月刊 現代農業
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●巻頭特集 緊急企画 飼うぞ 殖やすぞ ミツバチ

西洋ミツバチと大越望さん
自分で飼っている西洋ミツバチと大越望さん(下の写真以外、すべて倉持正実撮影)

じつは養蜂歴30 年のイチゴ農家

大越さんにきく交配バチ飼いならし術

編集部

 大越望さんといえば、「石灰防除」「ランナー挿し」などコストをかけない仰天小力技術を次々編み出してきたイチゴ名人。そんな大越さんは、じつはイチゴと同じくらいミツバチにも詳しい。交配用の西洋ミツバチを30年以上も自分で飼っているのだ。

 「ミツバチがいないから、これからは自分で飼うしかない」という農家も出てきている今、ミツバチを心底大事に思っている大越さんに、冬場のハウスで少しでも長生きさせる方法や、自分で飼うときに難しいと言われる夏越しの方法を聞いた。

冬場に長生きさせるコツ

赤松富仁撮影
(赤松富仁撮影)

Q巣箱の置き方で気をつけることは?

▼巣箱をサイド際に置くとハチが弱る

 巣箱を置く場所は大事だよ。うちは全部で13棟(単棟)あるけど、どのハウスも必ず決まった場所に置いてる。入り口から入って8mくらいで、サイドから3mくらいのあの辺り。全部ちゃんと測ってるんだよ。そのへんが、ハチがいちばん弱らない場所だと思う。

 収穫するのに邪魔だからって、よくハウスの出入口付近(サイド際)に置く人もいるけど、サイド際は夜になると冷えるし、湿気もたまりやすいから、それでハチも弱っちゃう。

▼ハチを使い回すときは、同じ構造のハウスへ

 それと、本当はよくないんだけど今のハチ不足で、2日はこっちのハウス、2日はあっちのハウスって使いまわさないといけない場合もでてくるかもしれない。でもハチはね、巣箱の場所が変わると戻れなくなっちゃうの。巣箱は1日30cm以上動かすなって言われているんだから。もし動かすんだったら、なるだけ同じ構造のハウスで、同じ場所に置くこと。そうすれば、戻る場所がわからないハチも減って、あまり弱らないと思うよ。

▼巣門は南向きか東向きに

 あと、置くときは向きも考えたほうがいいね。南北ハウスならハチが出入りする巣門は南側。東西ハウスなら東側。太陽光線が巣門に早く当たるから、9時にはハチがブンブン出勤して、花にたかってるよ。でも、巣門を北や西に向けると、出勤時間はおそらく11時ごろだろうね。ミツバチはイチゴの大切な媒酌人だから、ちゃんと働いてもらわないと。

ウネ上にパイプを設置 巣箱はこのあたりに置く
ウネ上にパイプを設置し、30cmほどの高さに置く。巣門は南側 巣箱はどのハウスもこのあたりに置く

Q防除のときはどうしたらいい?

▼冬場、ハウスの外に出すときは巣門を閉める

 クスリをかけるときは巣箱を外へ出すでしょ。このときよく巣門を開けたままにする人もいるけど、あれは絶対ダメ。ハウスより外のほうが気温が低い季節は巣門は閉めて毛布にくるんでやる。閉めきっちゃうとハチは居心地が悪いと思うかもしれないけど、それは人間が勝手に思っているだけ。1週間〜10日ならぜんぜん問題ないよ。むしろそのほうが安心。だって巣門を開けとくと、天気がいい日はハチが外に出る。出るときはいいよ。体温があるから飛べるけど、でも帰ってくる頃は寒さで体温が下がって飛べなくなる。それで死んじゃうのが多い。

外に出すときは巣門を閉める 給餌器に砂糖水を入れる 給餌器に砂糖水を入れる
外に出すときは巣門を閉める 左のジョロで給餌器に砂糖水を入れる 両端の巣板の蜜がなくなったら給餌器に砂糖水を入れる

▼毛布でしっかりくるむ

 それと卵は温度に敏感なの。せっかく女王バチがせっせと卵を産んでも、低温に遭うとやられちゃう。巣箱を地面におくと底から冷えるから、毛布は被せるだけじゃダメ。底もしっかり風呂敷みたいに包んでやらないとハチは減るいっぽうだよ。

羽をブンブンさせて換気するミツバチ 羽をブンブンさせて換気するミツバチ
外に尻を向け、羽をブンブンさせて換気するミツバチ

Q巣を見るときの観察のポイントは?

