月刊 現代農業
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巻頭特集

ミネラルたっぷりの海水をかける
ミネラルたっぷりの海水をかける
ここまで見えた海水・塩の活用法

甘くてやわらかい「海っ子ねぎ」デビュー

千葉県・JA山武郡市の取り組み

編集部

葉折れが少なく、しなやかネギ

 海水をかけたネギをひとつひとつ触りながら、瀧田修さん(45歳)がいう。

 「海水をかけると葉折れが少なくなるんですよ。弾力があるというか、しなやかになるというか。だからなのか、食べるとやわらかいんだよね。今年もこのネギのファンを増やしたいね」

 瀧田さんは昨年から有志27人と、海水をかけて栽培した長ネギを売り出したのだ。その名も「九十九里海っ子ねぎ」。

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ネギは台風に強かった

 瀧田さんたちがネギに海水をまくようになったのは、2002年10月の台風21号がきっかけだった。

 大量の海水を含んだ潮風が九十九里浜沿岸の野菜畑に壊滅的な塩害をもたらし、ブロッコリーやニンジンのほか、街路樹、アゼの雑草、強靭な竹までもが枯れた。ところが、なぜかネギだけはほとんど被害がなかったのだ。

 しかも掘って食べてみると、いつもより美味しかった。もしかしたら海水とネギは相性がいいのかもしれない――。

太く重くなる、鉄分やカロテンが増える

瀧田修さん
海水でネギが太くなると話す瀧田修さん。瀧田さんはJA山武郡市第3集出荷センターネギ部会長

 それから4年、海水とネギの関係を調べるべく、山武農林振興センターとJAが研究に没頭した。 

 海水をかけたネギと真水をかけたネギとで生育の違いを調べてみると、海水をかけたネギのほうが太く重かった(表)。出荷規格でいうと、より太い2Lの割合が増えた。また栄養分析の結果では、鉄分やカロテンが増えることもわかった。

 そして海水をかけたネギとかけていないネギを電子レンジで調理し、目隠しをして試食してもらうと、10人のうち8人が海水をかけたネギのほうが甘くてやわらかいと答えたのだ。いずれの結果も、「海水に含まれるミネラルのおかげではないか」が一致した意見だった。

 その後、海水の散布時期や希釈倍率なども確認。昨年5月、ついに海水ネギの産地化に踏み切ったのだった。

「海っ子ねぎ誕生物語」
海っ子ねぎの包装フィルムなどにも使われている「海っ子ねぎ誕生物語」

生育中期から後半に10倍希釈液をかける

海っ子ねぎ試験調査(品種:夏扇4号)
真水 海水
調製重(kg/0.5m) 11.715 12.425
本数(本/0.5m) 99 93
内訳 2L本数 32(32.3) 34(36.6)
L太本数 27(27.3) 29(31.2)
L細本数 32(32.3) 22(23.6)
その他本数 8(8.1) 8(8.6)

 瀧田さんたちが海水をかける秋冬ネギは、夏ごろに順次植え付け、11月下旬から翌年4月下旬にかけて収穫する。海水はその生育中期から後期に、10倍希釈液を10〜15日おきに5回以上かける。上から葉に吹き付けるように、一回につき10a150リットル以上かける。

 「秋冬ネギは気温の高い時期には生育を休んでいて、夜温が下がる彼岸頃から急激に生長します。そのぐーんと大きくなるときに海水を与えれば、ミネラルがよく吸われるのではないかと考えたわけです。濃度を10倍希釈にしているのは、10倍と50倍とで散布してみたら、濃い10倍のほうが太くなったからです」というのは、散布方法を仲間と調査してきた渡部和彦普及員。

海水散布のネギと真水散布のネギの比較
同じ長さのウネから収穫してみると、海水散布のネギのほうが真水散布のネギより2Lの割合が多かった

 実際にいろんな時期に海水をかけて観察してきた瀧田さんも、たしかに彼岸頃に海水をかけたネギは勢いがよく、葉の緑の部分が濃くなり、白い茎の部分は太くなるという。追肥も少なくてすむようだと感じている。

地域の宝もの=海を売る

 昨年初めて市場デビューした“海水ネギ”の評判は上々だ。単価もレギュラーに比べてかなりよかった。しかし何よりうれしいのは、ネギつくりに張り合いができたことだという。

海水を希釈中
海水を希釈中。海水は現在各自で海から汲む

 「俺たちの地域には九十九里浜というだれでも知ってる海がある。これは地域の宝もの。あの九十九里浜の海水で育てたネギなんだなって、だれでも想像してもらえる。そういう俺たちのオリジナルネギができたってことがうれしいんだよね」と瀧田さん。

 瀧田さんたちはいま、この「九十九里海っ子ねぎ」をさらに一級品のネギとしてブランド品に育てようと考えている。現在「海っ子ねぎ」として出荷するためには、海水をかけたうえに、「レギュラー品」より厳しい出荷基準(太さなど)をクリアすることのほか、減化学肥料・減農薬栽培が条件だ。品種も農家が食べて美味しいと判断したものに限定だ。

 今年「海っ子ねぎ」に取り組む農家数は、1年目の2倍以上に増える予定だ。

「九十九里海っ子ねぎ」の荷姿

海水 瀧田修さんたちの使い方

ネギ
生育の中期(彼岸過ぎ)から後期にかけて、海水の10倍希釈液を10a150リットル以上、10〜15日おきに5回以上散布

見えてきたこと
・ネギは塩害にとても強い

「九十九里海っ子ねぎ」の荷姿
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