月刊 現代農業
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田口太一さん
「この海のおかげでキャベツがおいしくなるんだよ」と話す田口太一さん。自宅は海のすぐそば

身近な資材で野菜の硝酸減らし

みんなで海水キャベツ石灰でさらに甘くなる!

茨城県・JAしおさいキャベツ部会

編集部


また食べたくなるキャベツ

「海水かけると硝酸が減るから、食べたあとの苦味がなくて甘いんだよね。キャベツに海水かけた初めの年に直売所に持っていったら、それまでキャベツを食べなかった孫が食べたからって、その次の週にまた買いに来てくれた人もいたんだよ。最近も、オレんところの集落の若い人にうちの海水かけたキャベツをあげたら、うまかった、また欲しいって言われてさ。うれしいよね。オレだけじゃなくて部会のみんながそう言ってるみたいだよ」と、田口太一さん(71歳)は海水をかけたキャベツを自慢気に見せてくれた。

大川考一さん 汐菜キャベツのパンフレット
JAしおさい鹿嶋営農経済センターの大川考一さん(右) 汐菜キャベツのパンフレット

単価は二倍! 三浦、銚子に近づいてきた

 キャベツに海水をかけているのはJAしおさいキャベツ部会の27人。仕掛け人はJAしおさい鹿嶋営農経済センターの大川考一さんだ。

「きっかけは、競合産地の三浦や銚子の単価に追いつきたい!ですよ。何せ鹿嶋のキャベツはもともと三浦や銚子の半値でしたからね。売れるキャベツづくりのアドバイスを全農に頼んだら、鹿島灘のそばという立地条件を売り出せ!海水だ!となったんです」

 平成15年、個選がほとんどだったところにキャベツ部会が発足。20haほどで約3万ケースという小さな組織で、海水を使った栽培が始まった。名付けて「汐菜キャベツ」。

 そして今、かつては1ケース10kg(L8玉)が400円、500円だった単価が800円まで上がってきた。食味がよく、選別もよくなってきたことも評価され、三浦や銚子の単価に近づいてきたのだ。

こぶし大の頃と収穫前に海水散布

硝酸と糖度は測る部位、時間帯によって変わる
硝酸と糖度は測る部位、時間帯によって変わる。大川さんは測る部位を立ち葉と鬼葉をとった3枚目の中肋(かたいところ)部分に、測る時間帯を午前中に決めている

 田口さんたちの海水キャベツのつくり方を大川さんに教えてもらった。

 海水をかけるのは、11月定植で3月半ばから5月半ばまでとる春キャベツ(品種は金系201)で、キャベツがこぶし大になった結球初期と収穫1〜2週間前に2回。倍率はヒミツだそうだが「100倍とか200倍の世界」で、以前、キャベツ17株に原液をかけても問題なかったが、土への影響を考えて薄くしているとのこと。これを1回に反当100P散布する。

 海水は農協職員が県の栽培漁業センターというところから汲んできて出荷場に置いてあるので、農家はポリタンクを持っていけばいいようになっている。2haの農家でも100倍で使うなら1回20Pで足りる。

硝酸がガクンと減り、糖度が上がる

キャベツの硝酸は外側ほど、糖度は内側ほど高い

 こうしてタダの海水をかけるだけで、収穫時のキャベツの硝酸態チッソはぐんと減る。部会の施肥基準(チッソで元肥12〜13kg+追肥2〜3kg)でつくると、収穫期のキャベツの硝酸態チッソは多いときで4000〜5000ppmあるが、海水をかけるとほぼ3000ppm以下に減る。すると店もちがよくなると大川さん。

「別な産地のキャベツとうちのキャベツを並べておいたら、うちのほうが傷みが遅くて、1週間置いてもなんてことなかった」とのこと。いっぽう、糖度は反対に2度くらい上がる。ふつうキャベツの糖度は3〜4度だが、海水をかけたキャベツは5〜6度はあるという。これが、食べたあと苦味が残らず甘いキャベツのヒミツだ。

 硝酸と糖度を測るのは収穫数日前。農協の出荷場で大川さんが硝酸イオンメーターと糖度計を使って測る。

海水ミネラルのおかげ、石灰で駄目押し

 この栽培でなぜ硝酸が下がるのか、海水の利用をすすめた五光企画の吉田弘幸さん(千葉・肥料コンサルタント)に聞いた。ポイントは、海水ミネラル、そして石灰にあるという。

 施肥されたチッソは畑の作物に硝酸態チッソで吸われ、体内で硝酸還元酵素でアンモニアとなり、やがてアミノ酸に合成されて植物の体がつくられる。吉田さんは、海水をかけると、硝酸還元酵素の活性を高めるといわれるミネラル、なかでもホウ素が与えられるから硝酸が減るのではないかとみている。

 さらに硝酸減らしには、作物の体を成熟に向かわせることが大切で、そのためには石灰をきちんと吸わせることが肝心だという。石灰は葉でつくられた光合成産物を実や花のほうへ移行集積させる働きをもつからだ。

 じつは部会の栽培では、海水散布と同時に、結球初期にリン酸・カリの液肥を、収穫1〜2週間前に石灰の液肥を与えている。リン酸・カリでそれまでの栄養生長を生殖生長に転換させ、石灰でいっきに成熟に向かわせる。「成熟とは花芽分化の方向にもっていくことで、抽苔寸前にすること。この状態になったキャベツは中心の糖度が最高13度まで上がり、ものすごくおいしくなる」

海水+苦土石灰上澄み液で硝酸が激減、糖度が11度にアップ

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 大川さんは農家の畑を借りて、収穫2週間前、海水に苦土石灰上澄み液を混ぜてかけてみたことがある(海水原液10Pに苦土石灰20倍上澄み液を50cc)。すると、ふつう4000〜5000ppmある硝酸が1100ppmに下がり、糖度はなんと11度もあった。そのうえ、菌核病も減るみたいだという。

「石灰の液肥を買うよりも、自分で上澄み液をつくったほうが安くてすむからね。『現代農業』にも出ていたでしょ。やれるものはまず実験してみるという考えでやってるんだけど、石灰はおもしろいなー」

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