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●巻頭特集 簡単だ!モミガラ活用

モミガラ堆肥を一輪車で畑にまく
モミガラ堆肥を一輪車で畑にまく

モミガラ堆肥は簡単だ

サンドイッチ方式で簡単
モモ鈴なり!
83歳、モミガラ堆肥の日々

長野市・近藤 近さん

編集部

 秋、近所でイネ刈りがはじまりだすと、長野市の近藤近さんはいてもたってもいられなくなるという。自分も早くイネを刈らねばと焦っているわけではない。じつはモミガラを“狙っている”のだ。もうかれこれ10年来、モミガラをもらいにライスセンターに通い続けている。しかも9月中旬〜10月中旬の毎日!

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「モミガラもらうのは、早いもの勝ちだからな。晩酌してぐっすり眠って、朝4時に行く。しかも、軽トラの荷台は高さ1mぐらいの枠で囲って、それで1日に2往復も3往復もするんだ。まったく、欲でやってるようなもんだ」

「欲」とは、その大量のモミガラで堆肥をつくること。できた堆肥はモモ農家の近藤さんにとって、なくてはならないものなのだ。

83歳、モミガラがラク

 もともと近藤さんは、畑が粘土質ということもあって、堆肥の投入には積極的だった。牛糞や豚糞などの家畜糞にはじまり、ワラ堆肥、雑草堆肥、落ち葉堆肥……、身の回りにあるものなら片っ端から試してみた。ところが……。

「家畜はやめちまっただろ。

 ワラはそのままじゃ分解しにくいから、カッターで切らないとダメ。手間だろ。

 雑草は発酵ムラができやすいから、形が崩れるところとそうでないところがある。分解してない長い繊維ほど運びづらいもんはない。

 落ち葉はオラひとりでほうぼうから集めるのはムリだから人を頼むんだけど、落ち葉と一緒に石ころまでついてくるんで困ったもんだ。それに落ち葉はフォーク(スコップ)の先に刺さるんで、それをいちいち足でこそぎ落として……、面倒だったなあ」

 そんなわけで近藤さん、数ある有機物の中でも、特にモミガラがお気に入りなのだ。モミガラなら近くにいっぱいあるし、運ぶのも、積むのも、堆肥化したものを散らすのも、ことごとくラク。83歳になる身にしてみれば、大助かりである。

切り返し不要、モミガラと生ゴミをサンドイッチにするだけ

 しかも、近藤さんはモミガラを堆肥にするのに、ほとんど手をかけていない。知り合いの農家はよく「堆肥をつくるズクがない(手間がない)」「モミガラは腐りにくいから使いたくない」なんていうのだが、どっこい近藤さんの堆肥づくりときたら、モミガラと生ゴミをサンドイッチにするだけなのだ。

 やり方はまず、畑の隅に溜めておいたモミガラの一部と米ヌカを混ぜて発酵床をつくっておく。その上に3カ所のスーパーから集めてきた魚のアラや野菜クズをドサッとぶちまけ、モミガラでフタ。翌日も、その上から生ゴミ、またモミガラでフタ。これを生ゴミをもらいにいく11月から3月まで毎日繰り返す。

「切り返しをするかって? そんな手間ねえからやってねえ。オラの堆肥づくりは、歳いってもぜんぜん苦にならない方法だ!」

近藤さんのモミガラ堆肥のつくり方
近藤さんのモミガラ堆肥のつくり方  板の枠で囲った一部分に、モミガラを30cmほど積み、米ヌカ15kgと混ぜておく(米ヌカを使うのは最初だけ)。1日分の生ゴミをその上に置き、モミガラでフタ。さらに獣に食われないようにトタンなどを被せておく。毎日繰り返して、サンドイッチ状に積んでいく。  モミガラと生ゴミが枠の上まできたら少し崩し、そこにまた生ゴミとモミガラを積んでいく。枠のスペースが満杯になるまで繰り返す(近藤さんは畑ごとにこの枠をつくっており、合計3カ所ある)。

舟形のモミガラは、水分が多いものと相性がいい

 こんなに手順が単純なのに、入れた生ゴミは1週間もすると、フニャフニャ薄くなり、「ゆだってるようになるんだ」。魚は蹴るとボロッと身がこぼれる。いっぽうのモミガラは、黒みがかって、やがて「かたなしになってくる」。つまり、あんなに分解しづらかったモミガラの形も崩れ出すのだ。

