月刊 現代農業
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満月。旧暦の15日

追求 月のリズムと作物のリズム

月のリズムで暮らす村――長野県泰阜村より
「タネまきは満月、移植は新月」でトマトがゆったりラクに育つ

宮澤茂與

「月のリズムで暮らす村」を商標に

「やすおか村産直組合」のメンバー。右から4番目が筆者。トマト・キュウリ・アスパラガスなどの野菜やナシ・リンゴ・キウイなどの果樹もつくる

 私の暮らす長野県泰阜村は伊那谷にある、山間地の遊休荒廃地が増えつつある人口2000余人の小村で、福祉の充実した村として全国的に有名です。

 さわやかな空気、清らかな水に恵まれたこの地で、より美味しい野菜、より安全で確かな野菜をつくり、都会の消費者に直接届ける。それで、さらなる村の活性化につながればということで、平成18年3月に17軒の農家が集まり「やすおか村産直組合」を立ち上げました。私は77歳ではありますが、産直組合の顧問という立場で日々組合員と共に努力しています。

 5年前、現在この組合のアドバイザーを委託している土微研の主宰者であり、農事気象学会の事務局長の片山悦郎氏から「生物は月のリズム(周期)により生育がコントロールされている」という話を聞きました。最初は半信半疑。でも、作物を栽培しながら生育を観察すると、月のリズムで生育が変化しているのを実感できるようになりました。そこで我々有志が月のリズムを取り入れてトマトを栽培したところ、余計な労力や経費を使わずに、楽しく美味しいトマトを作る方法が見えてきたのです。

 村もさっそく「月のリズムで暮らす村」という商標を登録し、応援してくれるようになりました。

 そうこうしている間に、村内の道路改良工事の現場から、6500万年前に海底から隆起した「泥質岩」の層が見つかり、役場職員が土壌分析したところ、古代の海底ミネラルを豊富に含んでいて、農産物栽培に非常に適していることが判明しました。

 月のリズムを取り入れた栽培と古代海底ミネラル化石を使った栽培をもとに村の活性化に取り組んでいます。

月のリズム栽培 - 7カ条

 産直組合で取り入れている月のリズムにそった栽培方法は次のとおりです。

(1)タネまきは満月の5日くらい前から満月までとする(根量が増える)
(2)移植・定植は新月の5日くらい前から新月までとする(活着がよい)
(3)新月の頃は栄養生長になりやすく徒長しやすいので、リン酸・カリを効かせて調整する
(4)満月の頃は生殖生長になりやすく芯止まりしやすいので、チッソを効かせて調整する
(5)害虫は満月に産卵孵化するので、その四〜五日後にたたく(月1回の防除で激減する)
(6)病気は新月の栄養生長に傾く頃に発生しやすいので、その前に葉面散布や防除で対処する
(7)月のリズム(農暦)は季節を表わすので旧暦を見ながら計画的な段取りでゆったりと仕事をし、生活する

 発足から1年目は、組合員の大部分が月のリズムをよく理解できなかったため、みなで猛勉強。2年目の昨年は多くの組合員が月のリズムの意識を持ちながら生産に取り組んだ結果、あちらこちらから「すごい」との声が出るようになりました。ただ、月のリズムが持つ意味は奥が深くまだまだ勉強中です。

トマトへの取り入れ方

 私はトマト10a(ハウスの夏秋栽培)とアスパラガス25aを息子と共に経営しています。
 とりあえず私個人の月のリズムを取り入れたトマト栽培を昨年の取り組みから説明します。

育苗から定植まで

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▼満月前の播種で子葉の小さいガッチリ苗に

 鉢への播種は満月が3月4日なので、前もって2月20日に200穴のプラグトレイにタネをまいておき、しっかりかん水して日の当たらない寒い屋外にシートをかぶせました。これは浸種代わりにタネに給水させるための育苗の予備作業です。

 満月の3日前に屋外に置いたプラグトレイを育苗ハウスに持ち込み、本格的な育苗を開始しました。満月の頃は生殖生長に傾く時期ですが、発芽のときも地上部より根が先に出て、ゆっくり発芽するので、根数が多くなるようです。新月前にまくと栄養生長に傾く時期なので徒長してしまいます。

