左が青梅のジャム、右が完熟梅のジャム 勘より正確
失敗しない梅ジャムのつくり方
小清水正美
梅にはペクチン(砂糖や酸を加えるとゼリー状になる多糖類)が豊富に含まれているので、ジャムにするにはぴったりの素材。ただ、梅の品種や収穫時期によってペクチンの量はまちまち。ジャムの仕上がりが固くなったり、やわらかすぎたりして、結構難しい。
そこで、神奈川県の専門技術員をしながら長年ジャムづくりの現場に接してきた小清水正美さんにコツを聞いてみた。「ペクチン、糖、酸のバランスが整ってはじめてジャムになる」という梅ジャムづくりの極意、誰でも上手にできる方法を紹介いただく。(編集部)
品種の違いを楽しむジャム
筆者 「農家だからこそできる」「小回りがきくからこそできる」ジャムづくりの出発点は原料となる農産物の特性を知ることです。
梅ジャムにはゼリー状に固まったジャムやネットリと練り上げたペースト状のジャムなどいろいろなタイプがあります。ここでは透明感があり、フルフルと揺れるゼリー状に固まっているジャムについて説明します。
まずジャムに加工できる梅の品種は梅干しと違って、すべての品種が使えます。原料の特性を活かすことを前提にするので、品種によって色、香り、味が違えば、ジャムの品質も当然、異なります。違う品種を使って同じ品質のジャムをつくるより、品種の違いを楽しみながらのジャムつくりとなります。
同じ品種でも完熟、未熟をどう処理するかははじめに考えておかねばなりません。樹になっている状態でプックリと膨らみ、黄色に色づいてくれば完熟とわかりますが、梅によっては樹になっている状態では黄色に着色しにくい品種があります。これも黄色にはなっていなくても完熟と考えてよいと思います。ジャムには完熟のほうが適しています。
いっぽう、未熟、いわゆる青梅は、収穫してから1〜2日以内に黄色くなるものをジャム原料と考えています。
品種の数×熟度の段階=ジャムの品質数
品種と熟度別にジャムをつくり出せば「品種の数×熟度の段階=ジャムの品質数」となり、膨大な種類となります。しかし実際は品種によるジャム品質の差異が大きくないものもあります。あるいは地域のブランドとなっている梅を中心に考えるなら、品種数はそれほど多くありません。品種をどのように見るかはジャムづくりの戦略ともいえるでしょう。
また、黄梅と青梅についてもそれぞれ別々に製品化するのか、いずれか一方とするのか、いろいろな熟度のものを混ぜて標準的な製品とするのか、いくつかの選択肢があります。
では、品種や熟度によってジャムの品質にどのような差異が出るのでしょう。たとえば、果肉の色がだいだい色ならだいだい色、黄色なら黄色のジャムになり、濃緑色ならくすんだ緑色になります。香りも原料の香りに若干の加熱臭が加わった香りになります。酸は酸っぱさに関わることもありますが、ゼリー化の強さにも影響します。
たとえば小梅品種の「甲州最小」は、大きな梅より酸が少ないので、所定のつくり方をすると甘味が勝った味に仕上がり、それと同時にゼリー化が弱くなります。また、甲州最小の青梅は黄梅に比べ芳香成分が少ないので芳醇感は少なくなります。そしてペクチンが強すぎるので、ペクチンを薄める必要があります。
梅を沸騰水で加熱、酸がちょうどよくなる、裏ごししやすくなる
以上のことを踏まえて、黄梅を原料にした場合の加工の工程に準じて説明しましょう。
黄梅は生果でも冷凍したものでも使えます。ここで注意するのはヘタや花ガラの存在です。茶色のヘタはピンセットでつまみとります。
そして原料の5〜10倍量の水に梅を入れて加熱します。沸騰水で加熱することで果肉がやわらかくなり、裏ごしができるようになります。梅に熱が入ると浮き上がってくるので、全部の梅が浮き上がったら揚げザルですくいとり、裏ごし用の網の上に置き、裏ごし。これがジャムの原料となる梅ピューレです。大切なのは、このピューレの品質がどのようになっているかを確認することです。
まずは少量試しにつくってみる
倒立放冷しているところ。ジャムができたらビンに詰め、軽くフタをして、蒸気で15〜20分殺菌。フタをきつく閉め、30分ほど倒立放冷(ビンの中にいる耐熱性の菌を殺すため)。ジャムを冷やしたあとは、2〜3日様子を見る。ほどよくゼリー化すればOK。固すぎたり、やわらかすぎたりしたら、梅ピューレと砂糖の配合を変える ピューレの品質を確認する場合、科学的な方法だと、糖度、酸は測れても、ペクチンの質と量を測ることは簡単ではありません。ペクチンテストを目的として試しにジャムをつくってみるのが一番適切な方法です。