 これは明らかにいい発酵だと近藤さん。

「魚のアラや野菜クズはそのままだと水分が多すぎて絶対ダメ。放っておくと、腐ってにおって、人に迷惑をかけるだろ。だけど、モミガラと一緒に積むようになってからは、くさいわーっていう人もいなくなった……。モミガラの空間がいいんだろうな。ビチャビチャのアラでもうまい具合に水分が調節される。通気性もいいから、発酵に失敗がない」

 まさしくこれが舟形のモミガラの長所。窪みには水分も空気も溜め込めるので、好気発酵の絶好の場面が整うのだ。微生物もモミガラの隙間に好んで住み着き、生ゴミのチッソ分をエサに勢いよく働いてくれるようだ。その証拠に生ゴミを分解するときの温度は、ちょっとすごいことになる。

「雪の降る日だったなあ。辺りはまっ白なのに、モミガラの上だけ雪が積もってないんだ。不思議に思って、手を突っ込んでみると熱い。温度計で測ってみると、84度になってた!」

 もっとも、あまり高温になりすぎると、肥料分が飛んでしまうと近藤さんもわかってはいる。しかし、そこは量でカバー。近藤さんは、微生物まかせのラクな方法で堆肥を量産する方針だ。

冬に積んでおいたモミガラ堆肥を8月に掘り返してみると、この通りモミガラは茶色く変色している。
冬に積んでおいたモミガラ堆肥を8月に掘り返してみると、この通りモミガラは茶色く変色している。生ゴミは跡形もない(松村昭宏撮影、以下Mも)

「よく人から、どんな菌を使ってるんだ、と聞かれるから、オラは『タダの菌』を使ってると答えるんだ。菌なんてどこにでもいるわけだから、買うもんか。なにしろオラは、鼻水出すのももったいないと感じるし、日が暮れるのを見るのもなんだか損した気持ちになる、欲深い人間で有名だからな。ガッハッハ」

モモ畑がフカフカだ!モミガラ堆肥マルチ

 モミガラ堆肥は積んでから3カ月ほどで使えるようになるので、近藤さんは春先できた分を順次畑に入れたり、そのまま積んでおき、秋に運搬車で入れたりしている。

「ここらへんではモモの樹のまわりにだけワラを敷く人が多いが、水もちのことを考えるなら畑一面にやったほうがいいに決まってる。細かい根はあちこちにあるからな。

 それから、秋になると土をフカフカにするために、トラクタや管理機で畑を起こす人もあるけど、オラは根を切るのがイヤだし、ミミズも殺したくないから耕さない」

 だから近藤さんはモミガラ堆肥を、なんとモモ畑全面(合計約25a)に施している。おまけに耕しもしないので、いうなれば「モミガラ堆肥マルチ」。その厚さ、じつに5〜10cmにもなる。しかも毎年のことだから、今や近藤さんの畑は隣と比べて全体がこんもりと盛り上がっているほどである。

モミガラ堆肥マルチしたモモ畑を少し掘ってみると、すぐにミミズが出てきた
モミガラ堆肥マルチしたモモ畑を少し掘ってみると、すぐにミミズが出てきた

 おかげで、畑をちょっと掘ればミミズがウヨウヨ。狙い通りである。また、モミガラ堆肥の下は水分を保って乾かないので、夏でもかん水が1回きりですむようになった。反対に激しい夕立が来ても、水溜まりにならないぐらい水はけがいい。

 もちろん1番の変化は、畑のフカフカである。「収穫中に誤ってモモを地面に落としても、傷まないんだ」

肥料はほとんど買わない、モミガラ堆肥栽培

 さらに驚きなのは、近藤さん、買う肥料といったら硫マグと硫カルぐらいで、あとはみんなこのモミガラ堆肥でまかなってしまうのだ(味をのせるために塩と魚腸木酢は散布している)。

「技術員は、堆肥を入れすぎると徒長枝が出すぎてダメだというが、なに、モモの樹は徒長枝出るぐらい勢いがあってちょうどいいんだ。葉面積が広いと玉のびがいい」

 しかも大玉の実を1本の樹に1000個もつけるもんだから、袋がけや収穫の手伝いに来た人たちもたまげてしまうという。それでもちゃんと色もつくし、味もいいのだ。熟期が遅れることもない。

たわわに実ったモモ
たわわに実ったモモ(M)

