苗
上が青木さんの苗で、下が仲間の苗。同じ頃に播種し、覆土も同じだが、胚軸の長さが1cm違う。下の苗は育苗ハウスの東側に木があり朝日が当たりづらい。まだ本葉が出始めの時期だが光による抑制効果の差がこれだけ出る

 そう思い至って、2年前の夏、青木さんはハウスの育苗をやめ、太陽の光がカンカンに照りつける外でレタスを育苗してみたのだ。すると苗は枯れることなく、胚軸も短くなり、ずんぐりむっくりのいい苗となった。

 「強光線を直接当てると抑制効果があるのはたしかですよ。ただ、抑制というよりは充実かな。『技術大系』のデータにもあったけど、なるべく強い光を当てると葉面積の大きさとか、葉の厚さとか、胚軸の太さとか、そういうところはたしかに違いますね。

 そうやって考えると徒長苗っていうのは光が足りなくて光合成がしっかりできない栄養不足状態。だから、光を求めて上に伸び上がろうとするんじゃないかな」

 路地での夏の育苗は、高さ15cmくらいのU字溝の上に鉄パイプをレールのように乗せ、その上にセルトレイを並べるやり方。ただ、外なので雨が降ったときはビニールでトンネルがけができるようにしてある。 

 急に雨が降るときなどは、トンネルをかけに行かなければいけないので手間はかかる。でも、素質のいい、充実した苗をつくろうと考えると、少々手間がかかっても、なるべく直射日光を苗に当ててやりたいと青木さんは考えるようになった。

冬春のブロッコリーにはPOと保温資材の二重被覆
冬春のブロッコリーにはPOと保温資材の二重被覆。温度を見ながらだが、日中はなるべく光が当たるように、朝は早く外し、夕方も遅くまで外しておく

温度で徒長を防ぐ

▼冬春は15〜20度管理が目安

 さて、話は冬春育苗に戻るのだが、徒長させない苗をつくるためには温度管理も重要な要素。

 レタスは比較的低温にも強い。でも、ブロッコリーやキャベツは低温に当たると側枝が分化しやすくなってしまう。青木さんは、最低温度が10度以下にならなければ問題ないと考えており、日中はなるべく温度を上げないよう、換気をしながら、できれば15〜20度を目安に管理しているそうだ。

 「寒い時期は、どうしても苗を可愛がりたくなるでしょう。日中の温度が上がってきても、あまり換気をしない人も結構いるけど、25度以上になってくると徒長しやすくなっちゃいますよね。最初に徒長させてしまうと、その後クセがついて、本葉の葉柄とかも、長くなるんですよ。そんな苗を定植すると、やっぱり低温障害にあったり、風で倒れてしまいます」

水分管理で徒長を防ぐ

▼ペーパーポットで水分ムラをなくす

 次は水分。青木さんは、夕方、床土の表面が乾くくらいの状態になるようにかん水する。それが徒長させない水分量の目安だそうだ。

 ただ、寒い時期は、かん水するとポットの土も乾きにくく回数も多くできない。また、かん水するときの手癖や、床土の量の微妙な違いで水分ムラが起きやすく、苗の揃いも悪くなってしまう。だから青木さんはこの時期、ポットの穴が一つひとつ独立しているセルトレイは使わずに、水分がトレイのなかで自由に横移動できるペーパーポットを使うようにしているそうだ。

青木さんのレタス苗
青木さんのレタス苗。苗を見た人が口を揃えて「足(胚軸)が短いな!」と驚くそうだ。ちなみに、レタスの覆土は鹿沼土。水に濡れると色が変わるので乾き具合が一目でわかる(詳しくは06年8月号参照)

風で徒長を防ぐ

▼風に当ててエチレン効果

 「徒長させないためには風も重要ですよ。これもエチレン効果です」

 だから、地際に近いサイド換気で苗に直接風が当たるように、なるべく開放するように心がけているという。 

 青木さんは、天候を見ながらハウスに行くたびに風や光を考えて、換気の仕方を変えているので、家を訪れる人の中には「今日はどのように開けているかを見るのが楽しみだ」という人もいるのだそうだ。

 露地野菜の場合、作物を定植してからコントロールするのは難しい。できるのは育苗くらいだ。夏の暑さにも強く、冬春の寒さにも強い、そんな苗をつくりたい。青木さんの育苗へのこだわりは、まだまだ進化していきそうだ。

※青木さんが読んだ『農業技術大系』は野菜編・第6巻(レタス・サラダナ)基礎編「II外葉発育の生理

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