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「手抜きといっても、けっこうイケルのよ」という西本則子さん(味酪会) 道具はバケツとザルだけ!
台所でお手軽「ザルチーズ」北海道別海町・高橋昭夫さん
編集部
チーズは手作りが一番。それも超カンタンにザルでできるとなれば、ますますそんな気がしてくる。
酪農家でなくとも、近所に酪農家が一軒でもあれば搾りたての牛乳を分けてもらおう。さっぱりした味が好きな人はすぐに食べてもよし、濃厚な味が好きな人はじっくり熟成させてもよし、自分の好みでしあがりは自由自在。オリジナルのチーズを楽しめる。
売ってるものとは一味違う、これぞ「ザルチーズ」。
手軽に作って楽しむべき
だが、この日、目の前に出された「ザルチーズ」には、青色と白色のカビ(それもわりと毛足の長いヤツ)があちこちに繁茂していた。いざ口に入れるとなると、なかなか手を伸ばす気になれない。意を決して小さな一切れを恐る恐る噛んでみる……。
あれ、チーズの味だ。変な味?ではない。むしろ、オイシイ?
ザルチーズを考案した高橋昭夫さん(63歳)。本業は獣医師 このチーズを作ったのは、マイペース酪農交流会の事務局を務める高橋昭夫さん。「酪農家かどうかを問わず、チーズはみんながもっと手軽に作って楽しむべき」という高橋さんは、このチーズを年中ほぼ毎日のように食べている。
また高橋さんは、「別海町の牛乳で作った乳製品を味わおう」という有志の集まり「味酪会」の中心メンバーでもある。有志といっても、高橋さんの家に集まって手作りしては食べる、お楽しみ会である。それでも、たとえば西本則子さんはもと料理教室の先生、荒俣敦子さんは海外で舌を鍛えた食通。味にうるさい人たちが、このお手軽チーズの味を認めている。
ザルチーズの作り方 (1)バケツに、手作りヨーグルトを入れる。ヨーグルトはあらかじめ乳酸菌(右)を牛乳で培養・保存しておく 台所はチーズ作りに適している
チーズ作りと聞いて、「大掛かりな装置が必要で、おカネがかかる」と思うかもしれないが、高橋さんがチーズを作る場所は普通の台所、準備するものもバケツとザルだけでいい。買えば何十万とする本格的な器械は必要ない。バケツは大小2個。ザルは100円ショップで売っているもので十分だし、温度計も使わない。
気にかかるのは衛生面だが、「なんら問題ない」という。
「搾ったばかりの牛乳を使えば、消毒したり加温したりという工程は必要ない。そのほうが乳酸菌も活発に働くし、レンネット(凝乳酵素)で固まりやすい。チーズを販売するとなると加工の許可が必要で、牛乳もホクレンを通して購入しなければならないが、自家消費ならその必要もない」
その上、「台所」という場所が衛生面に一役買っている。
(2)生乳10リットルを加える。酪農家で搾乳直後、バルククーラーに入る前のものを分けてもらう(生乳を入れたあとでヨーグルトを加えてもよい) 「もし牛舎の近くで作ったとすると、消毒していても、雑菌が飛び込んでくる。台所で作るのは、牛舎から離れているからだ。台所には良性の菌がいっぱいいて、よそから悪性の菌を持ち込まない限り、問題は起こらない。台所で仕込んだ漬物を食べて病気になったという話は聞いたことがない。だから、搾りたての生乳をバケツに入れたらタッパーなどでフタをし、早々と台所に移動する」
放っておけばできあがっている
高橋さんは、この台所チーズを「手をかけないで放っておけば勝手にできあがっている」という感覚で作る。
(3)30分後、レンネットを加える。レンネット(右)は200mgをコーヒーカップ1杯のぬるま湯に溶かして使う たとえば、レンネットを加えて30分〜1時間ほどすると牛乳が固まってくるが、それを「そろそろ固まってきた頃かな?」などとチェックしない。翌日まで放っておけば確実に固まっている。
固まったら、それをザルにあけるだけ。余分な水分であるホエー(乳清)を抜くための「固まりを切ったり、混ぜたり、加温したり、ザルをひっくり返したり」などは必要ない。ザルをそのまま放っておけば、ホエーは自然に抜ける。
(4)バケツをさらに大きなバケツの中に入れ、周りに50度くらいのお湯を注ぐ。これで立派な保温式チーズ製造器 ホエーが抜けたら、塩を適当に上から振りかけるだけ。よく「塩水につける」というやり方が本に載っているが、これだと、「○○%くらいの濃度の塩水に△△分くらいつけないといけない」だとか、計算が面倒くさいし、せわしない。一夜漬けの要領で、あとは待つのみ。これで気が向いたときに食べられる。
家々で優勢になっている菌が作る
(5)固まったら、おタマですくって、ザルにあける ツマミ食いで「甘〜い!」という荒俣敦子さん(味酪会) 高橋さんのお手軽チーズは少し酒くさい。高橋さんは「うちの台所には、白神こだま酵母が住み着いている。わざわざ菌を振らなくても、チーズは表面が白く粉をふいたようになる」という。
じつは、高橋さんの奥さん・恵美子さんは共同作業所(スワンの家)の指導員だった。入所者たちが自信を持ってアピールできる商品を生み出そうと台所で試作を繰り返した。そして白神こだま酵母を使ったパン作りに行き着く。現在もスワンの家の手作りパンは独特の甘味とコシの強さが好まれ、よく売れている。
(6)ザルは流しなどに置いておくと自然にホエーが抜けていく。3日間くらいでチーズの形が整ってくる その恵美子さんは一昨年、病気で亡くなった。しかし、台所には白神こだま酵母が居着き、他の菌と協同して旨味を作り出しているのだろう。
その家々の台所で優勢になっている菌が作るザルチーズ。ぜひ、お試しください。
(7)表面がまだシットリしているうちに、チーズの1.5%重となる塩を振る(といっても、適当にパラパラでよい)
※そのまま涼しいところや冷蔵庫に置いておくと、10日間ほどで塩がチーズの隅々まで浸透する。これで爽やかな酸味が楽しめるサワーチーズの出来上がり。ジャムをかけたり、クラッカーにのせたり、チーズケーキにして召し上がれ(8)さらに、表面に白神こだま酵母などの菌(カマンベールにしたいのなら白カビ)を振ると10日目くらいで、うっすらとカビがつき、チーズらしい味が出てくる。20日目くらいで酸味が消えてコクが増していく。その後、どんどん旨味を増してカマンベール、さらにはブルーチーズの味に似てくる。表面のカビが気になるなら取り除けばよい (9)ザルをかえして器にとり、適当に切って召し上がれ
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