(写真はすべて赤松富仁撮影) 刈り払い機より速い!安全!気持ちいい!
大鎌で草刈りガソリンゼロ(★動画で見る)
小川 光
刈り払い機より速い!?
私は草刈りに、刈り払い機(草刈り機)ではなく、大鎌を使っています。これは、ハウス周囲の草を刈る時、らせん杭にぶつかったり、マイカ線を切ったり、針金がからみついたりといった事故を防ぐためですが、そのほかに、大嫌いな排気ガスを吸い込みたくない・石をはね飛ばして失明したくない・ガソリンやオイルを入れるのが面倒だし金もかかる・冬季の保管が悪いと、使うときに修理しないと使えない・音がうるさい・高い所のクズや枝落としがやりにくい、など、いろいろな理由があります。
筆者と、全長137cmの大鎌。左手をかけているほう(向かって右)が、左打ち用大鎌 ハウスの際などは、断然、刈り払い機より大鎌のほうがやりやすい こうして大鎌を使ってきましたが、私は野球でいえば「右投げ左打ち」のため、普通の使い方ではどうしてもうまく刈れず、刃を外側に払うような刈り方を続けてきました。この方法でも、慣れれば力も入りますし、速さでは負けません。ある年、集会場いっぱいに生えたヒメジョオンを、刈り払い機の人と同時に刈り始めたら、終わった時には私が七割以上を刈っていました。
左利き用の大鎌、感激の使いやすさ
昨年8月、村人足の帰りにぼんやりして大鎌を紛失してしまったため、新たなものを買おうと金物屋に行ったら、偶然にも左用大鎌(刃が反対向きについている)が倉庫にありました。刃を包んでいる新聞紙は何と「昭和61年」。桑田が巨人新入団選手として紹介されています。21年間も倉庫に眠っていたのです!
さっそく使ってみると、これはすごい! 地際からきれいに刈れるし、疲れない。それまで右利き用を使っていたときは、細かい作業、たとえばハウス際でらせん杭を避けながら刈るとか、土手に咲いているヤマユリを残して刈りたいときなどは神経が要ったし、地際から刈れずに切り株が高くなってしまいがちでしたが、そんなことももうありません。こんないいものがあるのに、みんなはなぜ刈り払い機を使っているのか理解に苦しむ……と思いました。
左打ち用の大鎌(左)と、右利き用の大鎌。右の鎌の形は、鉈のように、かん木などを叩き切るのに向いている 早朝草刈り、選び刈りが得意
一般に刈り払い機が大鎌に代わって使われるようになった背景には、メヒシバのような比較的軟らかいイネ科の草を、日中、地表近くで刈り取るには、大鎌より適しているということがあると思います。草は日中しなっており、大鎌ではうまく刈れません。しかし、イネ科の草は生長点が地際にあり、葉だけ刈ってもすぐ再生してきます。大鎌なら逆に、刃先で根元をえぐり取ることもできます。
また、刈り払い機を使う場合は、草は種類によらず、すべて刈り取ることを前提にしています。
大鎌を使う場合、早朝に草刈りをすることが必要となります。また、草の種類を見分けて、メヒシバのような有害雑草のみを刈り取り、悪い草を抑える役割を果たす他の草は刈らないようにすれば、草の種類が改善され、短期間で草刈りが不要の草種に変わってゆきます。
たとえば、ヨモギやヨメナ(野菊) を残すようにすると、宿根草なので根が土をしっかり押さえて土壌浸食をくい止め、天敵の住処となって害虫被害がなくなり、マルハナバチも野生して花粉を交配してくれます。伸びすぎたら踏み倒せばよく、鎌はいりません。(★この様子を動画で見る)
大鎌で、地球を守る
近年、町の鍛冶屋さんは激減し、鍬や鎌を作る人がいなくなりました。ホームセンターに行けば大量生産のステンレス鎌とともに、従来型の大鎌も出回っていますが、消費量が少なくコストが高くつく左用は販売していません。もちろん、刈り払い機の普及がその前提にあります。しかし機械も右利き用に作られているため、左打ちの人はやはり不便を強いられています。
刈り払い機が畦畔の植物相に影響を与え、根が浅いイネ科植物を増やす結果となり、畦畔崩落や、水田に侵入する厄介な草の増加を促していると言えないでしょうか。大鎌を使うことにより、自然の生態系を活用して豊かな農業を再生したいものです。もちろん、ガソリンの高騰から財布を守ることや、健康、そして地球温暖化防止にもつながりますし。
(福島県喜多方市山都町)
ハウスサイドの草刈りは大鎌におまかせ
* 2人は小川さんのところで修業中の新規就農者。撮影にご協力いただきました。ちなみに小川光さんは、毎年、数人の新規就農希望者を受け入れ、かん水設備がない山間地で、ハウスメロンやトマトを無農薬でつくる技術を伝授している。これまで40世帯以上が周辺地域に移住するのに貢献した。(編集部)
大鎌は、選び刈りも得意
有機無農薬でつくるためには草は全部は刈らない。日陰をつくったり、作物にからみつく「悪い草」だけを刈って、あとは天敵をよぶ「野草帯」として温存する。
ヨモギやイタドリなどは、こうやって踏み倒しておけば、地面を覆ってイネ科の草が出にくくなる。何年かやっているうちに、刈らなきゃいけない草はハウスから消えていく(★この様子を動画で見る) 大鎌で刈る草は、基本的にはカヤなどイネ科の草。大きくなって日陰をつくるからだ。また、ツルで這う草(カナムグラやノブドウなど)も、作物にからみつくので、刈るか抜くかする。ちなみに私のハウスは、ウネ部分のみをトレンチャーで部分耕し、それ以外のところは不耕起。歴史の浅いハウスの通路には写真のように草が生える(★この様子を動画で見る)
野草帯のヨモギがバンカープランツになって、天敵が寄ってくる 作物のまわりの「野草帯」。無農薬栽培にはこれが必須
刈り払い機で刈るか大鎌で刈るかは、「単に草を刈りたいのか、種類を選んで刈りたいのか」、また「朝型の生活か、夜型の生活か」など、生物多様性や環境問題、生き方などが広範にかかわってきます。最近は、都会の郊外の空き地の草刈りも、騒音を立てて刈り払い機で行なっていますが、これなどは完全に大鎌のほうがいいと思います。
……感覚としては、近距離の平地を、自転車で行くかバイクで行くかに似ています。
しかし、話題の「夏時間」が導入されると、早朝でないと能力を十分発揮できない大鎌は、兼業農家には不利ですね。
小川さんの技を動画で見る
「ハウスサイドの草刈りは”大鎌”におまかせ」
(flv形式/1分16秒/約2MB)
(動画の内容)
ハウスサイドの草刈りは、刈り払い器具だとビニールやひもにひっかけてしまいがち
ハウスの外側、内側のカヤを刈る小川光さん
「大鎌は”選び刈り”も得意」
(flv形式/1分28秒/約2.3MB)
(動画の内容)
無農薬でメロンやトマトを栽培している小川さん、作物の害にならない草を残して「野草帯」を作っている。草を見分けて残す”選び刈り”にも大鎌が持ってこい
カヤは刈り、イタドリやヨモギは踏み倒し、ホップ、ノブドウ、カナムグラなどのツル性の草は抜く
ヒメジョオンは大鎌で刈りやすい
選び刈りで野草を残せば「野草帯」のヨモギに害虫の天敵が寄ってくる
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