![]()
藤沢拓子さん(68歳) 旬の味を一年中楽しむ、人にもあげる
岩手県盛岡市・藤沢拓子さん
編集部
孫が喜ぶ真冬のトウモロコシ
「難儀して育てたものなんだから、大切に食べないと」
出荷用のプルーンに、自家用のリンゴ、クリ……、それから色とりどりの自家野菜。盛岡市の藤沢拓子さんの冷凍ストッカーからは、およそその時期にはとれないようなものばかりが顔をのぞかせる。それもただ凍らせるだけでなく、食べやすいように、保存がきくように、それぞれにコツがある。これは食べきれなかった「旬」をおいしいままにとっておきたいという拓子さんの思いの表れである。
「孫は冬でも喜んでトウモロコシにかじりつく。その顔を見ていると、うれしくてうれしくて」
拓子さんの冷凍食品はじつにさまざまな場面で役にたつ。急な来客にもササッとおもてなし、帰りしなには手土産まで持たせてあげる。娘も孫も、隣近所も親戚も、あるはずのないものに驚きつつ、とても喜んでくれるというのだ。
ストッカー。凍らせるものを縦に並べると、取り出すときわかりやすい もともと拓子さんはものを凍らせることには馴染みがあった。タクアン用に干しておいたダイコンの葉っぱを茹でて細かく切り、それをおにぎりのように丸めて冬の寒に当てる。凍ったものを味噌汁などに入れて煮立てれば、郷土料理の「干葉汁」。それから、凍み豆腐もここらへんではよく作っていた。だけどそれは冬の話。
それが、今から20年ほど前、拓子さんの所属していた若妻会のメンバーで冷凍ストッカーをおのおの揃えることになった。おかげで夏でも大量の冷凍が可能になったのだ。
ピーマン・シシトウは生のままで
――冬に青物が食べたい!ピーマンやシシトウは8月頃になるとわんさかとれる。食べきれずに捨てるのももったいないし、かといって直売所に出しても商品がだぶついているので、袋いっぱい30円や50円の値がいいところ。それはそれでもったいない。
しかし拓子さんがそれらを冷凍するのには、もっと大切な意味がある。冬に青物を食べたい――。
盛岡ともなると、冬の畑は雪の下。スーパーなども近所にはないし、拓子さんは運転もできない。本当は真冬でも自分で野菜を作って食べたいのだが、それがかなわないから冷凍野菜の出番がやってくる。
ピーマンやシシトウなどは、茹でると色が落ちてしまうので生のまま冷凍しておく。使うときはたいてい凍ったまま油でジャーッと炒めるが、鮮やかな緑色がちゃんと再現される。
完熟トマトも四つ切りのまま――息子の手料理に大活躍
トマトも夏にたくさんとれるから、冷凍しようと、生活学校の先生にそのやり方を聞いてみたことがある。そのときは、トマトピューレやトマトケチャップにしてから冷凍する方法を教えてくれたが、これがやってみるとなかなか難しい。鍋の前にずっと控えておかないといけないのも大儀だし、裏ごしもちょっと面倒くさい。だからもう専門的なことはこの際やめて、太陽の光をたっぷり浴びたトマトを四つ切りのまんま冷凍することにした。「冷凍するとき、私の思いも一緒にしまっておくの」と拓子さんは茶目っ気たっぷりにいうが、使うとき色あせない真っ赤なトマトを見ると、決まって夏の太陽を思い出すという。
この冷凍トマトは同居で勤めの息子も大のお気に入りである。休日ともなると、冷凍トマトやオリーブオイル、冷凍ニンニクなどを駆使して、スパゲッティを作ってくれる。凍ったまんま火にかけた鍋にいれるだけなのに、ゼリー状のタネの部分がいい塩梅に麺にからみつく。息子の手料理もありがたいが、自分で作ったトマトの味もまた格別である。
完熟をそのままとっておける、これもまた拓子さんの強みである。
豆は煮てから
――こびるに酢豆生のまま新鮮さを閉じ込めるのもよさそうだが、一度下処理をしたものを冷凍しておくのも手である。
たとえば大豆。その都度、水に一晩浸してから煮るのは手間と時間がかかる作業だが、一度煮たものを冷凍しておけば、とりだしてすぐに料理に使える。拓子さんはよくニンジンとゴボウとコンニャクとシイタケと一緒に煮て、五目豆を作るという。
