●巻頭特集 品種選び大特集
スーパーの入り口にある直売コーナー。この他3つの直売所でほぼ毎日売る 筆者(赤松富仁撮影) 直売所名人になる! 品種編
品種力を駆使
定番野菜でも人が出さない時期にずらし売り青木恒男
狭い商圏、同じ時期に同じものが集中する
最近「地産地消」をキーワードにした売り場が各地で繁盛するようになってきましたが、狭い地域の中で成り立つ仕組みであるため、どうしても各生産者が同じ時期に同じ品目を集中して作ってしまう傾向があります。
夏にはナスやカボチャ、冬にはダイコンやハクサイばかりが山積みになっていたり、反面、端境期の春秋にはお客さんがせっかく買い物に来ても商品がないという情景も時々目にします。
地産地消という言葉には、地のものをその地で消費する、という意味とともに、消費者の声をその地の生産者が商品に反映させる、という双方向の情報交換の意味も持ち合わせています。せっかく新しい流通の仕組みができたのですから、農家としては、さらに豊富な種類の新鮮野菜が年中豊富に並ぶ売り場を自分たちの手で充実させていきたいものです。
品種特性をつかめば人が真似できない時期に出せる
私が直売所で売る目的で作る作物のコンセプトは3点あります。まず、ダイコン、ハクサイ、キャベツなど「定番野菜」であること。しかし「他の農家が出せない時期の販売」をねらうこと。そして「お客さんのニーズに合わせた品種」を選ぶことです。
私はハウスに暖房を入れて冬に夏野菜を作る、というような力任せの方法は採りません。早晩性や晩抽性、短長日性や休眠性など、特定の品種が持つ特性を知ったうえで、人が真似できない時期に作期をずらしたり、春野菜を秋に収穫したり、といった作りこなしをするのです。
私の住む地域の気候に合わせた作期のずらし方の例をいくつか紹介します。
トウモロコシ――無加温ハウスで2カ月早く出す
(田中康弘撮影) ▼地場産朝どりコーンは人気だが
トウモロコシは収穫後の糖度が時間単位で低下する作物なので、遠方から鮮度の高いものは入ってきません。地場産の朝どりコーンなら非常によく売れます。
ただ、一般的な露地の直播栽培では出荷時期が梅雨明け後の一瞬で終わってしまううえ、終始害虫に悩まされます。
▼早出しは低温に強い品種を
三重県の場合、無加温ハウスを利用すれば5〜6月までの早出し栽培が可能で、この時期ならばアブラムシとアワノメイガの初期防除だけで高品質のものが作れます。ただ、播種から生育初期が厳寒期に当たるため、ちょっとした工夫が必要になります。
この時期の品種選択には早晩性よりも低温での発芽性と耐性を重視します。2月播きなら味来早房(パイオニア)かゴールドラッシュ(サカタ)。3月播きならおひさまコーン7(タキイ)が適当でしょう。
▼苗が半分隠れるくらいの穴底植え
根巻き防止トレイに播種し、ハウス内の小トンネルで育苗しますが、発芽までの1週間は小型のストーブで保温するのが安全です。定植前のウネには温かい井戸水を十分にかん水しておき、苗が半分隠れるくらいの深穴の底に植えて低温を避けます。
3月定植ならば、新品種の味来7000(パイオニア)の密植栽培(従来の2倍)も面白いでしょう。葉が細くて揃いが抜群にいい品種です。
角棒で穴をあけ、苗をストンと落とす。保温効果抜群 密植可能な新品種「味来7000」の早出し栽培。4条植えの密植で通常の2倍とる 早朝収穫し、朝のうちに持っていけば、とてもよく売れる ![]()
タマネギ――年内に新タマネギを出す
11月にとれた新タマネギ 5月に掘り上げた種球。これを8月下旬に植える ▼極早生品種を春播きして種球をつくる
タマネギは一般的には秋定植して春収穫しますが、吊り玉にして保存したものは秋までしかもちません。しかし、春作った種球を夏に植え付けると、その年の年内から冬にかけて新タマネギとして収穫できます。
品種は早生系のシャルム(タキイ)を使います。3月、ハウス内に苗場を作り、条播きかバラ播きで3〜4cmの間隔にタネを落として薄く覆土。さらに地温を上げるために、くん炭を散布します。播種した上にトンネルを設置して発芽させますが、秋の播種期に比べて地温が低いので保温に注意が必要です。チッソが効いていると葉は茂っても球が肥大しないので普通の畑であれば施肥はしません。
▼10円玉サイズを選んで8月後半植え付け
5月には自然に葉が枯れて球だけが休眠に入りますので、掘り出して大きさを選別してから風通しのよい日陰に保管します。種球としては1円玉から10円玉サイズが最適で、500円玉以上の大きいものは分球するのでタネとしては使わず、ミニタマネギとして食用にします。
暑さがピークを過ぎて地温が下がり始めれば植え付けをしますが、適期はその土地のワケギの植え付け時期を目安にするとよいでしょう。以降の管理は苗を定植したタマネギと同じです。
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スナップエンドウ――年内から4カ月間とれる
ホルンスナック。11月中旬にわんさか実がなる ▼わい性品種を9月に植える
