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2000リットルの重油タンクに燃焼効率がよくなる添加剤を入れる安藤照夫さん
2000リットルの重油タンクに燃焼効率がよくなる添加剤を入れる安藤照夫さん
暖房代減らし2008

茨城のピーマン大産地は強気だった

編集部

 重油代は今年に入り、ついに100円(1リットル)を超えた。地域によっては130円以上になったと聞く。5年前に比べて3倍以上――。野菜ではもっとも温度が必要なピーマンの大産地、茨城県波崎を歩いてみた。

収量と品質を上げることこそいちばんの低コスト

安藤照夫さん

中途半端にケチったらダメ

(赤松富仁撮影)
(赤松富仁撮影)
安藤照夫さん
安藤照夫さん。手にもっているのが新しく入れた保温性のよいカーテン「タフホット」(タフニック(株))。保温剤を添加した農ビで、重油代が1割くらい削減できるといわれている

「重油代が上がりましたけど、しっかり焚いて収量と品質を上げることが、いちばんの低コストになると思います」と冷静に語るのは安藤照夫さん(42歳)。地域平均12tのところ15tとる(9月定植で翌年7月までの長期どり)、地域の技術リーダーだ。71aのハウスで使った重油代は、3年前に約600万円だったところが昨年は約800万円。

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「重油代は売り上げの2割が限界でしょうね。いまがギリギリのところです」。今年は昨年よりさらに値上がりしているから実際は厳しい状況ではあるのだが、重油がたとえ130円(1リットル)になったとしても安藤さんは焚くという。

「だってピーマンは高温作物でしょう。へたにケチって温度を落とせば、絶対にとれません。何のために暖房するかといえば、ピーマンの生育に合わせるためですよね。油代の都合で焚くわけじゃない。昨シーズンの厳寒期(1月、2月)は、重油高の影響で市場への出荷量が減ったせいか、単価が跳ね上がりましたけど、僕は今シーズンもこの時期にしっかり出していきたいと思ってます」

焚きどころは糖度計診断でピーマンをみる

 安藤さんは地元の研究会の仲間と糖度計などを使って作物の状態をよく観察している(02年10月号参照)のだが、ピーマンが温度にどう反応するかは手にとるようにわかる。

サイドの肩の部分
サイドの肩の部分。内張りの「サニーコート」が縮んで隙間ができる。ここをビニールの切れ端でふさぐ。「サニーコート」(宇部日東化成(株))はジグザグしたハーモニカ構造の農業ポリエチレンフィルムで保温性が高い。透光率は低いのでサイドカーテンに向く

 ピーマンは限界最低温度が16度。それ以下の低温に遭遇すると、花が暴れてしまう。上を向いたり、横を向いたりで、奇形果になってしまう。よい実がなる花は、下を向いて咲き、雌しべが雄しべより若干長めになるそうだ。

 問題は花が咲く2〜3週間前の花芽分化のときに温度が足りないこと。だから、ねらいたい時期、逆算してそのときが焚きどころ。そして「花を見れば結果がわかる」と安藤さんはいう。花が咲く前日の蕾をぐちゃっと潰して糖度計で測って7度以上あれば、ちゃんと着果してA品になりやすい。でも低温にあたったものは5度、6度。花落ちが多くなり、収量も上がらない。B品も続出。さらに病気も出やすくなるので農薬代が余計にかかることになる。重油代をケチって中途半端に焚くと結局は経営的にマイナスになる。

 とはいっても「これまでみたいに重油を焚けば経営破綻しちゃうよ」という人だっている。そこはそれぞれの経営判断。もし焚けなければ、4〜12月にとる無加温の作型で収量を上げるという方法だってある。

 もちろん安藤さんもしっかり焚くとはいうものの、ムダには焚きたくない。安藤さんの重油代対策が以下の5つだ。

(1)意外に大きい落とし穴 ハウスの隙間を埋めてやる

「以前から気にはしていたんですが、ハウスに結構隙間があったんです。そこから暖めた空気が逃げたり、冷気が入り込むでしょう。去年はその隙間を埋めて密閉度を高めたんです。それが、すごい効果でした」

図1 カーテンと捨て張りの間の隙間をなくす
カーテンの捨て張り部分 図1
カーテンの捨て張り部分。ワイヤーの張り方で隙間ができる 以前はカーテンを引っ張るワイヤーを滑車に通していたが、滑車の足が高いのでカーテンと捨て張りの間に隙間ができていた。今は滑車をやめて小さな鉄パイプに替えたので隙間がなくなった

