筆者。手にしているのは、自家野菜に殺菌剤代わりに使う自然農薬、ニンニクの焼酎(ホワイトリカー)漬け ![]()
出荷できない果実、なんでも酢に
サクランボ酢、ラ・フランス酢で果樹の減農薬、成功!遠藤成穂子
始まりは柿酢だった
本誌2002年9月号に、愛知県の河部義通さんの柿酢が紹介されていました。近所の人がカキをくれるというので、さっそく私も柿酢を作ってみました。
12月、樹上で柔らかくなるまで完熟したカキをもぎ取り、ヘタごと桶に入れ、一カ所だけ小さい穴をあけたビニールでふた。暖房のきいた部屋で発酵させること3カ月、雪が消えるころには酢になっていました。
それをそのまま1年熟成させて、この柿酢を防除に使ってみたのが2004年のことです。「酢防除」初年度はサクランボの防除に使用しました。
酢防除にはその作物の果実で作る酢が良さそう
その一方で私は、この柿酢の上に5cm近い厚さで張った酢酸の膜(コンニャク状です)を使って、「サクランボ酢」を作ることにしました。
裂果したり、鳥に食害されたり、過熟したりしたものなど、とにかく出荷できないサクランボの果実を桶に詰め込みます。それを何日か繰り返して桶がいっぱいになったところに、柿酢の上に張ったコンニャク状の膜を混ぜ込む。サクランボにはブルームがないことから、酵母菌なども少ないのではないかと思い、いわばスターターとして柿酢の酢酸膜を混ぜ込んだわけです。
出荷できない果実で 手作り酢 コンニャク状の酢酸の膜。サクランボ酢を作るときは、柿酢にできたこの膜をスターターにした サクランボ酢。これにも「コンニャク」ができている ラ・フランス酢 6月下旬から7月上旬の気温が高い時期なので、1カ月もしないうちに酢ができあがりました。そのまま翌年まで熟成させ、酢防除2年目は、サクランボ酢でサクランボの防除を行なうことになりました。
柿酢のときもそうでしたが、飲むわけではないので、作るときはあまり神経質になる必要はありません。ショウジョウバエが卵を産んだりもしていましたが、散布するときにこして使うので別に困ることはありません。
この2年間の経験を経て、酢防除にはその果実で作った酢を使うのがよいように思われました。そこで次に作ったのが「ラ・フランス酢」です。サクランボと同じように出荷できない果実を桶に詰め込み、そのまま待つこと数カ月。スターターなしでも酢になりました。以来、このラ・フランス酢はラ・フランスとリンゴに利用しています。
●サクランボ●
熟期の殺菌剤は1回だけでは、手作り酢を利用したサクランボとラ・フランスの防除について、もう少し詳しく紹介してみます。
サクランボには、サクランボ酢が200倍、市販ステビアエキスが1000倍になるように混ぜて散布します。うちではこれを、サクランボが熟期を迎えてから使用します。
ステビアは、化学農薬と混用すると薬効が落ちるといわれます。同じ理由で、化学農薬を散布する前後3日間には散布しないほうがいいとされているので、初年度は殺菌剤の散布間隔の中間でこの混合液を散布してみました。
しかし昨年は、熟期に入ってからの殺菌剤は1回しか散布していません。その後、5〜7日に1度の割合で酢+ステビアの防除を4回行ないました。
ふつう熟期に入ってからの殺菌剤散布は3〜4回ですから、1回しかまいていないというとたいていの農家は驚きます。私も最初は不安でした。でも、やってみると大丈夫なものですね。天候の経過を見ての判断になりますが、できれば今年は熟期の殺菌剤使用をやめられればと考えています。
大敵の灰星病にも効く!?
サクランボのおもな病気には、幼果菌核病、アルタナリア、そして灰星病があります。幼果菌核病だけは熟期前なので化学農薬防除ですが、アルタナリアと灰星病のほとんどは酢防除で対応していることになります。サクランボの大敵は灰星病です。酢防除を取り入れてからも灰星病は見ていないので、この病気にも効果はあると思います。
うるみ果防止と着色対策の農薬散布もいっさいやっていません。酢は果実に対しても効いているものと思われます。
それから、これも酢防除の効果か、左の木酢+トウガラシ液の効果か、はたまた両方の効果なのか、殺ダニ剤も使ったことがありません。
●ラ・フランス●
収穫1カ月前からは酢防除だけラ・フランスは、ラ・フランス酢200倍とステビアエキス1000倍の混合液で防除します。8月までは化学農薬を使いますが、収穫1カ月前からは1週間に1度の割合で、この混合液による防除だけを4回行ないます。
それでも大敵の輪紋病はほとんど見られません。昨年は、収穫時期が遅れたために水腐れ果が多少ありましたが、一昨年は2月半ばまでなんともなく保存できました。
ちなみにラ・フランスも、サクランボ同様、殺ダニ剤は使っていません。
うちでは、化学農薬は一般の農家の半分もしくはそれ以下しか使っていないと思います。
化学農薬は、土壌や環境によくないうえ、食べていただく方々や私たち自身の健康にもよくありません。菌や虫に対しては耐性がつくので、新製品の開発といたちごっこになります。そのため農薬はますます高価なものになっています。生産物の値段が安いいま、高価な農薬は農家経営を圧迫するばかりです。
農薬を減らすことは、環境・健康・経営などすべてにおいて有効だと私は考えます。
(山形県東根市)
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