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これが自然堆肥
これが自然堆肥。ほとんど落ち葉そのもの

自然堆肥がブームです

編集部

落ち葉・枯れ草だけの「自然堆肥」で

おいしい野菜がザックザク

 今、無施肥・無農薬の自然農法に取り組む人たちの間で、静かなブームになっているものがある。その名も「自然堆肥」。堆肥といっても家畜糞尿はいっさい入っておらず、切り返しや水分調整なども基本的にしない。山の落ち葉や枯れ草を、一冬野積みにしただけのものだ。

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 もちろんチッソ分は微々たるもの。なのに使っている人は、畑に入れるのはただこれだけ。肥料らしいものはいっさい入れない。にもかかわらず、どんな野菜でもよくとれる。「ケチには作れない」というほど肥料を食うはずのナスでさえ、「なってなってしょうがない」というほど。

 そのうえできた野菜は、味はもちろん、無農薬なのに見た目も非常にキレイで直売所では引っ張りだこの人気がある。そんな噂を聞きつけた農家はもちろん、家庭菜園やガーデニングを楽しむ人たちまでも、自然堆肥を使い始めているという。

収量・病害虫の「壁」を突破するために

 とはいえこの自然堆肥、最近できたものではない。自然農法の創始者である故岡田茂吉氏が、「畑土のほうは、枯れ葉や枯れ草の葉筋が、柔らかくなるくらいを限度として腐食させ、それを土によく混ぜるのである」と言って昔から指導していた方法である。改めて見直されることになったのは、自然農法に取り組む人たちがぶつかっていた「壁」を克服するためだった。

自然堆肥だけで育てたキャベツ
自然堆肥だけで育てたキャベツ。虫喰いも少なくてキレイ

「壁」とは、病害虫にやられたり、収量・品質が思ったほど上がらないこと。世の中の流れもあって、自然農法に取り組む人たちは増えてきている。しかし新しく取り組む人たちほどすぐにこの壁にぶつかり、自然農法を諦めることになったりしていた。

 事態を重く見たMOA自然農法文化事業団の普及員たちがよくよく話を聞いてみると、壁にぶつかっている人たちほど、「作物を育てるためには、何かを土に施さないといけない」という思いが強く、化成肥料は使わなくても米ヌカや油粕などの有機物をついつい入れすぎてしまう傾向があったらしい。

 逆に数十年にわたって安定していいものをとっている人たちがずっと実践していたのが、自然堆肥以外に何も入れない方法だった。

 無施肥の山でも樹木は大きく育つように「自然にチッソなどは過不足なくある」と考えるのが自然農法の基本。もちろん野菜も無施肥で育つ。ただし山に毎年積もる落ち葉や枯葉くらいは、畑にも入れたほうがいい。

 ほかに人間が持ち込んで畑に入れるものは、たいていの場合が作物にとって本来必要でないものと考える。この余計なものを消化するために出てくるのが病害虫だ。

 キャベツなど、無農薬で作ると普通はアオムシにやられてスケスケになってしまうだろう。でも自然堆肥だけで作り続けてきた人の畑では、アオムシがいることはいても、食痕があるのは緑の濃い外葉だけ。人間が食べる結球部分にはほとんど影響がないという。

 実際、MOA自然農法のさまざまな試験を行なっている研究員たちが自然堆肥だけの栽培試験を行なってみたところ、やはり病害虫の被害は少なく、作物の収量・品質ともによかった。そこで改めて自然堆肥だけの栽培が、5〜6年前から現場で再普及されることになったらしい。

誰でもできる自然堆肥の作り方・使い方

 自然堆肥のもうひとつの大きなメリットは、プロ農家から家庭菜園しか作っていないお母ちゃんまで、誰もが気軽にできることだ。難しい知識も、特別な道具もいらない。

●作り方

(1)木枯らしの吹くころ、雑木林や公園にいって落ち葉や枯れ草を集めてくる。本当は2年くらい経った古い落ち葉がいいが、特別気にせず新しい落ち葉と混ざった状態でいい。広葉樹の落ち葉がいいが、スギやマツなど針葉樹の落ち葉が1〜2割混ざると、後々いろんな微生物がバランスよく増えるのでさらにいい。