▼群の大きさに合わせて巣板を減らす

 ハチはイチゴの一番花が咲き始める10月下旬に入れるけど、ハウスは外と環境が違うから落ち着くまでに5日くらいかかる。このときに結構死んじゃうハチが多い。落ち着いたら一回巣箱を覗いてみるのも大事だね。たとえば六枚群の箱で、ハウスに入れる前は一枚一枚の巣板にびっしりハチがたかっていても、ハウスに入れてから見ると、まばらになってることが結構ある。そういうときは巣板を一枚抜いてやったほうがいい。ハチの数に見合った部屋数(巣板)じゃないと温度を一定に保てない。働きバチはね、寒くなるとみんなで集まって部屋を暖めるんだけど、余計な部屋がいっぱいあると、あちこち動くから温度が一定にならない。すると卵が孵化できなくて、群がどんどん減っちゃう。

▼エサ不足になっていないか

 エサも大事。なくなったら餓死して死んじゃうから、うちでは砂糖水をやる。一斗缶に15kgの白砂糖と水を九分目まで入れて、最後に塩をひとつまみ。ハチも塩分が必要なの。一斗缶ごとガスコンロにのせてグツグツ沸騰するまで溶かす。いちど沸騰すると砂糖が固まらなくなるからね。

 砂糖水をやるタイミングは巣箱のなかの蜜がなくなったとき。ミツバチは箱の端の巣板に蜜をためていくんだけど、巣板に蜜がなくなったら給餌器に砂糖水を入れる。1升入るんだけど、二晩もするとなくなっちゃうよ。働きバチが砂糖水を一気に飲んで、体の中でハチミツに変えて、巣板にどんどんためていっちゃうからね。その巣板の蜜がなくなったら、また砂糖水を入れてやる。

巣箱はコンテナの上に置く 「ガマの野郎は、1週間でこれ1枚くらい食べちまうんだ」 「ガマの野郎は、1週間でこれ1枚くらい食べちまうんだ」
巣箱はコンテナの上に置く 「ガマの野郎は、1週間でこれ1枚くらい食べちまうんだ」
熊蜂(スズメバチ)捕殺器 スムシは巣門に段ボールなどを詰めて広さを調整して防ぐ チョーク病対策には巣箱の中にヒノキの葉を1枚
熊蜂(スズメバチ)捕殺器 スムシは、巣門に段ボールなどを詰めて広さを調整して防ぐ チョーク病対策には巣箱の中にヒノキの葉を1枚

夏越しのさせ方

Qハチは暑すぎるのは苦手では?

▼ミツバチの扇風機作戦

 真夏になると温度が高過ぎていなくなっちゃう? そんなことはないと思うな。うちでは山上げなんてしないし、木陰にも置かないけど大丈夫。だってハチは暑くなったら自分たちでちゃんと換気するからね。働きバチが巣門の前で、尻向けてブンブンする。ほら、今日は暑いからやってるよ(右ページの写真)。こうやって巣箱のなかの熱い空気を外に出す。偉いもんだよ。

 だけど外気温が40度以上になるとハチも暑いから、巣の外に出てくることがある。ハチの大きな塊が巣箱にごそっとつく。ハウスの中ではたまにそういうことも起きるけど、外ではまずないね。

Q外敵対策を教えてください

▼大食漢・ガマガエルから守る高台

 夏場は外敵がいちばん恐い。とくにガマガエル。夜になると巣箱の前に来てペロッペロッと食べちゃう。ミツバチは巣にちゃんと門番がいるんだけど、まず門番が食べられる。すると巣箱のなかで、なんだ、なんだって、次々に働きバチが出てきては、その側からみんな食べられちゃう。ヤツは一晩で200〜300匹は食べる。それが毎晩だから1週間で2000匹(巣板一枚分)! 朝方行って、腹をパンパンに膨らませたガマが巣箱の近くの日陰に隠れてるのを見た時は腹立ったな――。

 ガマの対策はね、巣箱を30cm以上高い台に載せること。これなら、いくらガマでも届かない。夏にハチがいなくなっちゃうという人は、巣箱を地面に置いてガマにやられたせいじゃないかな。

