月刊 現代農業
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農文協のトップ月刊 現代農業2008年7月号>田んぼの生きものは何でも売れる

野生のメダカを守るため、休耕田を利用して作ったビオトープ。30種以上の水草も生える

生きもの田んぼで楽しく稼ぐ

メダカもザリガニもヌマエビも
田んぼの生きものは何でも売れる

高橋孝憲

メダカを守り田舎の原風景を再現したい

 私が近所の堀で10匹のメダカを見つけ、本格的に飼育を始めてから早、10年の歳月が流れた。この間環境破壊はますます進み、十数年ほど前までは我々の身近にいた「野生のメダカ」は、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種II類に指定されてしまった。

 メダカは、英名でrice-fish(ライスフィッシュ・米の魚)と呼ばれる。稲作の進展とともに分類を広げてきた魚で、自然と人間との関わりを映すバロメーターとも言われる。私は、自然と人間が共存・共生していた田舎の原風景を再現するには、まず身近にいる「魚の生活を守る」ことが必要であると信じている。そこで知人から休耕田を借り受け、「野生のメダカ」を環境保全のシンボルとして守るため、「メダカの郷」(別称「ビオトープ・メダカの楽園)を立ち上げた。

 その後、「メダカおじさん」に始まり、「メダカの伝道師」「自然観察家」「ナチュラリスト」「夢先案内人」などの名で新聞やテレビなどに数えきれないほど登場させていただき、全国のいろいろな方々と知り合う機会を得ることができた。たいへん感謝している。

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 昨今、諸物価の値上げなど何かと暗い話題ばかりが目立つが、少し明るい話を提供してみようと思う。

自然用水路の田の「メダカの郷米」

 私には心を許し合い行動を共にしている二人の友がいる。尾形耕治氏と千葉富男君である。尾形氏は、畜産と稲作に取り組む専業農家。環境保護に強い関心を持ち、「野生のメダカ」を通しての環境保護の啓蒙に努めている。

 氏は志を共にする人たちとメダカなどの小動物も安心して住める田んぼ作りにとりかかり、「メダカの郷米」(「大崎メダカ米」に改称予定)を生産するに至った。

 メダカの郷米は、用水路も自然のままで生活排水も入り込まず、メダカやヌマエビが棲息する環境に優しい田んぼで作られている。ミミズなどいい土の製造者である土中生物を有効に活用するため、化学肥料や農薬の使用を慣行栽培の半分まで控え、飼育している牛の糞で作った完熟堆肥を使っている。収穫後のイネは天日干しで自然乾燥させ、太陽の光を浴びて甘みを増したおいしい米にする。

 今後は野生のメダカやヌマエビが棲息する昔ながらの田んぼで穫れた米であることを訴えながら積極的に販路を開拓し、10kg5000円でも喜んで買ってもらえるよう頑張りたい。

大盛況「アメリカザリガニを食べる会」

用水堀に網をしかければ、一晩で500〜1000匹のザリガニがすぐとれる。自給率向上にも一役買えるかも

 千葉富男君は、米をはじめ、メロン・イチゴ・花などの複合経営を行なっている専業農家である。彼は別名「ザリガニ博士」。料理の腕も一流で、アイデアを駆使して田んぼのアメリカザリガニの調理に取り組んでいる。千葉君曰く「アメリカザリガニは、田んぼのロブスター。臭みが少なくエビと同じような食感で、おいしくヘルシーな食べものです。最近ザリガニ料理のレストランも増えてきましたが、ご家庭でもおいしく料理できます。ぜひ食べてみてください」。

 ザリガニは、尾だけとって殻付きのまま10分くらい茹で、殻をむく。サラダや天ぷら、煮付け、エビチリ、チャーハンなどなど、いろいろな料理にして食べられる。

 昨年八月、「アメリカザリガニを食べる会」を開催したところ、約100人が参加。テレビやラジオ等の取材もあり、大盛況だった。もちろん今年も開催する予定である。

養殖希望者殺到!ヌマエビ

地域おこしのために「フナ・コイ祭り」も開催。用水堀でとったコイやフナをさばき、身を1kg600〜700円で販売したところ、「甘露煮にしたい」「出汁にしたい」とよく売れた