 ハウスに入れてから7日後に地割れし地上部の発芽が始まりました。初めの頃は発芽も不揃いで貧弱のように見えましたが、根がしっかり張っているのか、日に日にガッシリし、子葉は小さく小ぶりの苗になりました。

▼移植は新月から5日遅れたが…

 鉢への移植は3月24日(新月は3月19日)で、新月から五日過ぎていましたが、満月に近くなると活着不良の可能性が出てくるので、なるべく早く本葉2枚程度の苗で行ないました。鉢土の水分は土を手で握っても固まらない程度の約25%前後。仮植してからのかん水は降雨日を除いた毎朝、一鉢に初期10cc、後半20cc目安で朝かけた水が夕方乾く程度で行ないました。

▼定植は新月の1日前に 定植時の苗は最高の出来!

 定植は5月16日(新月の1日前)に一段花房の蕾が見えて花房の方向がわかる程度の状態で行ないました。以前のように花が咲くのを待てばもう10日後でもよかったのですが、満月に近づけて活着不良にさせないため、あえてその日にしました。定植時に根の状態を観察したのが上の写真です。根がトグロを巻いた横根ではなく、縦根でよい状態でした。

 以上、昨年は完璧に月のリズムで育苗作業を行なった結果、今まで以上の苗ができたと自信を持つことができました。一番の驚きは根がトグロを巻かずに縦根の状態であったことです。

定植から収穫まで

▼新月前の定植で活着抜群

 定植後の生育状態は、新月前に定植できたため、すこぶる活着がよく萎れはありませんでした。いつもなら活着するまでに2〜3回かん水していましたが1回ですみました。新月の頃は栄養生長に傾くので生育が旺盛になって、活着もよかったのかと思います。

 しかし早効きの肥料が多かったため、初期の樹勢が強くなってきました。そこで生育をゆっくりさせ、生殖生長に持っていくためにPKアップ(リン酸・カリ)を1000倍で1週間おきに5回ほど葉面散布したところ、暴れ傾向は収まり、節間が短くじっくり生育しました。

▼かん水は、新月控えめ・満月多め

 かん水は月のリズムを見て、新月の頃は栄養生長に傾き徒長しやすいので控え気味に、満月の頃は多めにするように細心の注意を払いました。

 収穫は7月下旬(満月は7月30日)頃より始まりました。8月、9月、10月と順調に収穫し、一本当たり4.2kgの収量でした。私たちのトマトの栽培は夏秋でも糖度六度以上を目指しており、定植前に畑を鎮圧してドリルで植え穴を掘って植える鎮圧栽培を取り入れています。そのため玉は少ないにもかかわらず10a当たり8tを超えることができました。

防除のやり方

▼殺菌剤は新月の前に 本当は必要なかったかも…

 病気に対しては一昨年灰カビ病が多く見られましたが、昨年はほとんど付きませんでした。一昨年のことを思い、殺菌剤を新月の前に2回散布しました。思い返せば昨年は健全に育っていたので病気への防除は必要なかったかもしれないと反省しています。

▼殺虫剤は満月の4〜5日後で バッチリ効いた!

 害虫に対しては一昨年にハモグリとオオタバコガにやられたため、満月の4〜5日後に全部で4回殺虫剤を散布しましたが、虫の発生・食害はほとんど見られませんでした。

 満月・新月を意識してからは薬剤散布の回数が以前の半分以下になりました。防除計画も立てやすいので作業の段取りもしやすくなりました。

みんなの心に余裕が生まれてきた

 月のリズムで栽培した「やすおか村産直組合」の生産物は宇宙からの太陽の恵み・月の恵み・大自然の恵みをいただいて育った命です。大部分は名古屋・岐阜の大手スーパーがコーナーを設けてくれて販売しています。

 自然に逆らわず自然に順応していく月のリズム栽培で収穫する作物も素晴らしくなるとともに、我々生産者の心に余裕が生まれるようになったと感じる今日このごろです。

 今年は組合員全員が月のリズム栽培で笑顔満面の1年になれるよう頑張ろうと、旧暦(農暦)の元旦・2月7日に村の神社に祈願したところです。

(長野県下伊那郡泰阜村)

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