地元JAでの簿記講習会の様子 節税は 痛快 だ!
体験的 青色申告のススメ黒崎浩史
5年間で100万円の節税
先日の農業関係の懇親会の中で出た古参の役員さんたちの会話です。
A氏「米価が安いのに税金ばっかりかかってよ」
B氏「肥やし代払って所得税だべ。(これでは金が)残んめ」
とやっていたので、「それ、儲かってるからですよ」と言ったら、両氏に「若いからな。まだわかんねーかな」と諭されてしまいました。
???……。もしや「白色申告ですか?」とたずねると「そーだ! 青はおめぇ、税理士じゃねーと大変だぞ。帳簿作って……(以下略)」と散々でした(栃木弁はご容赦ください)。
当家は青色申告です。自分が父から経理を任された平成15年から、記帳や伝票整理も一人でやっています。収入から経費等を引いた分に課税される所得税において、青色申告ではその過程で計上できる経費に白色とは比較にならないほどのメリットがあります。やってよかった、やらなきゃ大損でした。事実、5年間で100万円くらい節税できたことになります。
農業の大先輩がいまだに白色申告かつ税制度に無頓着だったことには、少なからずショックを受けました。
儲かってないはずなのに所得が残る不思議
当家の経営面積は5haほどで、米・麦・大豆をつくる典型的な土地利用型農業を営んでいます。その一方で、ビニールハウスで野菜を雨よけ栽培。野菜はスーパーや直売所へ出すほか、自宅に保健所の許可を得た加工施設を構え、弁当や漬物等に加工して、野菜とともに直売所へ出して経営の一助としています。
15年に就農するまで自分は会社員でした。だから父にはもちろん母にも、里(集落)の先駆者にも、農業技術は教わることばかりです。ただ、惰性と慣習で経営しては先がないのは何の職種もいっしょ。父親から引き継ぐと、まず最初に農協の通帳を見て預金の動き(とくに売り上げや入金)を把握したり、現金買いのレシートを整理したりすることから始めました。
今でもハッキリ覚えているのは、過去の確定申告の控えと収支内訳書を見せられたときのことです。サラリーマンだった自分には、なんともいえない違和感がありました。
当時、わが家は白色申告でしたから〈収入−経費−基礎控除や各種控除=所得〉、これに税率をかけたものが所得税です(図参照)。計算してみて違和感が鮮明になりました。理由は基礎控除まで引いたのに所得が残ったからです!
――儲かってるからだろう? 違います。前述のとおり、わが家は土地利用型がメインで、その傍らの野菜の利益は、母の潤滑油に最適な程度です(笑)。ではなんでしょう?
青色と白色の差は歴然
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答えは「雑収入」です。具体的には出荷奨励金や各種交付金など公的助成金がそれです。生産物の売り上げからなる純収入から肥やし代などを引けば、今の稲作、安いから課税額なんて知れたものです。ただ、そこに公的な手当てがのっているから収入が膨らんでいたのです。
これは、額の大なり小なりはあっても、どの農家にもあるのではないのでしょうか? サラリーマンにはありえない対価以外の収入。これに気がついたとき、「(オヤジのように)ルールに則ってちゃんとやれば百姓で生活できる」。ここに落ち着いたわけです。
もらえる物はもらいましょう。でも、せっかく入った助成金などが収入として合算され、課税所得になってしまうのはいただけません。
正攻法で課税所得を減らすにはどうすればよいか考えました。その結果が青色申告です。青申にすれば専従者給与が経費に計上できて、65万円の特別控除も受けられます。
仮に収入総額1000万円、経費700万円、専従者給与として月に8万円を2人分で年間192万円とします。各種控除は省略して、税率は自分が経営を引き継いだ当時の10%で計算してみましょう(323ページ)。
答えは5000円です。ところが、これを白色で計算すると12万6000円になってしまいます。金額の差は歴然。この違いに気づいたとき、青色にするべく税務署へ直行しました。
税務署で青申開始を申請したら…