 去る3月27日には、尾形氏の田んぼにヌマエビを放流した。このヌマエビ、農家の人たちばかりでなく、これから農業に参入しようとしている人たちにとっても最大の関心事のようで、休耕田での養殖希望者が殺到。すでに500件以上、ほぼ毎日希望者が訪れている。うち八割が農業関係者(残りの二割は川魚専門の料理店や釣りエサを求める釣り店、淡水魚飼育愛好家など)。低米価時代に副収入源を求める農家の切実さがはっきり見える。

 ヌマエビは、藻などをエサにして生きるため、休耕田に放流しておけばほとんど何も世話しなくても養殖できる。農家は「農業収入が上がらないので、田を荒らしたままにするケースが多い。でも水を張っていればいつでも元の田に戻せる」と、エビ養殖の利点を指摘する。

「昔はそこらでいっぱい売ってたけど、今はなかなか売ってない。懐かしい味をまた食べたい」という問い合わせもかなり多く、需要の見込みもつかんでいる。

ジュンサイもよさそう

 ヌマエビに次ぐ元手と手間要らずの自然食材の第二弾が、ジュンサイである。ジュンサイは、スイレンのように池沼に葉を浮かべる多年草で、寒天状の粘物質に包まれた若い巻き葉が食用になる。水を深めにすれば放っておいても育つが、生活排水や農薬の流入には弱い。

 メダカの郷では、メダカ池で育てたジュンサイの茎を農家などに無料提供することも始めた。夏場には根付き、のどごしがなめらかな若芽が食べられる見込み。試食会を行ない、反応がよければ本格栽培したいと考えている。

根強い人気 田んぼの生きもの水槽

 食材にならない生きものを売ることだってできる。7年ほど前、大崎市のホームセンターで、メダカの郷で増養殖している淡水魚を販売させていただいたことがある。商品は、コイやフナ、雄の婚姻色がとても綺麗なタイリクバラタナゴやカネヒラ、カラスガイやドブガイ等の二枚貝、水草など。これらをコーディネートすれば、鑑賞用アクア(水槽)のできあがりである。この方法は現在も人気があり、販売を続けている。

 タナゴの仲間は、ドブガイ等の生きた二枚貝に産卵する。その二枚貝は、幼生期にメダカやタナゴの体表やエラに寄生し、ある程度成長すると魚体から離れ、底生生活に移行する。つまりタナゴ類が生きるためには、繁殖用の二枚貝とその生活宿主も最低限必要なのである。

 ある生きものを育てるには、多様な生きものがお互いに関係しながら生きてきた環境そのものを復元する必要がある。田んぼの生きものをコーディネートした水槽は、自然の摂理を子供たちに教える材料にもなるのだ。

生きもの販売で起業予定

 これまでメダカの郷では、コーディネートした水槽を除き、メダカはもちろん、ザリガニやヌマエビなども無料で提供することを旨としてきた。しかし提供した多くの方々が、対価として多額の品々を届けてくださるため、かえって恐縮してしまっていた。

 そこで一計を案じ、今後はメダカ以外の生きものについては価格を設定し、廉価で提供する販売事業を始めることにした。今年の秋を目途に起業をしようと考えている。自分一人ではやっていけないので、尾形氏や千葉君の協力を得、三本の矢となって事業を進めていこうと思っている。近所のおばさん方にも手伝っていただくことで地域の雇用の場にもなれば幸いである。純益はみなさまからの浄財としてお受けし、環境保全のための活動に還元したいと思っている。

 本文をお読みになった全国のみなさん、宮城県、そして大崎市・メダカの郷へお越しください。様々な品物を用意してお待ちしています。

(宮城県大崎市)

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