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シェフも喜ぶ会津のおばあちゃんのお豆たち
福島県北塩原村・佐藤禮子さん/中谷千恵子さん
倉持正実
暮らしに欠かせない地豆たち
「この青豆の艶はずいぶんいいね。来年はこれを播いてみるかね」「こっちのササゲはまたよく太っているね」と、豆談義に花を咲かせるのは、本誌でおなじみサトちゃん(佐藤次幸さん)のお母さん、佐藤子さんとご近所の友達、中谷千恵子さん(ともに77歳)。
左から禮子さん、中谷さん、サトちゃんと地豆たち 11月末、会津ではもう雪が降る頃、白インゲンの最後の収穫。地豆は基本的に6月の末までに少しずつずらして播種し、順次収穫する。肥料をやり過ぎるとでき過ぎになって実が入らなくなるから控えめに! 約3カ月で収穫して乾燥。その後唐箕で風選し、箕で転がしながら選別、最後に手で選別する。とにかく手間がかかるから、大量には作れない 機械なんてないから、縁側で一粒一粒選別。お茶飲み友達が来て「あんたの豆はいいねぇ」「ちょっと播いてみっか?」という感じで種類が増える
「豆は本来暑さが苦手。このあたりの気候は豆をつくるには最適なんだ。だからいろんな豆を播いてきた。豆は保存食だからいつでも使えるし、おかずやおやつとして毎日の食卓にはもちろん、祝いごとや弔いのときにも豆を使った料理が欠かせないんだ」と禮子さん。なるほど、色とりどりの豆が縁側にならんでいる。白インゲンや花嫁ササゲ(紅白のいかにもおめでたい花が咲く)、なた豆(サヤがかたく鉈のような形)に青豆、一般的な味噌豆や小豆に落花生、夏はもちろん枝豆もある。その他諸々、よさそうな豆を友達と交換しているうちに種類が増え、どこから来たのかわからない豆もある。
大豆は、味噌やしょう油はもちろん、おやつ感覚で打ち豆にしたり、かきもちの中に入れたりもする。小豆は、あんやおふかし(赤飯)に、インゲン類は煮豆や炊き込みご飯にしたりと、豆はほかの食材との相性もよくて大活躍。
禮子さんの地豆料理 禮子さんと中谷さんの地豆たち。 1〜3は、ぜんぜん違う豆にみえるがすべて花嫁ササゲの仲間。4白小豆 5青豆 6味噌豆 7黒豆 8小豆 9モロッコインゲン 10大豆 小豆とカボチャを炊き合わせた「冬至カボチャ」(1)は、冬至に食べると風邪をひかないと言われてきた。青豆と数の子をさっぱりと合わせた「豆数の子」(2)は、祝い事によくだされる。3「黒豆納豆」4「味噌豆の五目煮」5「黒豆の甘露煮」6「モロッコインゲンの煮物」7「白インゲンの煮物」など、どれも昔から食べてきた代表的な豆料理。それぞれ豆の食感が異なり、素材の違いが味わえる 豆の個性がシェフの料理を際立たせる
「イルレガーロ」のシェフ・小椋潤さん(右端) そんなおばあちゃんたちが自家用として細々と作り続けてきた会津の地豆が、今レストランのシェフたちからひっぱりだこなのだという。仕掛人は、やっぱりサトちゃん。
サトちゃんは、会津周辺や首都圏のレストランにイタリア野菜を出荷している。イタリア料理でも豆は一般的な食材。そこでこれまで道の駅などに出荷していた禮子さんの地豆を、それぞれの店のシェフにすすめてみた。
すると、「サラダの彩りがきれいになる」とか「五種類の地豆をスープのクルトン代わりに使うと、同じスープが豆によってぜんぜん違った味になっておもしろい」など、豆の個性が料理の特徴を際立たせる役目をしてくれるといった反応が返ってきた。地豆はシェフの料理でも大活躍! レストランで地豆を販売する店まで出てきた。
そのなかの一軒、ホテル&リストランテ「イルレガーロ」のシェフ小椋潤さんによると「地豆はおもしろいですよ! 使いやすい素材です。イタリアンのなかに和風の味付けも盛り込める。オリーブオイルやワインとの相性もいい。なによりおばあちゃんの顔が見えるのがいい。安心でしょ。ミネストローネなどのスープはもちろん、野菜と青豆を入れたパスタなんかもいいんじゃないかな…」と、次のメニューの構想も膨らむ。
小椋シェフの地豆料理 和牛煮込みインゲン入り
柔らかく煮込んだ牛肉とモロッコインゲンの相性がいい地豆のサラダ
各種の豆と野菜の彩りが鮮やか。野菜もすべてサトちゃんの野菜リゾット
冬野菜と4種の豆が入る。五穀米をイメージしたという白インゲンとサンダニエレの生ハムのサラダ
煮すぎていない白インゲンの食感と生ハムの塩気が絶妙な組み合わせ。いかにも豆を食べているという感じこんな状況に「めんどくさいから、あんまり注文すんな」と言いつつも、袋詰めに余念がない禮子さん。地豆とイタリア料理の結びつきで、禮子さんたちもますます忙しくなりそうだ。
この冬も、陽のあたる縁側には、一粒一粒丹念に豆の選別をするおばあちゃんたちの姿がある。
(フォトオフィスK)
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