▼スズメバチは捕獲網で

 スズメバチもおっかない。お盆すぎるとやってくるけど、オオスズメバチは10匹ぐらいの集団で来る。攻撃されたら1時間足らずで一群(巣板六枚群)はやられちゃう。体がでかいから巣の中には入れないけど、外に出ている門番を強いアゴで真っ二つに食いちぎる。門番に異変が起きたら、なかにいる働きバチも戦闘態勢に入って、次から次に外に出てきてみんなやられちゃう。

 それとキイロスズメバチ。あれは体が一回り小さくて一匹で来る。巣の前をブーンと飛んでようすを見てるんだけど、働きバチが大きな花粉団子を抱えてヨタヨタ飛んで帰ってきて、巣の入り口に止まってフーッと一息ついたところをかっさらっていく。頭がいいね。近くで団子にされてエサにされちゃう。

 スズメバチ対策は捕獲網。養蜂場で売ってるけど、スズメバチが上に飛ぶ習性をうまく利用して捕まえられるようになっている。これを巣箱の前に置いておくことだね。

春にとっておいた蜜 蜜は保冷庫に保存
春にとっておいた蜜 蜜は保冷庫に保存
「ハチミツは、ハチのために保冷庫にとっておいてやるんだ」

▼スムシは巣門の調整で防ぐ

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 スムシも恐い。すばしっこい蛾で夜になると巣の中に入って卵を産みつける。スムシの幼虫はミツバチの巣(蜜蝋)がエサだから、なかに潜り込んでゴソゴソと巣を食い散らかして歩く。大きいのは2cmくらいになるけど、そうなったら巣はもうボロボロ。すぐにハチも住めなくなっちゃう。

 スムシ対策は、群の大きさに合わせて巣門の穴の大きさを調整すること。ミツバチにはちゃんと門番がいるって言ったけど、群が大きければ門番もたくさんいるから門を大きく開けても蛾の侵入は阻止できる。でも門番が少ないと入られちゃう。そういうときは巣門を小さくしてやること。段ボールの切れ端とか何でもいいから巣門の隙間を狭めてやればいい。だいたい巣板三枚の群なら広さは3cm、四枚群なら4cmってね。そうやって調整してやればスムシも入りにくくなるよ。

▼ダニはダニ剤で

 ダニもやっかいだけど、やられるとハチの羽がよじれて死んじゃうの。掃除担当の働きバチが、羽のよじれた死骸を外に運び出すけど、それを発見したら専用のクスリを使う。アピスタン。薬剤を浸みこませたゴムのようなものを巣板の間に挟んでやる。

▼チョーク病にはヒノキが効く

 チョーク病っていうのもあって、6〜7月頃、菌が入ると幼虫がチョークみたいにカチカチに固まっちゃう。掃除担当がそういう幼虫を外に持ち出すからわかる。すぐ全滅ってことはないけど、放っておいたら、やっぱりどんどん死んじゃう。

 でもね、巣箱の中にヒノキの葉を一枚入れておけば治るよ。葉は生の状態で手の平くらいの大きさ。ヒノキには殺菌効果があるんだね。

ナタネの蜜をとるミツバチ ミツバチのためにまいたナタネ畑
ナタネの蜜をとるミツバチ。足にくっつけているのが花粉団子 ミツバチのためにまいたナタネ畑

Q夏もエサ不足が心配?

ハウスの横にある巣箱
ハウスの横にある巣箱。現在50箱ほど

▼ハチミツを保冷庫で保管しておく

 8月は意外に花がなくて困る時期。だから花盛りの春にハチがためた蜜を巣板のまま保冷庫で保存しておいて、8月になったらまた入れてやる。

 今年はね、空いた畑にヒマワリをまいて、その下にカボチャを植える予定なの。ヒマワリは花も大きいでしょ。夏の花がない時期に咲くからミツバチにとってはいいと思うよ。それとカボチャも花が大きくて蜜もたっぷりあるからね。

◇          ◇

 ミツバチってほんとうにかわいいんだよ。ハウスで巣箱の前に座って見ていると、一生懸命働いて戻ってくるとき、フーフー言いながら巣箱の前で一息つくのがいる。ちょっと休憩してから、また巣箱に戻る。命令もしてないのに自発的にあれだけ働くんだよ。もうクタクタになるまでね。そんな姿を見てるとかわいくてしょうがないよ。自分ももっとがんばらないとって思う。

 じつはね、養蜂家になるのが昔からの夢で、今年からその夢を叶えるために本格的にハチを殖やしているところ。今71歳だけど、150歳までは生きないとね。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 新特産シリーズ ミツバチ

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