鶏糞を使いこなす
イネも野菜も鶏糞だけでできる!
鶏糞は栄養満点肥料赤木歳通
年がら年中、田んぼも畑も何を作っても、私は鶏糞しか使わない。一部のイネには焼酎飲んで硫安をドカンと振りまく場面もあるが、大半のイネのご馳走(肥料)は鶏糞だけだ。畑だって、冬野菜だろうが夏野菜だろうが、全部この鶏糞で終わらせてしまう。
私の愛用鶏糞は、3カ月間ゆっくりと発酵熟成させてあるから嫌なにおいはない。本来は堆肥と呼ぶべきものなのだが、ここでは鶏糞と呼ぶことにする。
では、安くて栄養満点、私の愛する鶏糞の使い方を話そう。なに? 本当に鶏糞だけでいいのかって? 余計なゼニ使いたい人は読まなくていいから。
畑の鶏糞、野菜別の使い方
畑に関しては家庭菜園の域を少し出た程度だが、何を作ろうがすべて鶏糞だけだよ。ただね、相手をみて使い方に変化をもたせている。
▼根菜類――二条播きしたウネの中央に待ち肥
ダイコン・ニンジン・ゴボウ・カブなど種子から直下に根を伸ばすものは、離れたところに待ち肥として隠して使う。こうした野菜は二条播きがよい。ウネの中央に溝を掘って鶏糞を入れて埋め戻す。平らにしたウネの両肩に播けば、根が伸びる直下に肥料がないから素直に真っすぐ伸びる。二股や曲がったのがなくなる。
養分を吸収する細い根は、ダイコンならあの太い白い部分から横に伸びて、肥料倉庫から欲しいだけ吸う。人が食らう太いダイコンそのものが肥料を吸うのではないぞ。多くの人がここを勘違いしている。
ソラマメは肥料食い。鶏糞を全面散布でしっかりくれてやる(倉持正実撮影、以下Kも) タマネギの場合も全面散布(K) 筆者(K) 良質の完熟堆肥を入れて1カ月おき、それからダイコンを播くのなら待ち肥にする必要もないが、スイカを片付けたらすぐダイコン播いたりジャガイモを植えたりする忙しい人は必ず待ち肥にすること。
▼果菜類――定植後に株から1m離して
同じ待ち肥でも、キュウリやナス・ウリ・カボチャ・スイカ・ピーマンなどは、植えた後に株と株の中間や離れたところに埋め込んでやる。広さが許せば苗から1m離して埋めたい。
これだと植え付けの割り振りを変更したときでも融通がきくし、後からゆっくり作業ができるのもよい。ただし植え付け後、遅くても数日以内には施肥すること。根は思ったより早く伸びるものだ。肥料のあるところに根が伸びてくるのが本来で、根のあるところに肥料をやると障害が出る。
▼ジャガイモ・サトイモ――株と株の中間にドサッと
ジャガイモには、50cm間隔で植えた種イモの中間に茶碗山盛りぐらいを浅く入れる。すると収穫のころには、このドカンと入れた鶏糞の固まりの中にも周囲にも、網を張ったようにイモの根が絡み付いている。
ただし、春ジャガを水田に作ると田植えが待っているからゆっくりできない。5月中に田植えをする地域では鶏糞では無理だ。6月後半の田植えならなんとか鶏糞でも間に合う。秋ジャガも同じように作る。
同じく株と株の中間に鶏糞を入れるものにサトイモがある。種イモの元に大量に入れ込んでおくと、ときに根が濃度障害を受けて地上部がいじけることがある。だから植え付けた中間にドサッと埋めておくのだ。さらに、土用のころ追肥として株元にも振ってから土寄せをする。
▼葉もの、タマネギ・ソラマメ――全面散布
播種の10日前に全面に散布・混和しておくのは、チンゲンサイ・コマツナ・ホウレンソウなどの葉もので、比較的混んだ状態で播いたり植えたりするものだ。
タマネギも同じく全面に入れておくが、硬い玉を良しとするから入れすぎないように。過ぎるとブヨブヨの大玉になり、病気も出やすく夏を越すと腐りやすい。
粗く植えるけど全面散布するのはソラマメとハクサイだ。前もって混ぜ込んでおいたほうが手間がかからない。ハクサイの肥料不足は結球しないから多めにくれてやること。ソラマメも肥食いだ。
待ち肥は多めになっても心配ない
