月刊 現代農業
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収穫前のゼスプリゴールド
収穫前のゼスプリゴールド(ニュージーランド) (上の切り込み写真は香川県育成さぬきゴールド)
新連載 失敗しないキウイフルーツ栽培

今やNZ産のおかげで安定品目

末澤克彦

ミカンの不適地や転作水田で始まった

 ミカンの過剰、オレンジの輸入自由化などを背景に、昭和50年代にキウイフルーツはカンキツ転換作物として生産が始まった。水稲の生産調整も行なわれており、キウイは水田転作果樹としても注目された。

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 当時、カンキツ農家は日照条件が悪く乾燥しにくい園地を排除したいと思っていたし、水田農家は転作水田での高収益果樹を探したいと思っていた。そうした現場の要求と、年間を通じて水分を要求する性質を持つキウイフルーツの特性は一致した。またカンキツ栽培との労働競合の少なさ、あるいは当時は珍果ということで1個100円の販売価格が喧伝され、昭和50年代半ばから60年代初頭がキウイブームとなったのである。

しかし多湿園地では病気が多発、糖度が上がらなかった

 そのキウイブームの中で問題が発生した。湿度が高い園地環境では、カイヨウ病、花腐れ細菌病、貯蔵病害などが多発、糖度も上がらず、生産上の大きなリスクとなってきた。

 価格の低下を乗り切るため、キウイ産業は量の確保より高品質化へと大きく舵がきられた。高品質果実生産が生き残りの条件となってきたのである。 

残った園地では改植が迫られている

 平成初頭から約10年間で、花腐れ細菌病などの多発園地、日当たりや水はけが悪く糖度が上がりにくい園地、果実軟腐病が発生しやすい園地などが徐々に淘汰された。残った園地は適地ということで、果実品質も徐々に平準化されていった。

 今後は植栽から約30年経過したキウイ老木の改植が必要となってくる。まさに、次の一手を探っている状況のなか、今からは適地を判断し、高品質な果実を生産する産地や農家のみが、新時代への道を歩くことができる(表1)。

表1 国産キウイの産地化の発展段階と農業経営上の位置づけ
段 階 農業経営上の位置づけ
ホップ(導入)
(導入初期〜昭和60年代)
水田やミカンの転換作物、不適地対策 キウイであれば高価格(品質不問)
ステップ(定着)
(平成初頭〜現在)
不適地、低品質園の淘汰、品質に応じた価格、高い技術を持つ農家の経営拡大
ジャンプ(発展)
(今後)
キウイの適地生産推進、新品種・高品質果実による市場拡大、キウイ専業農家の出現

ニュージーランドの先導で発展してきた国産キウイ

 ところで、現在国内に流通するキウイフルーツのうち6割がニュージーランド産である。筆者は、このニュージーランドが開拓したキウイの消費に合わせて国産ものをリレーする(端境期に出荷する)ことで、キウイ全体の消費を周年確保できると考えている。消費者へ働きかける販売促進などのマーケティング活動もニュージーランドに頼ることができる。そもそも国産キウイは当初から、輸入果実の先導のもとで発展してきたといえる。

 平成に入ると、この光と影が顕在化してくる。

国産キウイフルーツの栽培面積と価格の推移(日園連果樹統計による)
国産キウイフルーツの栽培面積と価格の推移(日園連果樹統計による)
※台風による平成3年、9年、10年の高騰をのぞけば、平成に入ると価格は右肩上がりに伸びている

表2 果樹の品質と技術の歴史
ブドウ リンゴ 温州ミカン キウイ
明治政府による優良系統の導入 明治政府による優良系統の導入 江戸時代からの紀州ミカン(小みかん) 昭和50年代後半にヘイワードが導入
デラウエア、キャンベルアーリー、マスカット。ジベレリンによる無核化技術(昭和33年〜) 大正〜昭和30年ころまで国光、紅玉等導入品種主力の増産体制。袋かけ技術 温州ミカンの評価と早生、極早生の発見 追熟果実の流通。
Hort16Aの販売開始。緑果肉以外の新しい品種の登場
巨峰、ピオーネなどの開発と短梢せん定、施設栽培技術で高品質化 ふじの開発(昭和37年)と旧品質の価格暴落(昭和43年)。わい化栽培技術の開発 高糖系温州ミカンの発見、温室栽培技術、マルチ栽培技術、糖度選果普及 新しい商品開発と市場を開拓する農家魂で!

 ニュージーランド産果実が厳選出荷と技術向上により安定し、品質のスタンダードとなった。いっぽう国産は全体として、品質のばらつきや貯蔵力不足などの問題が解決されず、台風の被害等も重なり、価格は低落。昭和56年には826円であったキロ単価は平成2年には186円(京浜市場)。栽培面積はこの年より減少を始めた(上図)。

 しかし平成7年頃、エチレン処理で追熟させた食べ頃果実を流通させるニュージーランド産キウイの定着により、国産を含むキウイ全体の単価は持ち直したのである。

 平成14年頃からは、黄肉で甘味の強い、ニュージーランド産ゴールド種(品種名Hort16A,商品名 ゼスプリゴールド)の投入により、市場は一層の活況傾向が明らかになった。商品開発、流通システム構築、価格維持政策だけでなく、若者に人気のある俳優を用いたテレビコマーシャルの放映や店頭試食会も組み合わせることで、日本のキウイ市場を開発、発展させている。

 このようにニュージーランド産の影響を大きく受けることが、国内キウイ産業の強みでもあり弱点でもある。

個性的な品種を作りこなす技術開発で切り開こう

 では、国産のキウイは今後どこに行こうとしているのか? 日本の果物の導入と発展の歴史に目を移すと、一つの方向性が見えてくる。

 明治初期に政府が外国から導入したリンゴやブドウ、モモなどのさまざまな品種は、日本の気象や消費の嗜好に適さず苦労の連続であった。

 しかしその後、ふじや巨峰、白鳳など日本独自の品種が開発され、さらにこれらの品種を作りこなす栽培技術が開発されるに伴い、市場や産業は大きく発展してきた。個性的品種の開発と、その品種の個性を生かしきる栽培技術をもった意欲的な生産者の努力が市場を開拓してきた歴史がある(表2)。

 ではキウイの場合はどうだろう?

 ニュージーランドの開発したゼスプリゴールドは日本人の嗜好を徹底的に調査したといわれている。このことは見方を変えれば、新しい時代の「芽ばえ」かもしれない。増殖が進んでいる赤肉品種「レインボーレッド」、香川県の育成品種の「香緑」「香粋」「讃緑」「さぬきゴールド」なども新しい時代を切り開く品種かもしれない。

 生産者の皆さん。今から新しい投資や改植をすることにためらう方も多いでしょう。しかし国産キウイは、ニュージーランドとの協調のなかで安定的な状況にある。そのいっぽうでまだ歴史の浅い発展途中の果物である。ヘイワードも含め、日本人の繊細な栽培技術をもってすればキウイのマーケットはまだまだフロンティアである。

 この連載では、新しい時代に入ったキウイの現状をふまえ、栽培のポイントを解説していきたい。

 (香川県農業試験場府中分場)

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