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これからの農家は「油田」もつくって
燃料自給率100%

宮城県角田市・(有)角田健土農場

角田健土農場のナタネ畑。9月中旬に播種した。「エコショップかくだ」のナタネプロジェクトでは、角田健土農場4軒で、16haの作付け
角田健土農場のナタネ畑。9月中旬に播種した。「エコショップかくだ」のナタネプロジェクトでは、角田健土農場4軒で、16haの作付け

 角田健土農場は、4軒の専業農家が平成7年に立ち上げた有限会社。受託も含め、水田経営面積は100ha近い。

 社長の小野健蔵さんは、8年ほど前からある構想を練り続けてきた。それは農場の運営に必要な燃料を完全に自給するというもの。

 最近、炭酸ガス排出削減の観点から注目されているBDF(バイオ・ディーゼル・フューエル)とは、食用油をディーゼルエンジンでも使えるようにした燃料である。

 これまでも角田健土農場は地元NPO「エコショップかくだ」に参加し、家庭から回収した廃食用油を名取市のBDF製造業者に納入、替わりに1リットル100円でBDFを売ってもらいトラクタに使ってきた。

 しかし小野社長はそれでは飽き足らず、自分たちで栽培したナタネから油をとり、それをBDFとして機械の燃料に使えないかと、3年前から計画を進めてきた。

BDFは農家がやるから面白い

 現在全国でひろまりつつあるBDFプロジェクト(菜の花プロジェクト)は廃油の回収率の悪さがネックになっているようであるが、農家と組めばその心配はないと小野社長はいう。農家は畑を持っているから、ナタネを播いただけ油はとれる。廃油回収が不十分でも、BDFの原料には困らない。軽油が高騰する中、農家にとってもBDFのメリットは大きい。BDFプロジェクトは農家と組むからこそ面白い。

本物のナタネ油を食べて欲しい

社長の小野健蔵さん
社長の小野健蔵さん

 小野社長がナタネ栽培に踏み出した理由は3つある。

 一つは、本物のナタネ油を消費者に食べて欲しいから。大手スーパーや商社は外国からどんどん安くて悪いものを輸入して、まともに太刀打ちできないような底値で毒入り野菜や毒入り米を消費者に売っている。

「せめてね、自分たちのお米を食べてくれる人や地元の人には、本物のナタネ油を食べさせてあげたいんです」

3割転作でナタネを播けば年間に使う燃料は確保できる

 2つ目は、燃料の自給だ。化石燃料はいつかなくなるわけだが、このまま燃料の高騰を指をくわえて見ているか。軽油が200円/リットルになる時代が必ず来ると小野社長はいう。もしそうなったらいよいよ農業は続けられない。

 稲作一haの農家なら、トラクタとコンバインに使う年間の油は約200リットル。ナタネの収量は200〜300kg/10aだから、減反が30%なら最低でも600kgのナタネが収穫でき、そこから200リットルの油が搾れる。これをBDFにすると5%ほど目減りするが、ほぼ200リットルの油が確保できるので、機械を動かす量がピッタリ自給できる。

播きっぱなしで収穫できる

菜の花が満開になった4月のナタネ。小野社長いわく「水田というよりも油田」
菜の花が満開になった4月のナタネ。小野社長いわく「水田というよりも油田」

 3つ目は、ナタネは栽培に手間がかからないということ。

 9月中旬頃、湿害がないような畑ならどこでも播種できる。雑草と一緒に生えてきても霜が降りれば雑草だけ枯れる。生き残ったナタネの春の生育はいいので除草剤いらず。肥料もほとんどいらない。播きっぱなしでも次の年の7月にはちゃんと収穫できる。

 イノシシが見向きもしないので、山間部の耕作放棄地にもピッタリだ。

馬力は同じ 不具合もない

 現在BDFを使うのは、専用のトラクタ一台だけだが、今後はBDFの確保ができれば使える機械も増やしていくつもりだ。

「軽油と比べて、馬力はまったく変わりません。軽油のようなニオイも黒煙もないのでとにかく快適です」

 BDFはゴムや樹脂など一部の部品を劣化させるそうだが、今のところ不具合は感じていない。部品はこまめに点検、交換。BDFはなるべく早く使うようにしている。

搾油もBDF化も自分たちで

 地域の担い手育成にナタネを普及するという目標を掲げ、市に掛け合い続けて2年間、ようやく7月に搾油機が導入できた。焙煎機、搾油機、精油機など合わせて680万円。精油業者に頼んでいたときは30%きっかりしか搾れないと決まっていたが、自分たちで搾ったら、35〜40%は搾れた。

 油を搾ったあとのナタネ粕は、刈り草や牛糞と一緒に良質の堆肥になって田畑に還元される。

 小野社長、いずれはBDF化の設備も揃えたいと考えている。ナタネ油を直売所で販売し、廃油を回収してBDFにすれば、完全に油が自給できて、地域でエネルギーが循環する。

「ここには、お米、野菜、味噌、梅干し、それから天水がある。ないものといったら油くらいなもん。油が自給できれば、、生きていくためのものは何でも作れます」

 よそ者に頼らないでも暮らしていけるむらの力を取り戻す。小野社長の夢を載せ、天ぷら油の香りを漂わせたトラクタが今日も走る。

菜の花が満開になった4月のナタネ。小野社長いわく「水田というよりも油田」

(1)焙煎

85度まで温度を上げるとナタネ内部の油分が軟らかくなって抽出しやすくなる(簡易煎釜S型、処理能力30- 50kg/h、170万円)

上部ホッパーから焙煎したナタネを投入する

(2)搾油

上部ホッパーから焙煎したナタネを投入する(搾油機S52型、3馬力、処理能力30-50kg/h、200万円)

搾られた油をポンプで送り込みろ過する。精製された油は蛇口から出てくる

(3)精油

搾られた油をポンプで送り込みろ過する。精製された油は蛇口から出てくる(精油機HA型、0.5馬力、処理能力40リットル/h、230万円)。機械はすべてハンダー油機(株)製

BDF使用の際の注意点

 BDFの長期利用により起きる不具合と、安全に使用するためのポイントについて、BDF利用の現場を調査されている(社)日本農業機械化協会の唐橋需先生に伺った。

▼BDFは腐食性がありメッキなどが剥がれる可能性がある。液だれしたらそのままにせず、すぐに拭き取ること。

▼寒くなると流動性が低くなり、エンジンがかかりにくくなる。BDF濃度を下げて使うか、軽油に切りかえる。

▼冬場に使わないからといってBDFを入れっぱなしにしておかない。秋口に使い終わったら、BDFを抜いて軽油を満タンにしておくとよい。

▼品質にもよるが、BDFは劣化や酸化が早いので、なるべく早く使うこと。1カ月以内なら問題ないが、品質のよいものなら半年でも使用可能である。保管は空気の接触をなるべく避け、直射日光の当たらないところで保管する。

▼部品の点検と交換の目安

(1)燃料キャップ、燃料こし器…1年

(2)燃料配管…6カ月
(交換内容)ゴム製燃料配管、配管継ぎ手部のOリングやゴム製パッキン

(3)燃料フィルター…BDFの使用開始後は50時間ごとに2回、100時間後からは100時間ごとに交換

(4)エンジンオイル…取扱説明書記載の交換サイクルの2分の1

(5)エンジンオイルエレメント…取扱説明書記載の交換サイクルの2分の1

(編集部まとめ)

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