すべて散布量は百姓の勘というやつで適量を袋からぶちまける。少しぐらい過ぎても化学肥料みたいなことはない。とくに待ち肥は、しっかり入れておいても、横から伸びてきた根は必要なだけ吸収する。残り肥は耕やしたとき全体に混ざって、後日地力的に効く。
何年続けて使っても、心配なことなんかこれっぽっちもないぞ。以前は鼻を突く強烈なにおいのするやつをホームセンターで買っていたが、これだって使い方は同じだ。熟成してなくても別にかまわないが、長期熟成してあるとにおわないし、地力的にゆっくり効くし、有益微生物群の補給にもなる。
畑での鶏糞の使い方 田んぼでは魚のエサにもなるからたくさん
田んぼに鶏糞散布。私のつくる朝日なら、元肥に反当300kg わが愛する鶏糞(長期熟成堆肥)。成分表には全チッソ2%、全リン酸3.6%、全カリ2.7%、全石灰21.3%とあるが、施肥設計はチッソ1.2%、リン酸2%、カリ1.2%で計算するようにといわれています。色は灰色がかった茶色 イネでも、有機肥料栽培する田にはこれ以外の肥料は何も入れない。
有機肥料は一般に、チッソ成分で計算した量よりどんとたくさん必要とする。鶏糞の場合、単純計算で化成肥料の2〜3倍のチッソを振る。
鳥は空を飛ぶため腸が短くできている。だから鶏糞には未消化のエサが残っている。昔、中国では川や池の上にスノコを敷いてニワトリを飼い、下でドジョウが繁殖していたと聞いている。鶏糞自体が魚のエサそのものなのだ。
田んぼに振った鶏糞も魚のエサになるから、ミジンコやメダカやフナも食うだろう。メダカやフナがその田で死んでくれれば肥料となるが、泳いで川に逃げたのではチッソとして利用できない。だからたくさん振るわけよ。事実、中干しの落水のときにはたくさんの魚や小動物が逃げている。
化学肥料が川に流れるとチッソやリンで汚染されるが、メダカやフナが逃げたらむしろ川は豊かになる。こんなのを環境創造型農業というのだ。有機肥料と化学肥料のいちばんの違いはここなんだよ。この肥料評価理論わかる?
なんと楽しきかな鶏糞栽培
鶏糞だけで育ったイネの出穂45日前。太い茎が開帳! 鶏糞だけでイネを作るのと、化学肥料と農薬のフルコースで作るのとでは、反当2万5000円のコスト差が出てくる。私の場合、この差額だけで田植え機もトラクタもコンバインも、農機具と名の付くものは全部まかなえる計算になる。
さらに販売のときにも価格に差がつく。二つの差を足すと、泣くと笑うの違いになってくる。
田植えが近くなったころ、元肥としてどんと振っておけば穂肥もいらないからラクチンだぞ。ゆっくりへの字に育つから虫も敬遠する。
米作りは儲からんと多くの農家は言う。ウソつけ! このくらい楽しくて、ラクで、儲かるものはないと思うのだが。鶏糞さまさまだよ。
ニワトリはカキ殻や魚粉を食うから、糞には海のミネラルや石灰分が含まれているし、米ヌカも食うから各種ビタミンも豊富だ。これほど栄養満点な肥料はないだろう。石灰や土壌改良材でpHの矯正をしましょうと言うが、鶏糞振ってりゃぁそんなものいらねぇよ。
店先に行くと、××専用化成とか野菜専用肥料などをよく目にする。
笑わせるんじゃあねぇ、鶏糞があればそれで十分。わしはだまされんぞ!
上の写真は鶏糞だけで育ったイネの出穂45日前、ゴリラのガッツポーズになる直前の姿だ。なにか文句あっか?
(自然を愛し環境を考える百姓 岡山市升田)
この記事の掲載号『現代農業 2007年11月号』巻頭特集:鶏糞を使いこなす [本を詳しく見る]
『畜産環境対策大事典 第2版 家畜糞尿の処理と利用』 尿汚水,悪臭などの最新処理技術から売れる堆肥づくりと品質評価,バイオガスなど新利用まで。 [本を詳しく見る]
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