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秋山勝英さん
秋山勝英さん(48歳)。経営は自園(3.5ha)自製自販(一部荒茶出荷、買葉もある)

私も『土壌施肥編』で、応用のきく基礎を身につけた

静岡県富士市・秋山勝英さん

編集部

「イネなどと比べると、茶ではわかっていないことが多い。土質や施肥のしかたで生育も、仕上がった茶の味もずいぶん違ってくるけれど、どうしてそんな違いが生まれるのか、よくわかっていない。そんな茶を栽培していて起こるいろんな現象を自分なりに判断するうえで、土壌の基礎知識や他の作物の施肥のやり方が大きなヒントになります。『土壌施肥編』で身につけた知識が、私の茶経営の大きな支えになっているのはまちがいありません」

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 こう話すのは、静岡県富士市の秋山勝英さん。オンリーワンの茶づくりをめざし、「品種茶にかける」茶農家だ(8月号254ページで紹介)。

基礎を身につけるには、読書しかない

 昨年の10月号では、「『土壌施肥編』で身につく基礎が、収益を生む」と題して、熊本県阿蘇市のトマト栽培農家、斉藤信幸さんのことを紹介した。「土や肥料の基本的な見方、基礎を『土壌施肥編』で身につけた」という斉藤さん、研修生には『土壌施肥編』(以下『土肥編』)を「暗記するくらいに読め」ときつく指導し、「基礎を身につけるには、読書しかない」と強調していた。

 秋山さんに『土肥編』のことを聞くと、同様な答が返ってきた。そして、秋山さんも若い研修生には読書を「強要」する。どこかに出かけるときは、「課題図書」を決め、行き帰りの電車やバスのなかで読破することを求め、その感想を聞くことにしている。

『土壌施肥編』
土壌・作物栄養の基礎から土壌管理・施肥技術、肥料・資材情報、農家事例までを網羅した『土壌施肥編』(全8巻 11分冊、農文協刊) 定価137,500円

 栽培技術にしても経営のやり方にしても、農家が経営者としてやっていくには、自分なりに判断する力量、いろんな情報を見極める力が欠かせないと思うからである。

 秋山さん自身、東京の大学を卒業し、茶農家を継いでまもなく、土や肥料のことを勉強しようと『土肥編』を購入し、全巻を読破した。全巻、目を通したことで、どこに何が書いてあるかがだいたいわかり、その後の利用もしやすくなったという。

排水性が、茶の味を左右する

 さて、「品種茶にかける」秋山さんだが、もちろん、土つくりや施肥に対するこだわりは大きい。茶ではとりわけ味が問題になるからだが、酸性土壌を好み、アンモニアやアミノ酸を吸収するという作物としての性質からみても、茶は他の作物以上に、土壌・施肥と味のかかわりが大きいとみている。

 たとえば土の排水性。排水が悪いと根腐れがおきやすいだけでなく、香気がおちるなど茶の品質に大きな影響を与える。この理由を秋山さんは、排水が悪いと根が分泌する根酸が洗い流されにくく、それが貯まり茶に吸収されることによって生葉の品質、ひいては茶の香気に悪影響を与えるのではないか、とみている。

 秋山さんの茶園は黒ボク土だが、銘茶として知られる川根茶の産地の土は石が多くガラガラの土で排水性は大変よい。そのため根の分泌物が適度に流され、それが川根茶のさわやかな味・香りの一つの要因になっているのではないか、というのである。

『土肥編』には、作物の分泌物の働きやそれをエサにして繁殖する根圏微生物のことが詳しく掲載されているが、秋山さんは、この分泌物をめぐる記述をヒントに、排水性と茶の味の関係をめぐって、独自の見方に達したのである。