宇都宮税務所へ青色申告の開始申請に行くと、窓口で説明を受け、今後、揃える帳簿を教わりました。窓口のオジサンは丁寧ですが、「簿記は『複式』で記帳して……」と、このあたりから自分はアレルギーを起こしました。「フクシキボキ=面倒」という観念が先にあって、講習があっても逃げていたからです。
たまらず、その場で「すいません。もう一回、最初っからいいですか?」。――この一言がきっかけで、事態は良いほうへ見事にひっくり返りました。
一枚の紙を手に笑顔で戻ってきた窓口の紳士は「税務署で申し込むと、無料の記帳指導が受けられます。税理士さんが自宅まで来て、丁寧に指導してくれます。申し込みされますか?」とのこと。気持ちよく税務署を後にした第一日でした。
この後、税理士さんとの電話で、複式簿記の知識が全然ないことや、やる気だけはあることなどを伝えると自宅で指導会が始まりました。教科書は『よくわかる農家の青色申告』(全国農業会議所)。書類のつくり方から提出要領まで、とにかく全部聞きました。一対一だからとてもよく教えていただき、おかげで手書き記帳もなんとかできる程度になりました。
パソコンで簡単、痛快
その頃、JA宇都宮でパソコンを使った簿記講習会があり、行ってみたらもう一目惚れです。ソフトは「ソリマチ」。農業簿記に特化し、かつJAとの取引を、本所からのデータで一括入力でき、申告書その他印刷フォーマットがすべて入っています。その月にパソコンといっしょに導入しました。
導入後、パソコン講習会に通い始めましたが、知りたいことが目の前にあるので毎回が楽しみでした。講師の先生を質問攻めにしたのも、いま思えば近道だったのかもしれません。
パソコンのいいところは、簡単に想定の計算ができるところです。たとえば専従者給与を多く出すと、経費が増やせてオヤジは節税できても、増えた給与のほうには源泉所得税がかかります。また、給与が増えたセガレは国保税や市県民税等の支払いが増えます。全体としていちばん節税できるギリギリのラインを弾き出すのもパソコンなら容易です。
おかげで、青色申告7期目の自分でも、所得税の節税から国保税、市県民税その他も節税できるまでになりました。税を理解し結果としてお金が残ると、漏れ樽の穴をふさいでいくようでじつに痛快です。
白色は青色へ、青色農家はさらなる節税へ
これは経験則ですが、白色申告で納税額がある方は、青色へ移行すると絶対に節税できます。最高65万円の所得控除ほか数々の特典を考えれば、青色申告が断然有利です。
年末など、農家を含む青色個人事業者向けに、市町村や税務署が主催の確定申告準備に向けた説明会が開かれています。JA宇都宮では、JAとの取引データ利用者を対象に毎年数回簿記講習会を実施していただいています。
帳簿と向き合ってわかったこと。それは「入るを計って出るを制す」。これです。
「○○円くらい」は帳簿の上ではありえない話で、キチッと締めると不思議とムダが見えてきます。仕掛けがわかってしまえばしめたもので、あとは帳簿の完成度も年々上がってきます。
青色申告書の承認申請(開始の申し込み)期限は毎年3月15日です(2010年分の申告から青色に変えるにはこの3月15日まで)。一念発起するにはよい時期かもしれません。
(栃木県宇都宮市)
この記事の掲載号『現代農業 2010年3月号』吸水・芽出しで名人に/覆土・マルチ・床土で名人に/タネの向きで名人に/堆肥稲作/野菜の接ぎ木/我ら果樹産地を引き継ぐ/味噌でお手軽人気商品/新しい野菜流通 ほか。 [本を詳しく見る]
『だれでもできる エクセルで農業青色申告(農業会計ソフト付)』塩光輝 青色申告に完全対応した複式簿記による会計ソフト付き解説書。一番元になる日々の取引(販売、購買など)を仕訳に入力していけば確定申告に必要な書類が整う。データを分析・加工し経営分析や経営計画にも展開可能。 ☆付録ソフト●Microsoft Excel2000以降対応 ●windows vistaで動作確認済みです [本を詳しく見る]
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