減塩でもおいしく長持ちのタクアン(写真はすべて赤松富仁撮影) 秘伝公開 タクアンをうまくする隠し味
タクアン和尚、漬け床の中身を開陳
高森 勍
2007年7月号「『減塩なのに、おいしく・長持ち』の味噌粕漬け」で登場した高森さん、何を隠そう、じつはタクアン漬けが一番の得意技。王道だけど、そんじょそこらのタクアンとはわけが違う。風味づけ、色づけ、防腐……すべて自然にあるものでまかなってしまう。今、その秘伝の漬け床が明らかに! (編集部)
あだ名はタクアン和尚
タクアンは、江戸品川の東海寺の開祖・沢庵和尚の考案したものです。和尚が三代将軍徳川家光に献上し、その風味を褒められ「タクアン」の名がついたといわれております。
最近の漬物は血圧と食塩との因果関係が引き金となって、低塩化の流れが定着しつつあります。しかし、あまり塩を控えると、保存性が悪くなり漬物でなくなるので、そのかね合いが非常にむずかしいのです。
私の母もタクアン漬けがうまく、近所の評判になっていましたが、誰か後継者をということで私にお鉢がまわってきたのが20歳のときであったと思います。しかし、母流のタクアンにはまだまだ改良すべき点が多くありました。第一に塩が多過ぎること。そして第二に桶の上のほうにあるタクアンは味が悪く捨ててしまう、また最後になるとスッパクなり、やはり捨ててしまうので非常にもったいないということ。低塩化の時代です。いつまでもうまく、無駄が出ないタクアン漬けをといろいろ試作したものが、私のタクアン漬けです。特徴は、次の通りです。
筆者。材料のダイコンも自分で栽培する ・老人、子供に多量の塩分をとらせないために減塩
・栄養、医学的に考える(ニンニク、トウガラシ、サンショウの実、ウコン、シソなどの利用)
・スッパクならないための工夫(松葉やニンニクの利用)
・重石は最後まで軽くしない
・低農薬、無農薬栽培のダイコン
・合成着色剤、防腐剤を使用しない
・塩漬けせずに、干したダイコンを一度漬け
このタクアン漬けを普及所に勤めていた当時も、一般女性に昼夜教えていたので、「タクアン和尚」などとあだ名されたものでした。
タクアン和尚の極意を公開
(1)ダイコンの選び方
太すぎるダイコンはダメ原料のダイコンの品種は土質によっていろいろありますが、私は長春、聖護院、練馬系など、収穫しやすい品種を作っています。
また、当地(宮崎)は台風被害が多いので、播種時期は9月下旬〜10月上旬。収穫したダイコンは曲がったもの、スの入ったものを除いて、片手で握った残りの隙間にもう片方の手の指3本入るものまで使用します。指が4本以上入るものだと、太りすぎです。
中蓋をし、重石をし、雨やゴミが入らぬようビニール袋をかぶせておく (2)干し方
雨に当てない、凍らせないダイコンは短日数で早く干し上げるのがコツです。タクアンを長く置くためには、14〜20日干したいものです。そのとき注意することは、まず雨に打たれないこと。それから、水洗いして付着した水がダイコンの表面に残っていると凍結してしまいますので、3時頃までには干す作業を終え日中の陽で水滴を飛ばします。雨に当てたり凍らせてしまうとタクアンの味が落ちます。
干すときは、必ず芯(生長点)をとってから縛ります。芯をとらないと干している最中に生長が進み、スが入りやすくなります。
干しはもっとも重要な作業です。甘塩(四斗樽に対して塩1.5kg)の場合はダイコンがヘの字に曲がる程度(約1週間)、辛塩(塩2.5kg)は10〜15日以上干します。暖冬になった関係で、あまり早く播種すると太り過ぎるので干す時期が早くなります。それだと乾燥しにくく、干しているときに茎葉が暑さで腐ってダイコンがボトリと落ちてしまいますので、暖かい地方での早まきはダメです。
(3)切り方
葉のつけ根から干しがすんだら茎葉を切り落としますが、切る位置は葉のつけ根が一番適しています。
切り終わったら計量をします。ダイコンの目方によって各々の調味料の量を決め、むらのないようによく混ぜ合わせます。
次に桶をよく洗い、拭き、桶より大きめのビニール袋を敷きます。
タクアン完成! 特製漬け床のおかげで、風味も保存もバッチリ (4)漬け込み方
調味量は下を薄く、上を厚くダイコンを隙間なく並べ、その上に混合した調味料を入れます。次にあらかじめ用意した青松葉をパラパラと入れ、再びダイコンを並べます。これを繰り返し行ない、最後に調味料を入れた上に切り取った茎葉(美しいダイコン葉のみ)を敷き、再び調味料を入れ、松葉をふりかけ中蓋をして終わり。
この作業のうち重要なのは、調味料の入れ方です。最初(下の方)は薄く、上段になるほど厚くします。水が上がるようになると、塩分は下のほうに下がっていき、上のほうの塩分が不足するからです。