 安藤さんはサイドの内張りに保温性の高いフィルム(サニーコート)を使っているが、数年たつとだんだん縮んでくるという。3mごとに14枚張ってあるので、そのつなぎ合わせ部分に隙間ができていたのだ(右上の写真)。そこで、ビニールの切れ端をあてて、ホチキスで留めて隙間をふさいでやった。

 もうひとつ、上に張るカーテンにも隙間があった。カーテンでせっかく暖めた空気が連棟ハウスの支柱上の捨て張りとカーテンの間から逃げていたことに気づき、そこも改良(図1)。

 暖房機が回り始めてみると、その効果にビックリ。なにせ隙間を埋めた15aの温室より、隣の小さな九aのパイプハウスのほうが1.5倍も重油の減りが早かったからだ。

図2 循環扇の設置の仕方と風の回し方
図2
10aのハウスに8台設置。暖かい空気を真ん中に押してやり、サイドの空気を戻してやるという気流の流れを作る
循環扇「すくすくファン」((株)スイデン)
循環扇「すくすくファン」((株)スイデン)。安藤さんは夏の高温対策にも使う。ハウスに風をおこせば、炭酸ガスが動いて光合成も盛んになる
燃焼効率をよくする添加剤「ソルトロン」((株)ソルパワージャパン)
燃焼効率をよくする添加剤「ソルトロン」((株)ソルパワージャパン)。左が1本200cc。油液の中でも活発に働く約20種の酵素を配合したもので、酸素吸収が向上し、燃焼効率がよくなる

(2)循環扇で温度ムラをなくす

 安藤さんが5年前から入れているのが循環扇(図2)。厳寒期はハウス内のサイド際がどうしても冷えて、中央部に比べて2度以上も低かった。でも循環扇を回し始めてからは1〜0.5度の差に縮まった。

(3)添加剤で燃焼効率アップ

 また、昨年は燃焼効率をよくするという添加剤も使ってみた。もともと漁船に使われていたもので、2000リットルのタンクに200cc入れればいい(左ページの写真)。値段も200cc1本で約1200円と、さほど高くない。

 暖房シーズンが終わり、燃焼釜の掃除をするときに釜をあけたらビックリ。ススや硫黄のたまりが極端に少なかった。燃焼効率がいい証拠だ。以来、安藤さんは軽トラのガソリンにも少し混ぜているのだが、スタンドに行く期間が少し延びたそうだ。

図3 サイドに簡単に空気膜をつくる資材
図3
サイドの内張りにハンガーのように吊るすと10cmの空気膜がつくれる。商品名は「サイドキーパー」(誠和)

(4)サイドに簡単に空気膜をつくる

 もうひとつ、この冬から導入予定のものがある。サイドの内張りに10cm幅の空気膜を簡単につくれるハンガーのような資材(図3)。極めてシンプルな構造だが、これで燃料代が10%くらい浮くらしい。

(5)作物の生理に合わせた変温管理で

 ここまでは燃費効率を上げる工夫や資材だが、安藤さんがもっとも重要だと思っているのが作物に合わせた温度管理。四段サーモで変温管理をしているのだが、これがいちばんの重油代対策になるという。

 安藤さんのやり方は図4。夕方は午前中に光合成した同化産物の転流のために温度を高めに設定するが、夜中は2度下げて呼吸消耗を減らし、少し休ませてやる。一定温度で一晩焚く産地も多いが、変温管理だと夜中に2度下げる時間が長いので重油代減らし効果は大きい。条件にもよるのだが、5〜20%の重油代が削減できるというデータもある。

 そして朝は日の出一時間前に温度を上げる。日が昇ったらすぐに光合成しやすい環境にするためだ。野菜は葉裏の気孔から炭酸ガスを取り込むので温度で気孔を開かせてやるという考えだ。

 さらに、安藤さんは天気によっても温度設定を少し変えている。晴れた日は光合成が盛んになるので夜温を一度上げる。逆に曇りや雨の日は一度低くする。曇雨天日の高夜温は呼吸消耗を激しくし、逆に樹が疲れてしまうからだ。安藤さんは日射計と暖房機の温度タイマーが連動した装置(ネポン・四段サーモヤコン)を使っているが、樹のリズムに無理がなくなったせいか、成りがよくなったという(160ページ記事も参照)。

