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キーワードは“満月”

農薬代を安くする技

月のリズム防除

月のリズム防除とは

 植物も害虫も、月の満ち欠けのリズム(引力の変化)に影響を受けて生きている。これを利用して、防除効果の高いタイミングを狙う方法。キーワードは“満月”。


「満月の3日後が防除適期」はどうやら確実

タネ屋が広げる月のリズム農法

■茨城県行方氏・タネのハシモト

編集部

半数以上の農家が実感

タネのハシモトの店舗入り口
タネのハシモトの店舗入り口。遠目からでも「月のリズム」がひときわ目立つ

「月のリズム 虫の消毒は満月を中心に!!」こんな標語を店の壁にドデカく掲げたタネ屋さんがある。茨城県行方市の「タネのハシモト」だ。代表の橋本茂さんは、月のリズムを取り入れた農業をお客さんにどんどん勧めている。やってみた農家からの評判もなかなかいい。

「親父の代から月と農業との関係には注目してきました。月のリズムを農作業に生かしている農家から話を聞いて、これはと思ったのがきっかけ。実際に発芽試験をしてみたら、満月に播種したタネはすっごい発芽率がよかったんですよ。月の影響は間違いないと確信しましたね」と橋本さん。

 月と農業の関係は、これまで「現代農業」でも多くの事例を紹介してきた(2005年3月号、2007年5月号、2008年5月号)。さまざまな法則のなかでも今、橋本さんが農家に積極的に話しているのが防除に関わる内容。“殺虫のリズム”と名づけている。「これがいちばんわかりやすいんですよ。農薬は今いちばん農家が気にしていることですし。半数以上の農家から防除がうまくいったと言ってもらってます。なかには、農薬の回数が半分ですんだ人もいるくらい」

 橋本さんが勧める“殺虫のリズム”とは、害虫の防除を満月の前後に行なうこと。より正確には、満月の3〜4日後がベストという。

「虫の生態として、満月の3日前に交尾、満月の日に産卵、そして満月の3日後に孵化する傾向があると言われています。卵は殻が固くて農薬が効きにくいので、もっとも弱い孵化直後の一齢幼虫を狙うのが防除は一番効果的です。つまり、満月の3〜4日後が殺虫剤の適期。そういうことを農家に話して実践してもらっています」

アザミウマの防除回数が減らせそう

月/害虫のリズムと防除のタイミング
月のリズム、害虫のリズムと防除のタイミング

 行方市の野菜農家の谷田川一郎さんは、「殺虫のリズム」を取り入れて6年くらいになる。谷田川さんは、近隣の農家仲間二十数名で「エコーたまつくり」という農事組合法人をつくり、多品目の野菜を減農薬で生産して生協に販売している。毎年反当たり1tの堆肥を入れ、グループで統一した銘柄の有機質肥料を使う。化学農薬の回数は組合で厳しく制限されている。

「基本的に、病害虫が出ねえうちから農薬かけちゃだめなんだよな。ギリギリまで待って、どうしても虫が出たときだけ使っていい。おまけに浸透性のある農薬、残効の長い農薬もダメ。だから、防除が遅れて抑えきれないとか、いろいろ失敗も多いよ」と谷田川さん。でも、橋本さんから月のリズムの話を聞いてから、満月の前後はとくに気をつけて畑を観察するようになった。やはり満月前に害虫の数が増えると感じることが多い。

 谷田川さんが“殺虫のリズム”を積極的に利用しているのは、たとえば定期防除が必要なアザミウマなどの害虫対策のとき。春定植〜秋収穫の早生のネギ栽培では、ひどいときはネギが真っ白になるまでアザミウマが発生。そうでなくても夏じゅう虫が途切れることがない。そこで谷田川さんは、満月の前後3日間に防除するようにしている。満月の3〜4日目がいいとは聞いているが、天気が悪かったり、作業の都合でどうしても防除できないときもあるから、ある程度幅をもたせている。効果のほどは?

「けっこういいよ。全滅はできないけど、一回でビシッと抑えられる。次の満月のときに防除しなくていいときもあるくらいだ」。谷田川さんはもともと農薬の回数が少ないが、月のリズムのおかげでさらに農薬代が減らせる可能性が見えてきた。

 ダイコンなどのヨトウムシや、サツマイモのハスモンヨトウ防除も満月の前後に行なう。ただ、ハスモンヨトウは大発生する年とそうでもない年がある。「何年か前、秋口の満月の3日前に雨が降ったんだよ。その年はハスモンヨトウが少なかったんだよなー。きっと交尾ができなかったんでねえか」。ハスモンヨトウの発生は満月前の天気に左右されていそうだ。

橋本茂さんと谷田川一郎さん 谷田川さんのネギ畑
橋本茂さん(左)と谷田川一郎さん 谷田川さんのネギ畑(春収穫の圃場)

カレンダーに黄色シールを貼って満月をお知らせ

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 月のリズムがいいと聞いていても、まだ実感のない農家はつい満月の日を逃してしまう。だから橋本さんは、農家の事務所や土間のカレンダーの満月の日に、黄色い丸いシールを貼ってまわったときもあった。これなら、ひと目で満月の日がわかる。思わず、「じゃあ試しに満月の後に防除やってみっか」となって、実践する農家が増えていった。

「月と農業にはまだまだ奥深い世界があります。ぼくは『月のリズム農法』というのを農家と一緒にやっていきたいと思っています。自然の摂理を取り入れた、農薬に頼らない、消費者によろこばれる作物づくりです。“殺虫のリズム”は第一段階だと思っています。今後は農薬が一回でばっちり効いた、回数減らせたってところからさらに進んで、もう一歩農薬を減らす提案をしたいですね。たとえば、満月前に忌避効果の期待できる資材を使って飛来を防止したり、満月後の一齢幼虫なら、天然物由来の資材で対処できないかな、とか。これからまだまだ試したいことがあります」

 農薬代を安くする技から、農薬を使わない技へ。月のリズムはまだまだ大きな可能性を持っている。


満月防除? 大潮防除?

 じつは、満月だけでなく新月の前も害虫の動きは活発になる。「現代農業」の過去の記事では、満月・新月を合わせた“大潮”の時期に防除をして効果をあげている農家も紹介した。

 ただ、新月のときの害虫の動きは満月に比べるとややわかりにくいという人もいる。新月に動いているのはオスだけで、メスは満月前しか交尾の体勢にならないのではないか、と仮説を立てる人も。

 昔養蚕をしていたあるダイコン農家は、月のリズム防除がより効果的なのは、やはり満月の後ではないか、という。というのも、カイコも孵化から約一カ月弱で蛹になるというサイクルを持っている。そこから見ても、28〜29日単位で害虫のサイクルをとらえることが自然だと思えてくるというのだ。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 月と農業 中南米農民の有機農法と暮らしの技術

果樹の接ぎ木は満月に向かうときに、根菜の播種は新月に向かう時期に…。月に導かれ豊かに生きる中南米農民の伝統的農法と暮らし方の知恵を素朴な絵で紹介。ラテンアメリカのおもしろ農業! 有機農業の知恵満載 [本を詳しく見る]

 現代農業 2005年4月号

果樹の接ぎ木は満月に向かうときに、根菜の播種は新月に向かう時期に…。月に導かれ豊かに生きる中南米農民の伝統的農法と暮らし方の知恵を素朴な絵で紹介。ラテンアメリカのおもしろ農業! 有機農業の知恵満載 [本を詳しく見る]

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