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巻頭特集

ペットボトルトウガラシ
水といっしょにペットボトルに詰めたばかりのトウガラシ。土用を越すころまでおくと使える

ニンニク、トウガラシは虫に効く、病気に効く

「減農薬の達人」に欠かせない
ニンニクエキスとトウガラシエキス

福島県浪江町・安部ヨシ子さん

編集部

水につけて放っておけばできる

 近所で「減農薬の達人」と評判のばあちゃんがいると聞いて訪ねた。

 福島県浪江町の安部ヨシ子さん(70歳)。もともとは「ダイコン屋」というが、年をとってダイコンの栽培面積は減らした代わりに、それこそつくらない野菜はないというくらい品目が増えた。それを、旦那さんの一さんに毎朝運んでもらい、農協女性部が運営するAコープの朝どりふれあい産直コーナーや近所の直売所などで販売する。一部は、漬物やカット野菜などに加工して売るものもある。

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 達人がこれらの野菜の病害虫対策に使うのは、ナンバンエキスとニンニクエキス。どちらもヨシ子さんの手づくりで、焼酎の大きなペットボトルに水といっしょに詰めてしばらくおいたものだ。軒下などにほったらかしにして、ときどき手に持って揺すってやるだけ。冬から春に仕込んだものも、土用を越すくらいまで放っておくと使えるようなる。

 トウガラシの辛味成分のカプサイシンは水にはあまり溶けないというが、温度が上がってきて発酵・分解するようになると溶け出すらしい。昨年仕込んだというナンバンエキスは、トウガラシの残骸は色素まで抜けて白くなり、辛い液体ができていた。ナンバンエキスは嫌気発酵しているせいか、少しドブくさいようなにおい。それに対してニンニクエキスのほうは、その強力な殺菌力のためなのか、一年水に浸かっていてもニンニクの強烈なにおいはそのままだ。

ナンバンエキス・ニンニクエキスの使い方

安部ヨシ子さんと一さん
安部ヨシ子さんと一さん。一さんが手にしているのはニンニクエキス

 「いいあんばいに(適当に)やってんだぞお」とヨシ子さんがいうナンバンエキス・ニンニクエキスの使い方は次のとおり。

 まず、どちらのエキスでも、コーヒーカップ3杯分のエキスを網で濾しながらジョウロに入れる。そこにいっぱいになるまで水を足して薄めてから野菜にかけるのだ。ジョウロの大きさが3リットルなので、5倍くらいに薄めて使うことになるようだ。ナンバンエキスは虫退治に、ニンニクエキスは虫への忌避効果と病気予防をねらって使う。

▼アブラムシ・ヨトウムシ退治にナンバンエキス

 「虫いたなあ」と思ったらかけるのがナンバンエキスだ。はたして死ぬのか、一時的に麻痺するだけなのかはわからないというが、「アブラッコ(アブラムシ)がポロポロ落ちる」。アオムシやヨトウムシが小さいとき(若齢幼虫)にも効くという。

トウガラシエキスを散布
トウガラシエキスを散布。畑の施肥は、ボカシや鶏糞、仲間と大量に味噌を仕込むとき出る米のとぎ汁、大豆の煮汁など。チッソをあまり効かせないことも病害虫を減らすのに役立っているようだ
エキスを3杯
3リットル入るジョウロに網で濾しながらエキスを3杯

 ただ、やたら散布すればいいというものではない。野菜のそばの雑草についたアブラムシや、採り忘れて離れたところにポツンと残ったホウレンソウについたアブラムシなどは、驚かさないようにそうっとしておく。ヘタに刺激しては、収穫する野菜(ホウレンソウ)のほうに寄ってきてしまうからだ。ヨシ子さんによると、春先にホウレンソウを収穫するころのアブラムシの好みは、ナズナ→アカザ→ホウレンソウの順。ホウレンソウのそばのナズナやアカザは、アブラムシよけのおとりになる。

▼ニンニクエキスは忌避効果を発揮

 一方、ニンニクエキスには、虫を寄せ付けない効果があるという。キャベツの畑にまいたりすると、それまでまわりをひらひら舞っていたチョウチョがサーッと逃げていく。そこでニンニクエキスは、野菜が芽を出してまもなくや苗のときによく散布して、虫除けにする。

 ナンバンエキスもニンニクエキスも農薬ほどの効き目はないが、明日食べる野菜にも使えるのがいいという。

 「私はね、なるたけ(なるべく)薬は使いたくないの。自分でも食べる野菜だから。病気してからはなおのこと、使わないようにしてんの」

直売所で人気、ヨシ子さんの野菜

 今でこそ元気になったが、ヨシ子さん、6年ほどまえに命にかかわるような大病を患った。入院した先の病院の先生には、生まれつきもっていた病気で食べものの影響ではないといわれたが、このときからいっそう食べものの安全を気にかけるようになった。入院中にたまたま読んだ本にトウガラシとニンニクが病害虫対策に使えると書いてあったそうで、以来、ナンバンエキスとニンニクエキスを愛用するようになった。もっとも、水につけて放っておいてエキスをつくるというやり方は、ヨシ子さんのオリジナルだ。

 1ha弱ある畑のなかで、50aほどつくるダイコンには播種前にネマモールを使う。また、秋にキャベツやハクサイに虫が大発生したときにも農薬を使うことがある。しかし、年間を通して消毒するのはそれくらいで、あとはナンバンエキスやニンニクエキスで対応している。

 直売所に出かけたり、イベントで直売したりすると、「ヨッちゃんの野菜は消毒してないからもらいてぇ」「安部ヨシ子さんの漬物、私買いますからとっておいてください」という声を耳にする。こういうお客さんの声を聞くと、ますますやる気が出る。安全安心の「安」に、おまけに「ヨシ子」とつく名前がいいのではないかという人もいるが、達人の野菜はそれくらい人気があるのだ。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
現代農業 2007年7月号 ニンニクVSトウガラシ

どんとこい、暑い夏。夏バテにも、畑の病害虫対策にも役立つ、体にいい野菜のパワー大公開。 [本を詳しく見る]

 ニンニク 球・茎・葉ニンニクの栽培から加工まで』大場貞信

無臭・ジャンボタイプが話題の球ニンニクと今後注目の茎・葉ニンニクの栽培から加工までを一冊に。堆肥の肥料成分を含めた施肥設計と春先の灌水で根部の健康を保ち、生理障害は早期に診断・対処をして良品多収する。 [本を詳しく見る]

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