一般的にスナップエンドウは11月上旬に播種して冬越しさせ、翌年の四〜五月の短い期間に収穫を終えます。しかし、ホルンスナック(サカタ)は春に播種しても5月には収穫できるわい性品種です。本来の草丈は70cmほどで、エンドウネットなど誘引が必要ないのでプランターや家庭菜園用によく使われますが、この品種を9月播きすると性質はガラリと変わります。
▼4倍長く収穫できる
秋、気温が十分に高い期間に旺盛に生育させておくと草丈50cmで主枝に花が付き、11月下旬から翌年3月まで長期間収穫が続けられるのです。一般的な栽培ではせいぜい1カ月間です。草丈も2m近くなりますから、収穫しやすい高さで主枝はピンチして、株元から伸びる子ヅルと孫ヅルに着果させるようにします。
▼育苗は涼しく、若苗定植を
この作型で注意する点は播種期の高温です。残暑の厳しい年は播種前の圃場に井戸水など冷水をたっぷりかん水し、場合によっては涼しい場所で芽出しした極若苗を定植するようにします。
また、多くの分枝を利用して長期間収穫するので株間は30cmと余裕をもたせるようにし、株を疲れさせないためにこまめなかん水と追肥を心がけます。
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ハクサイ――ミニと珍しい形で勝負
お黄にいり(ミニハクサイ) ▼極早生のミニで隙間をねらう
1〜3月までは慣行栽培のハクサイが売り場を占領する季節です。安売り合戦はイヤなので、私はこの時期の作型は避けます。
また最近、ハクサイやキャベツなど重量野菜は小さいサイズやカット売りが好まれるようになり、種苗会社もニーズに応えて各種ミニ野菜の種子を揃えています。このような極早生のミニ品種を使って圃場の回転数と収量を上げながら作期をずらす方法もあります。
密植すると600gでとれるお黄にいり(タキイ)を八月初旬に播けば10月初旬から収穫が可能ですし、極早生で晩抽という特性を利用して、他の農家がまず作れない春出しも可能です。
さらに、高温結球性がよいサラダ(タキイ)を使って真夏収穫のハクサイも可能です。
▼他の人と重なるときはタケノコハクサイで
寒くなって他の生産者の出荷が始まる頃からは、少し毛色の違ったタケノコハクサイチヒリ70(タキイ)を収穫します。この品種は歯切れのよい食感で鍋や中華料理に最適です。
チヒリ70(タケノコハクサイ)。他の人がハクサイを出し始めた頃に出す 中央手前がミニハクサイ(お黄にいり)。 株間20cmの密植栽培。3月中旬、トウモロコシと同居 ![]()
ミニダイコン――収穫時期によって大変身
たんしん(ミニダイコン)。播種して40日目で長さは20cmほど。間引きながら生食用として出荷 4カ月すると、こんな形に! 輪切りにすると普通サイズのダイコンと同じ太さになるので、おでんなどの煮物用として出荷 ▼初期は生食用、植えっぱなしにすれば煮物用
たんしん(ナント)は、9月の播種から40日で太るミニダイコンですが、その後の生長は緩慢で、翌年の春までスが入らずトウ立ちも遅い品種です。
葉が小さく全体がコンパクトなので、15×15cmのマス目に播種して密植栽培します。左下の写真の大きさになったものから順次間引く要領で生食用として売り、冬の間は扇形に太ったものを、おでんなどの煮物用として出荷します。
▼夏どりすれば辛味ダイコンに
また、この品種は高温期に作ると辛味が増すので、春播き夏どりの辛味ダイコンとして作ることもできます。
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ブロッコリー――重なる時期は側枝を出荷
頂花蕾の収穫時に尿素を追肥しておくと、側枝がたくさん収穫できる ブロッコリーの出荷時期のねらいは、他の生産者が出荷する隙間です。慣行栽培の場合、早生と晩生品種を一度に播種・定植し、収穫ピークをずらすようにしますが、私は早生品種のハイツSP、フォレスト(ともにタキイ)を晩夏と冬2回定植し、同じウネで2回収穫します。一期目のねらいを年末年始の需要期に、2回目の山を春の端境期に決め、安値期間は「側枝」出荷で調整します。ふつう側枝は収穫しませんが、頂花蕾収穫後、追肥をすると一回り小さいサイズの側枝が結構とれます。最近ではこれが「調理がラクで手ごろな価格」ということもあって人気です(詳しくは08年5月号も参照ください)。
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(三重県松阪市)
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『地方野菜大全』タキイ種苗 全国各地に残る形・味が個性的な地方野菜600余種を、由来、来歴や変遷、生理的・形態的特徴、栽培法、食べ方など詳しい解説とカラー写真で都道府県別に紹介。便利な野菜種類別目次、種苗入手先、地方野菜名索引付。 [本を詳しく見る]
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