月刊 現代農業
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菜の花

緑のディーゼルSVO・WVO

天ぷら油で車・農機を走らせよう

臼井健二

「菜の花エコプロジェクト」は、滋賀県環境生活協同組合の提案により1998年に同県町(現・東近江市)で開始されました。今では全国各地の自治体・NPOなど80カ所あまりで取り組まれています。信州でも3年くらい前からこのプロジェクトに取り組んでいます。安曇野菜の花プロジェクトは、菜の花を育て、その油で料理をし、その廃油で車を走らせ、排出された二酸化炭素を菜の花が吸収するという循環型のプロジェクトです。

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 私は、持続可能な生き方をめざす小さな宿(ヒュッテ)をやりながらこのプロジェクトに取り組んでいます。ものの豊かさのなかで、現代人が忘れかけているつながりを取り戻せたらと思います。食料・エネルギー・水、これらの自給ができたらもっと安心して暮らしが成り立つと思うのです。

天ぷら廃油が濾過するだけで燃料になる

 菜の花の油で車を走らせるというと、BDF(バイオ・ディーゼル・フューエル)がだいぶ知られるようになってきました。BDFは、廃食用油にメタノールを加え化学反応(エステル交換)させて精製することで、どのディーゼル車でも使えるようにした燃料です。ディーゼルエンジンで動く車やトラクタ・コンバインなどの農機の燃料として、軽油と同じように使えて、軽油にくらべ有害な排ガスが少ないという利点があります。

シャロム号
SVO化したわが家の「シャロム号」

 それに対して、ここで紹介するSVO(ストレート・ベジタブル・オイル)やWVO(ウェイスト・ベジタブル・オイル=廃食用油)と呼ばれる燃料は、ディーゼル車に使える植物燃料で有害な排ガスが少ないことはBDFと同様ですが、いわば天ぷら廃油から天ぷらカスを除いただけの100%植物油。BDFのような精製処理は必要ありませんが、その代わり車の仕様を変更する必要があります。

 車の仕様変更という手間は必要になるものの、SVOはBDFの次のような課題を解決する燃料でもあります。

(1)製造過程で発生する洗浄水の処理。

(2)エステル化の過程で副産物として分離されるグリセリンの処理。

(3)エステル化未反応中間生成物による燃料タンク、およびエンジンへのダメージ(メッキはがれ、さび発生など)

(4)薬品(メチルアルコール、水酸化ナトリウム)代を含む製造コストが1リットル当たり30円以上かかる。

粘度が高い油を温めてサラサラにする

 そのほかBDFは、利用できる地域が製造装置近くに限られたり、製造方法に対する品質規準が確立していないため、気温が10度以下になると燃料が曇ってしまう、燃料として改質するには特別な外国製添加剤が必要なことから、冬季にはほとんどバイオディーゼル燃料が利用されていない、といった事情もあります。

 そんななかでドイツのエルスベット社が、アタッチメントを車に取り付けることによって食用油そのままで使えるような方法を開発しました。食用油は軽油に比べて発火温度や粘性が高く、自動車の燃料としては扱いにくいものです。この扱いにくさを、BDFのような薬品処理ではなく、燃料をエンジンに送る前にあらかじめ温めて粘度を下げることで改善するのがこのアタッチメントの役割です。

 現在では、エルスベット社以外のアタッチメントも手に入るようになり、アメリカでは5000台、日本では営業車を除くと50台くらいの車が「SVO化」されています。

 以下、廃食用油(WVO)を利用する場合も含めて、食用油を濾過するだけで燃料にすることをSVO化とよぶことにして、解説していきましょう。

ラブクラフト社アタッチメントのセット。約5万円
ラブクラフト社アタッチメントのセット。約5万円

ドイツやアメリカのSVOアタッチメント

 左ページの写真は、エルスベット社のSVOアタッチメントを取り付けた場合の例です。

 ポイントは、

(1)始動時の燃料加熱(電気ヒーター等)

(2)走行時の燃料加熱(ラジエター温水熱利用)