まず150gの梅ピューレを正確に量り、同量の砂糖を量ります。糖度を55%に設定し、梅ピューレに砂糖を加えて糖度55%になるように炊きあげた場合のできあがりの重量を計算します。これは砂糖の重量(150g)を糖度55%(0.55)で割れば求められます。その結果、272gになるので、この重量を目標にペクチンテストをはじめます。
もっともこの計算をしなくても、糖度計を使えば、仕上がりの糖度55%を測ることはできますが、梅の持っている糖・酸が足し込まれる影響と、熱いジャムなので正確に測るのはかなり厳しい。その点、重量を量る方法は簡便で正確です。2kgのはかりがあれば、鍋ごと重量を測り、問題なくできます。
糖度計使用より簡単・正確、ペクチンテストのやり方
▼泡を抜くために、梅ピューレに水を加えて沸騰
272gに炊きあげることを目標にペクチンテストをはじめますが、ステンレス鍋に梅ピューレ150gと砂糖150gを入れて加熱したら、数分で目標の重量になります。しかし、この短時間の加熱では、ペクチンやパルプ(繊維質)が抱き込んでいる空気を除いたり、加熱によってペクチンの凝固力が低下する影響はみることができません。そこで、梅ピューレに200〜300mlの水を加えて、10〜20分くらい加熱し、梅ピューレを沸騰させて抱き込んでいる空気の泡を除きます。この処理をすると梅ピューレに加えた水分はほとんど蒸発してしまいます。
▼砂糖を加えて、目標重量まで炊きあげる
ここではじめて砂糖を加えて、目標の重量272gに炊きあげ、ビンに詰め、脱気加熱、倒立放冷など通常のジャム加工工程と同様に仕上げます。
調整したその日はゼリー化しなくても、翌日になってゼリー化すればよいので2〜3日はゼリー化の状況を確認します。
▼ユルユルだったら、梅ピューレを増量
ゼリー化が認められないなら、ペクチンを濃くしなければなりません。梅ピューレの量を150〜175g、あるいは200gまで増量して、再度ペクチンテストをすれば適切な配合とできあがり量が計算できます。
▼固すぎたら、梅ピューレを減量
ゼリー化している場合でもゼリーが固く、空気の泡をたくさん抱き込んでいるならペクチンが濃いので、梅ピューレを125gあるいは100gに減量して、再度ペクチンテストをすれば適切な配合とできあがり量が計算できます。
完熟なら砂糖は同量、青梅ならピューレに水を足す
このペクチンテストで砂糖に対する梅ピューレの割合が決まるので、次も同じような条件で加熱し、砂糖を加えて炊きあげ、重量で炊きあげの終点を決めれば、同じようなジャムに仕上がります。
重量での確認ができないときは、糖度計で終点を決めるしかありません。ペクチンテストで一番よいゼリー化をしたジャムの糖度を測定し、この糖度に合わせて仕上げてください。このときの糖度は梅ピューレが持っている糖と酸の値が足されるので55%以上を示します。
完熟黄梅では梅ピューレに対し砂糖はほぼ同量になりますが、青梅や青梅を追熟させた黄梅では、ペクチンが強いので梅ピューレを水で希釈しなければよいゼリー化のジャムはつくれません。また、調整した梅ピューレはごく短期間の保存なら冷蔵で結構ですが、長期保存だとペクチンが変質するので、必ず冷凍してください。
(食と農の応援団)
ペクチンテスト(ジャムづくり)の手順
ヘタをとった梅を5〜10倍の水に入れて、梅が全部浮かびあがるまで沸騰 網の上で裏ごし。こされたものが梅ピューレ 150gの梅ピューレを鍋に入れる(はかりの数字は鍋の重量が引かれている) 砂糖を入れる前に、200〜300Nの水を入れ、10〜20分加熱
※梅ピューレが抱き込んでいる空気の泡を抜くため
※加えた水分はほとんど蒸発砂糖150gを投入。272gになるまでかき混ぜながら、加熱 272gの状態。ゆるそうに見えるが、梅はペクチンが多いので火を止めてからもゼリー化してくる
〈仕上がり重量の計算式〉
砂糖の重量÷糖度=できあがり量
完熟梅の場合、砂糖の量はほぼ同量150g、糖度は55%に設定
150(g)÷0.55=272(g)
梅ピューレと砂糖合わせて300gが272gになるまで加熱すればよい
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