 今年は特に、そのすごさが証明された。というのも、近藤さんの地域では7〜8月の曇天と雨続きで、全体的にモモの調子がよくなかったのだ。

「糖度も12度止まりの人が多かったようだけど、オラのところでは17度のモモもちゃんととれた。やっぱり堆肥を入れているからだと思う」

ホウレンソウは午前中で完売

 モミガラ堆肥の威力は、なにもモモにばかり発揮されるわけではない。近藤さんの自家野菜づくりは、元肥も追肥もほとんどがモミガラ堆肥。ジャガイモは4年連作しても大きなイモがゴロゴロとれたし、ホウレンソウは甘みが違う。

「直売所にホウレンソウを60〜70把持って行っても、一人で3把も4把も買う人がいるから、お昼までに全部なくなっちまう。店長からは、『夕方まで残したいから、もっと持ってきてくれ』って頼まれるんだ」

 また、タマネギやネギの苗床にモミガラ堆肥を混ぜておけば、目に見えて、細根がギッシリ大量に出る。定植してからも活着がすごくいいのだ。

田んぼに生モミガラでケイ酸効果

モミガラのケイ酸が効いているおかげか、近藤さんのイネは丈が長く(隣の田と田植えはほとんど同時期、しかも近藤さんの田んぼのほうが位置は低い)、葉先はバリバリ
モミガラのケイ酸が効いているおかげか、近藤さんのイネは丈が長く(隣の田と田植えはほとんど同時期、しかも近藤さんの田んぼのほうが位置は低い)、葉先はバリバリ

 いっぽう田んぼ(13a)には、作業の都合もあって、モミガラを生のまま入れている。イネ刈りが終わった秋、軽トラックで5台分の量を入れて荒起こし(あとは田植えの15日前に米ヌカ300kg、塩80kgふって、浅く耕耘)。やはり田んぼも土がやわらかくなり、耕すのがラクになったという。

 さらに見逃せないのが、モミガラならではの成分、ケイ酸。モミガラの約20%は灰分でできており、そのうちの九割がケイ酸である。つまり他の植物体に比べてはるかに多く含まれるのだ。イネにケイ酸が効率よく吸われると、葉が硬くなり、実入りもよく、増収するといわれている。

「オラんとこは脱穀だけ人に任せていて、その人がワラを見てなげーな、なげーなっていうんだ。ワラが長いほうが、それだけ穂も大きいってこと。ただ、丈が長いと倒伏が心配だけどな、オラんとこではペチャっと倒れるなんてことはまずない。これはモミガラのケイ酸が効いているおかげだと思う。止め葉が出てからも先端は触ると痛いくらいにバリバリしている」

 イネに効き、モモに効き、野菜にも効く。

「オラんちの畑ではなんにでもモミガラ堆肥。田んぼには生のモミガラ。これに勝る肥料はないからな」

 もはや近藤さんの基本資材はモミガラ以外には考えられない。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
現代農業 2009年11月号

特集 簡単だ! モミガラ活用 [本を詳しく見る]

 モミガラを極上の資源に』VHS

モミガラだけを利用した育苗培土、モミガラ培土を成型マット化する研究など、新しい活用の可能性、また昔ながらのくん炭を積極的に活用して成果をあげている農家を訪問し、活用技術の実際や考え方などを紹介する。 [本を詳しく見る]

 堆肥 とことん活用読本』別冊現代農業2006年3月号

身近な素材-なんでもリサイクル
畜産廃棄物、野菜残渣、剪定枝、生ごみなど、身近な廃棄物を何でも活用。堆肥施用の意味、素材の特性、堆肥の作り方・使い方、優良事例まで、「現代農業」で蓄積した農家の知恵を集大成。 [本を詳しく見る]

 ボカシ肥・発酵肥料 とことん活用読本』別冊現代農業2005年4月号

生ごみ、くず、かす、草、落ち葉など捨てればごみでも、発酵させればボカシ肥や発酵肥料・堆肥に変身。身近な有機物を宝に変える知恵を満載。バイオガス活用、天恵緑汁も。 [本を詳しく見る]

 発酵利用の減農薬・有機栽培』松沼憲治 著

土着菌による手作り発酵資材で、減農薬・有機40年連作の農家技術を公開。土中発酵の土つくり、土着菌ボカシ、堆肥、モミ酢、乳酸菌液、黒砂糖液などの作り方・使い方を詳解。ハウスキュウリ、露地野菜、水稲栽培も [本を詳しく見る]

炭 とことん活用読本 木酢・竹酢・モミ酢 とことん活用読本

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