(3)燃料の濾過と油水分離フィルターの追加(流動抵抗を下げる)

ラブクラフト社の熱交換フィルター
ラブクラフト社の熱交換フィルター

 一方、アメリカのラブクラフト社のSVO化アタッチメントは、熱交換フィルターで燃料の温度を上げ、電磁ポンプで送るだけというシンプルな構造です。粘度の高い燃料を電磁ポンプで送るのが特徴です。エルスベット社のアタッチメントに比べると、始動時に燃料を加熱するヒーターがないため、気温が五度を切る時点で始動が問題になります。私の車では、これを後述するような二タンク方式でクリアしています。また、噴射ポンプ前にプレヒーターを付けたり、グローの時間を長くする方法でも改善可能です。

 両社のアタッチメントとも、利用する場合は個人輸入することになりますが、私たちのグループでは、そのお手伝いをできるようにしたいと思っています。ちなみに、ラブクラフト社のアタッチメントの価格は5万円ほど、エルスベット社のアタッチメントを数年前に入手した方は12万円くらいで購入したそうです。

国内の部品でのSVO化も続々

 SVOや廃食用油を利用する場合、寒冷地ではどうしても冬の始動が困難になります。そこで始動時は軽油を使い、ラジエター液が温まってきたらこれで食用油を温め、SVOに切り替える。そして停車間際にはまた軽油に切り替える、というSVO化もあります。これが二タンク方式です。寒冷地ではこれにより始動性の安定が図れます。

 このほか、今では日本の部品でもSVO化が可能になり、各自が創意工夫して取り組んでいます。その詳細は、ウェブページ(http://www.ultraman.gr.jp/~staff01/)で紹介しておりますのでご覧ください。

天ぷら廃油の濾過のしかた

 さて、車の仕様変更とともに、廃食用油をいかに濾過するかがSVOの課題です。当初は、濾過が不十分で噴射ポンプが詰まり、エンジンが始動できなくなったこともありました。油まみれになりながら苦労を重ねて現在があります。

 簡単な濾過方法としては、コーヒーフィルターを使ったり、家庭用の台所油こしフィルター(コスロンフィルター:丸五産業)を使う方法があります。いずれにしても1ミクロン(1000分の1ミリ)くらいの目で濾過することが必要です。

 右の写真は、オイル缶(ペール缶)の底に10mmの穴を4つあけ、市販の家庭用コスロンフィルターを四個取り付けたものです。フィルターが1個25円、フィルターを抑えるおもり(コマ)も1つ200円(送料別)で購入できます。濾過精度は1ミクロンくらいとのこと。

 また私は、廃食用油を早くきれいにするために、ポンプを使って濾過するシステムも製作してみました。最後に遠心分離機にかけることで動物性の油脂も除けます。これにより、冬場にゲル化(固まる)することがなくなります。詳しくは前記ウェブページをご覧ください。

陸運局への届けは簡単、農機なら軽油と混ぜて使える

 SVO化は「改造」でなく「仕様変更」になります。車のライトを替えるような扱いです。食用油を車の燃料に使用するためには陸運局への届け出が必要ですが、費用は書類用紙代60円のみ。手続きも五分程度で終わります。車検証に「廃食用油燃料併用」と記載されます。

 また、冒頭にも書いたように、SVO化はトラクタなどの農機にも有効です。農機の場合は、車と違って税法(軽油引取税)上の問題がないので、軽油や灯油と混ぜて使うことも可能。夏場だと、しっかり濾過さえすれば、SVOに3割の軽油あるいは灯油を混ぜれば問題なく動きます(自動車では、軽油などとのタンク内混用は認められていません)。

 SVOはまだまだ発展途上です。いろんな問題をかかえつつ、それを一つ一つクリアしながら、化石燃料にとらわれない持続可能な燃料として発展しています。とくに廃棄するしかなかった廃天ぷら油を使用できること(この場合はWVOですね)がその良さでもあります。

(WVOグループ・安曇野菜の花プロジェクト 長野県安曇野市穂高有明)

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