(2)集めてきた落ち葉や枯れ草を、木枠のなかに入れて野積みにするか、ビニール袋に入れて一冬おく。野積みの場合は雨や雪が入るし、ビニール袋に入れる場合は落ち葉に付いた水分が逃げないので、特別な水分調整は必要ない。1〜2度切り返してもいいが、やらなくてもいい。翌春になったらできあがり。

●使い方

▼浅根の野菜の場合

・畑の表面に土が少し見えるくらいの量の自然堆肥を全面散布。クワや管理機を使って10cmくらいの深さで土と混ぜ、野菜の種類に応じてウネを立てる。4〜5日おいてから野菜を播種する。

▼深根の野菜の場合

・ウネを立てる位置に、クワや管理機で幅約30cm、深さ20〜30cmの溝を掘り、自然堆肥をいっぱいに入れる。その上に掘り上げた土を積んでウネを立て、枯れ草やビニール等でマルチ。4〜5日おいてから野菜を定植または播種する。

自然堆肥の作り方 自然堆肥の使い方
自然堆肥の作り方 自然堆肥の使い方
連作3年目のナス
自然堆肥だけで育てた葛巻さんの連作3年目のナス。病気もなく順調そのもの

ナスが3年連作できる

 JAいわて花巻の直売所「母ちゃんハウス だあすこ」に野菜を出荷する葛巻ヒサさんも、5年前から自然堆肥だけの栽培を始めた一人。驚くべきことに葛巻さん、連作障害が出やすいはずのナスを、ウネを壊さず5年も連作している。どこまでできるか実験的に続けてきたそうだが、4年目までは順調そのもの。病気どころか虫も付かず、ピカピカのナスがとれ続けた。

 土を掘って見てみると、3年目までは落ち葉の形がわずかに残っていたが、4年目には完全に分解。まったく形が残っていなかった。そのためか、5年目の今年になってさすがにポツポツ立枯れが出た。

 葛巻さんの畑の観察を続けてきた自然農法普及員の及川実さんは、「土がしっかりできてしまえば、いくら連作しても大丈夫だと思います。ただまだ土づくりの途中なので、3年連作くらいが適当」と考えている。

 少なくとも3年は同じウネを使い続けられるので、作業はかなりラクになる。これも葛巻さんにとって大きな収穫だった。

微生物豊富な土に根がしっかり張って養分吸収

 なぜ自然堆肥だけで野菜がとれ続けるのか、及川さんは、「自然堆肥を使うことによって、畑の土は柔らかくなり、温かくなり、乾きにくくなります。すると作物の根が隅々まで伸びて養分を吸いやすくなると同時に、土の中の微生物が豊かになります。それらの微生物が養分となり、化学性も徐々に改善されてくるのではないでしょうか」と考えている。

 自然堆肥だけの野菜は、根を十分に伸ばしてから育つため、化成肥料で育てる野菜と比べて初期生育は遅くなる。とくに買い苗だと、活着しにくいようにも感じられる。それまで肥料分たっぷりで育てられた苗が、無肥料の畑に慣れるまで時間がかかるからだ。

 それでもしばらくすれば順調に育ち、「それまでの作り方とハッキリ違いがわかる」ほどいいものができるという。

自家採種と組み合わせれば

収量・品質はさらに上がる

 さらに自然堆肥だけで収量・品質を上げたい人に及川さんが勧めるのが、自家採種。もちろん買ってきたタネでも、自然堆肥だけで育てればいいものができる。しかし自然堆肥だけで育てた野菜から採ったタネから育てると、さらに病害虫にやられにくく、収量・品質も上がるという。「自家採種を続けていれば、そこの土にあったタネが採れるようになる」。そんな「マイ種子」と「自然堆肥」を組み合わせれば鬼に金棒。肥料も農薬もまったく必要なくなるという現象が、たしかにここにはある。

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