図4 安藤さんの変温管理のやり方
図4
※日中も暖房機は切らない。午前中は蒸し込んであまり換気をしない。28度くらいにすると樹がやわらかくなり、葉裏の気孔が開いて、光合成が促進される。午後は換気をして25度くらいにすると樹が硬くなり、病気になりづらい

厳寒期は昼も暖房機を回すこと

田中政道さん

「もったいない」はダメ

田中政道さん
田中政道さん

 次に話を聞いたのは、波崎でグングン成績を上げている若手のホープ、田中政道さん(32歳)。安藤さんと同じ研究会で学んでいる一人で、85aの大面積をこなしている。

 田中さんは、以前は思うようにとれなかった。その原因のひとつが厳寒期の温度管理。昼間は油代がもったいないので暖房機のスイッチを切っていたのだ。ところが真冬は日中でも曇れば外気温は10度以下になることもしばしばある。ハウス内でもピーマンに最低必要な16度より下がってしまう。日中より夜温のほうが高くなるという逆転現象が起きていたのだ。

「どう考えても自然の摂理に合っていないでしょう」。でも、これが意外にやらかしてしまう落とし穴でもあるらしい。田中さんは昼も暖房機を焚くようになってからは、厳寒期の高単価時にもしっかりとれるようになった。もっとも寒い2月の1カ月間の反収は、以前500kgだったところがいまは1t以上。

夕方は早めに温度を下げても大丈夫

原秀吉さん。
原秀吉さん。後ろに見えているのが密植で植えた苗。初期はしおれぎみでもっていく
飯田等さんが今年から導入した二重膜ハウス
飯田等さんが今年から導入した二重膜ハウス。屋根とサイドに外側から0.1mmのPO(ふくらー夢)を2枚張り、ブロワー(矢印)で空気を送って空気膜をつくる構造。燃料代が20%削減できると言われている。空気を入れると内圧もかかるので台風にも強くなる。10a当たりの設置費用は約50万円。写真は空気を入れたところ(詳しくは06年11月号参照)

 ただ、重油代がここまで上がると、さすがの田中さんもガンガン焚けなくなってきたという。そこで昨シーズンの冬は、高単価の2月までは暖房をしっかり焚き、3月になったら夜温を少し下げ、夕方も早めに温度を下げた。

 普段は夜の九時まで20度設定で、その後18度設定に下げるのを、1時間早めて夜の8時から下げる。夜の10時頃まで温度を落とさない人が結構いるなか、8時でもぜんぜん問題なかったと田中さん。1〜2時間違えば重油代もかなり変わってくる。

重油を即金で払えば安くなる

原 秀吉さん

1月植えを1カ月遅らせた

「必要なときには焚くけど、重油代対策にちょっと作型をずらした」というのは原秀吉さん(55歳)。原さんは今年、1月上旬植えで七月末までとる作型を、1カ月遅らせて2月上旬植えにした。

「春に向かっていくから地温が違うでしょう。重油タンクの補給が月四回かかっていたのに、これだとたった2回だよ」。遅く植えた分、収穫も1カ月近く遅れたわけだが、この春はことのほか値段もよかった。

密植で年内収量を上げる

 また、原さんはこの秋に植えた長期どり(9月定植で翌年7月まで収穫)の作型で、初期収量を上げることをねらっている。年内の目標収量は3tだ。厳寒期までに現金が得られれば、重油代も即金で払える。即金なら1リットル1円値引きしてくれるのだ。「たかが1円だけど、一回の給油だけで何千リットルも使うから大きいんだよ」

 原さんはこれまで50cmだった株間を30cmに縮め、10a当たりの栽植本数を1200本から2000本にした。そしてそれまでの四本仕立てから2本仕立てにした。昨年、試験してみたら、結構収量がよかったのだ。

 原さんはさらに、苗のときから水を控え、定植してからも極力水をやらない。生長点がしおれなければいいという。「朝ハウスに入ると、おもしろいことに葉水が上がるんですよ。根が一生懸命下に伸びて、水分を吸っているということでしょう」。こうして花が咲くまでは乾かしぎみでもっていくと花芽が早く来るという。花が咲いたら今度は少量多かん水で、かん水量を増やしていく。このやり方でどこまでいけるかが楽しみでもある。

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