中蓋をしたら、重石をし、雨水やゴミが入らぬよう一枚ビニール袋をかぶせて作業を終えます。2〜5日で水が上がりますが(ダイコンの乾き具合で変わる)、日数がきても水が上がらないときは、塩水(10%程度)の差し水をするとよいです。
置き場所は、なるべく涼しいところがいいでしょう。時々、樽を覗いてみて、水が上がりすぎているようだったら、除去しひたひたを保つようにします。
(5)保存
重石は最後まで軽くしないタクアンの保存性をよくするには次のことが挙げられます。
・食塩を多く入れる(これは血圧などの問題があり、おすすめできない)
・アルコールを加える
・食酢、乳酸、クエン酸などを加える
・低温で保存する
・桶、重石、ダイコンはきれいに洗う
・ゴミや雨水が入らぬようビニールまたは布をかぶせる
・漬物を上げるとき、汚れた手を入れない
・重石は最後まで軽くしない
(6)仕上げ
真空パックして60〜65度の温度で処理普通、自家用タクアンは食べるたびに桶から上げる人が多いですが、私は最初のもっとも味のよいときに全部上げてしまいます。それを水洗いし、よく拭き、真空パック。60〜65度の温湯でパックのまま15分間処理し、20分程度冷却して冷蔵庫に保管します。
真空パックしない場合は、塩分が少ないので後になると多少スッパクなります。しかし、私が勤めていた時分にアンケートをとってみたら、6割の人が少しスッパイのが好きという結果が出ました。
またタクアンの色素を入れたほうが好まれるか否か、客の大勢入る食堂で調べてみたことがあります。食事についてくる黄色の素を入れたタクアンはほとんどの客が残していたのに、自由にとれるようにしておいたぜんぜん色素を使ってない自家製のタクアンは売れ行き上々でした。
材料 どうやって使うか 分量
(4斗樽に対して)効果 ナスの葉 春ナスの終わり頃、美しい葉をとり、水洗いして干す。ビニール袋に入れて保管しておき、もんでから使用 200〜250g うま味として入れる。肉質や風味、香味がよくなる サンショウの実
(または粉)夏から秋にかけて実をとり、干しておく 20g 独特の色と香りが添えられる。防腐にもなる。臭い消しにもなるが入れ過ぎないこと カキの皮 吊るし柿をするときよく洗って干しておく。小さく切って干しておくとよい 200〜250g 甘味がつくが、糖が発酵を促進し、酸味が出るので多く入れないこと シソ 赤シソと青シソがあるがどちらでもよい。7〜9月頃にとり、水洗いして干す。もんでから使用。実も使えるが収穫が遅れると蛾などがつき、きたなくなるので注意 200〜250g 色、香味がよくなる ニンニク 小さく刻む 100g 強い殺菌作用があり、風味が高く薬味として効果がある トウガラシ 赤くなったら収穫し洗って干しておく 150g 辛味成分があり、色づけにも効果あり。うま味も出る コンブ 小さく切って使用。真コンブ、利尻コンブが最上 260g うま味として入れるが、入れるか否かで味が違ってくる クチナシの実 海岸近くの山野に自生し、秋冬に黄色く熟れた実を採集して水洗い。小さく刻んで使用 5〜8個 ウコン粉と共に色づきをよくするため入れる。ただし多く入れすぎると色がどぎつくなる。ウコンは薬用になり、熱冷まし、消炎作用があり、不眠症にもよい ウコンの粉
(タクアンの素内)作っていないので、タクアンの素(マルマス)を使用 1箱(150g) ショウガ科だが辛味なし。食用黄色素を入れないため、クチナシと共に色づけに用いる。特有な香気を持っているので、香りづけにもなる 甘草
(タクアンの素内)これもタクアンの素に含まれている。また、この素にはサッカリンが入っているので砂糖は500gしか使用していない。種々のタクアンの素を使用してみたが、この素を使ったときが一番味がよかった。別袋で食用色素が同封してあるが、クチナシ、ウコン粉で色つけは十分なので化学色素は使用しない 1箱(150g) 甘味成分があるので、砂糖の代わりに入れる 生松葉 枯れた葉はダメで、青葉を使用。2本で1対になっているので、とりはずす。よく洗ってから使う 200〜250本 酸っぱくなるのを防止するが、あまり多く入れると苦みが出るので基準を守ること 米ヌカ 5kg デンプン、糖分、タンパク質に富み、各種酵素を含むからうま味が出る 砂糖 500g 風味や防腐性を増すために必要で、老化防止にもなる 塩 2〜2.5kg 腐敗防止に絶対必要 (宮崎県延岡市中の瀬町)
お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp
まで 2007 Rural Culture Association (c) |