また、田植えの日の「こびる」には昔から決まって「酢豆」という、煮た青大豆を酢に漬け込んだ料理を食べるそうだが、これを現在拓子さんは、冷凍したエダマメ(秘伝)で作ることにしている。茹でたエダマメを莢から出して冷凍しておき、田植えの2〜3日前に解凍して、酢と砂糖を煮立てたものに漬けておく。田植えの時期はバタバタしているし、一度に大勢の人の分を作るのはたいへんなので、手間が省けて助かる。昔と変わらぬごちそうを振る舞えるのも、冷凍豆があってこそである。
わが家のミックスベジタブル
――食品売り場でヒントを得た
左からダイコン葉、食用キク、エダマメ、ミックスベジタブル、食用キク 「冷凍食品といえば今はどこにでも溢れているけど、私は農家ならではの冷凍をして、農家ならでは食べ方をしたい」
そうはいいつつ、たまには拓子さんもデパートやスーパーなどに行って、食品売り場をチェックする。買い物ではなくて、いわば情報収集。
ミックスベジタブルを見て、きれいだなとは思うのだが、なにせ高い。材料は全部あるわけだから、アイデアだけもらって自分で作ってしまうのだ。トウモロコシは孫が食べる分は茹でたものを一本まるまる冷凍してあるが、ミックス用はひとつひとつきれいにほぐす。ニンジンは賽の目に切ってラップでくるんで二分ほどレンジでチンしたものを。それからグリーンピースのかわりに拓子さんはエダマメを使ったりもする。これらを同じ袋に入れて冷凍しておけば、わが家でとれたものだけで作ったお手製ミックスベジタブルのできあがりである。これも近所の人にあげると、珍しい珍しいと喜ばれる。
サンショウの実はアク抜きしてから
――魚のくさみがとれるそれからスーパーの生鮮コーナーでは、サンショウの芽がほんのちょっとなのに高値で売られているので驚いた。これも自分のうちにあるから冷凍してみようと挑戦したものの、どういうわけだか冷凍したら粉々に砕けてしまった。しかたなく断念したが、今度は実で試してみたら大成功。さっと塩茹でして、すぐに冷や水にとる。水をとりかえつつ、半日ぐらいアク抜きしてから冷凍。かなり重宝する。サンマやサバなど青身魚を煮るときに凍ったままパラパラ入れると魚のくさみもとれるし、ピリ辛のアクセントにもなる。
「今、どんなものが人気なのか、どんなものを人にあげると喜ばれるのか、食品売り場は私の視察の場ね」
「冷凍するようになってから心が豊かになった」と話す拓子さん、食べ物があるという安心感にほっとする。
「今の時代、スーパーに行けば年がら年中なんでも売ってるけど、なんでも買ってしまうんじゃなくて、うちにあるもので食卓に彩りを添えたい。そうやって食事がわびしくならないように工夫するのも楽しいものよ」
藤沢拓子さんが冷凍するもの ピーマン 袋に薄く詰めるため、2つ割りにしタネをとる。茹でると色が抜けるので生のまま冷凍。凍ったまま炒め物などに シシトウ そのまま袋に入れて生のまま冷凍。凍ったまま炒め物などに ダイコン葉 青みを残すため、さっと塩茹でし、すぐに冷や水に短時間浸す。しっかりと水気を絞る。水気が野菜の内部に残っていると水分が凍って野菜の組織を壊してしまう。表面に付いた水分は霜の原因。凍ったまま汁物や煮物に サンショウの実 さっと塩茹でして、すぐに冷や水。水を取り替えつつ、半日ぐらいアク抜き。凍ったまま青身の魚の煮物などに 大豆 一晩水に浸して、煮て冷ましたものを冷凍。解凍して酢大豆や五目豆などに カボチャ 一口大に切って生のまま冷凍、もしくは蒸してペーストにして冷凍。一口大は煮物などに、ペーストはスープに トマト ヘタを取って、4つ割りにして冷凍。凍ったまま、熱を加えてスパゲッティなどに 食用キク 湯だったら酢を大さじ2杯入れて、花びらを投入。酢で花びらの繊維が柔らかくなる。ザルにとり、上から冷水をかける。水気を絞って冷凍 ニンニク 皮をむいて生のまま冷凍。芽が出ない トウモロコシ さっと茹でて冷ましてから冷凍する場合もあるし、ラップに包んで生のまま冷凍する場合もあるし、ほぐして冷凍する場合もある
お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp
まで 2007 Rural Culture Association (c) |