 だから、改植時には排水性の改良に力をいれる。改植のときはユンボを使って2〜3m掘り、下層部に石や礫などを入れ、排水対策を徹底する。

 この排水性をめぐっては、『土肥編』で紹介されているハウスメロンの土壌管理技術や隔離ベッドを使う温室メロンの農家事例の記事も参考になったという。味・糖度を追求するメロンでは排水のよいベッドが不可欠で、そのうえでかん水を調節・制限して味をのせていく。この、味がよくなる原理やしくみを、雨が遮断できない茶園で生かすには、まずはなにより、排水性をよくすることだ。

土壌のタイプや土質についての知識はいろんな場で生きてくる

富士山麓の茶園
富士山麓の茶園。通路のマルチ用に山麓のカヤを刈ってくる
カヤが敷かれている
幼木園の通路にカヤが敷かれている
植え付け4年目の園地の通路
植え付け4年目の園地の通路を掘ると、元気な根がぐんぐん伸びていた

 排水対策で掘ったところに土を戻すとき、秋山さんは、赤土を混ぜ合わせる。黒ボク土は生育は良好だが、どういうわけか茶にサツマイモ臭がでやすく、赤土を混ぜるとそれが防げ、品質が向上するからである。土質によっても茶の味は変わってくる。

 農家が、土壌・土質についての知識をもつことは大変重要なことだと、秋山さんは強調する。『土肥編』の第3巻「土壌の性質と活用」では日本に多様にある土壌・土質について詳しく解説しているが、こうした知識は、いろいろな場面で役立つという。

 黒ボクと赤土の味の差の要因を考える素材になるし、あるいは各地の茶産地の品質・味の特徴を土壌・土質との関係から考えるうえでも大いに助けになる。土壌のタイプや土質を無視し、使う肥料ばかりを気にしていては、他の農家の技術に学ぶことはできないし、ムダに金をかけることにもなりかねないのである。

Zボルドーで銅や亜鉛を補給

 もちろん、施肥も茶の味を左右する。まずはチッソの効かせ方が重要で、秋山さんは、8月号で紹介したように「チューリップで施肥のタイミングの判断」をしている。

 尿素の葉面散布も効果が高い。尿素は地温が低いと効きが悪く、6月に入ってから、二番茶の摘採2週間以上前までに300〜500倍液を葉面散布している。尿素は価格が安く、しかも葉色や色沢、芽立ちをよくする効果は高く、大変重宝している。

 そして、味のせのために、チッソとともに肝心と秋山さんがみているのが、微量要素である。『土肥編』で詳しく解説しているように、土壌が酸性の場合、マンガンや亜鉛、銅などの微量要素がよく溶け出す。酸性を好む茶は、特異的にこれらの微量要素を必要としていることが考えられ、そこで、秋山さんは、こんな供給法を考えた。

 Zボルドーを二番茶後に2回、炭そ病対策もかねて散布するのである。Zボルドーには銅も亜鉛も含まれ、散布すると確かに樹が元気になる。そこで、買葉している生葉農家にも最低1回は散布するよう、勧めている。

経費節減と品質向上の両立をめざす

 味を良くするには、良質の有機質肥料も使いたい。アミノ酸が豊富な動物性有機(イワシなどの魚粉、ブタ骨粉など)は確かに効果的で、秋山さんも使っている。

 しかし、肥料代は抑えたい。そこで、芽だし肥には硫安、夏は尿素の葉面散布と単肥を上手に生かし、経費節減と品質向上の両立をめざす。

 一方、幼木園では定植後、リン酸の多い液肥で発根を促し、富士山麓のカヤを大量に刈ってきて、通路に敷き詰める。こうして通路には根がぐんぐん張り、早期成園化を実現している。

 そんな秋山さんの肥料の選択や資材の活用に、単肥から有機質肥料、民間資材、身近な自然素材までを網羅した第7巻「肥料・資材の特性と利用」が、頼りになる情報を提供してくれる。

 しかし、秋山さんにとって『土肥編』は単に便利な情報源というわけではない。

「基礎を学べば応用がきく。そして応用がきくような実践的な基礎を学べるのが『土肥編』の最大の価値だと思います」

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