ハウスに侵入しようとするアライグマ(古谷益朗撮影) 『鳥獣害対策2010』コーナーより
キャラメルコーンとドッグフードで
アライグマを捕まえろ!今井 学
3年前から被害激増
平成19年の春から、北海道月形町ではアライグマの被害や苦情が爆発的に増えました。北海道のあちこちでも目撃情報が発生。当時アライグマの生態や駆除方法などの情報はまったくなく、ワナをかけてもやられる一方。
役場住民課で有害鳥獣の担当をしている私は、「みんな知らないなら、僕が徹底的に調べて情報発信すれば、被害農家や市町村が助かるんじゃないか」と一念発起。平成20年の春から一人でいろいろな実験や研究を始めました。その後、北海道の研究者とも情報交換していろいろなことがわかってきました。
これまでに調べてきたアライグマの生態と効果的な捕獲方法を今回ご紹介します。
住みかは木のウロや屋根裏、水辺を移動
もともと海外に生息していたアライグマは、環境への適応能力が高く、日本の暑さ寒さにも耐えられます。また、天敵である野生の肉食動物が国内にいないため、全国各地で繁殖し農作物に被害を与えています。
このアライグマ、4本足で歩く生きものとしては特徴的な部分があります。それは、手。手先がとても器用な動物です。人間やサルと同じく手足の指が5本あり、物をつかむことや木に登ること、穴を開けることができます。トウモロコシは皮をむいて食べ、スイカは穴を開けて中身だけ食べてしまいます。
アライグマは自ら穴を掘ることはほとんどありません。他の動物が住んでいた穴や、木の洞、家や納屋の屋根裏、縁の下などを住みかにします。
キツネやタヌキなどの野生動物は沢の中や低い所を通りたがります。アライグマも似ているのですが、とくに水辺を好んで移動します。おもに、川やため池、貯水池などの水辺沿いに歩いてきます。住みかも足跡も水辺付近で発見することがとても多いです。
春、作物が実る前にワナを仕掛ける
水辺に捕獲檻を設置する筆者。アライグマは力が強いので、檻の奥の扉は必ず結束バンドで補強する アライグマは冬眠せず、冬が発情期です。メスは自分の住みかで繁殖し、オスはメスの住みかを転々とします。
この発情期に目撃情報や足跡など見られることもありますが、この時期にワナを仕掛けてもまったく捕まりません。繁殖時期のメスは住みかからほとんど外に出ません。その代わりオスがメスの所に行きますが、メスの住みかの前にエサとワナを置いても、まったくと言っていいほど見向きもしません。
もっとも効率的に捕獲できるのは、北海道では春から初夏にかけてです。まだ畑に作物が実る前に捕獲することが捕獲率のアップにつながります。アライグマは冬の繁殖時期を過ぎ、出産後の春に住みかから出てきます。畑に何もない状態でワナを仕掛けると、お腹が空いたアライグマはエサの匂いに誘われてワナに掛かりやすいのです。
甘い匂い、油の匂いが大好き
アライグマは雑食性です。木の実や作物、残飯や小動物など何でも食べます。しかし、もっとも好きなのは、甘いものと油の匂いです。
油で揚げた甘い匂いがする食べものといえば……身近で手ごろなものがお菓子の「キャラメルコーン」。コンビニやスーパーなどのお店で手に入り、大きめの粒状で仕掛ける時にも扱いやすいです。肉系や魚系でも捕まりますが、タヌキなどアライグマ以外の動物が捕まったり、日持ちがしないので、あまりおすすめしません。
筆者(32歳)。「100の理屈より、1つの行動。俺がやらなきゃ誰がやる」が信条。月形町の有害鳥獣駆除の担い手になるため、自分の貯めた小遣いをすべて使ってハンターになりました アライグマの足跡(後ろ足)。指が5本ある キツネの足跡。指は4本(タヌキも4本)
踏み板式捕獲檻を使う場合の
エサの置き方〈作物がなる前〉 エサとなる作物がない時期(北海道では春〜初夏)は、食べ物を探すために通り道がバラバラになる可能性が高い。エサも広範囲にまく 〈作物がなっているとき〉 畑に作物が出来てくると(夏〜秋)、畑めがけて歩いて来る場合が多い。まく範囲を狭くし、より強力にワナへ誘導。T字型にまくと、前から来ても横から来てもエサに当たりやすい ワナに使用するエサはもう一つあります。それは、市販のドッグフード。パラパラとしたドッグフードはアライグマも拾いやすく、安くて広範囲に使用することが可能です。作物の時期によってまき方も工夫できます(前ページ図)。私の経験では、キャラメルコーンとドッグフードを両方使ったほうが捕獲率は高くなります。
なお、キャットフードでも代用できますが、魚系の匂いが強いため、野良猫などアライグマ以外の動物が捕まる可能性が高くなります。また、誤捕獲が多いのであれば、キャラメルコーンの代わりにリンゴやスイカなどの果物系を使用するといいでしょう。
踏み板の上にもエサを置く
では、実際にワナを仕掛ける方法をご説明します。使用するワナは中型動物用の捕獲檻(例えば「モデル1089」)です。
仕掛け場所は水辺周辺がよいでしょう。水辺がなければ周りより低い場所や納屋の中などの住みか周辺に設置します。納屋や物置などは基礎が低いので、建物の壁沿いに仕掛けます。神社など無人の建物の場合は縁の下か屋根裏に仕掛けますが、少しでも人の気配が少ない場所を選んでください。
ワナを設置したら、ワナに誘導するようにエサをまきます(踏み板式の捕獲檻の場合)。
一番のポイントはキャラメルコーンを踏み板(トリガー)の上にも置くこと。踏み板の上のエサをつかんだとき、手が踏み板に当たってワナが作動し、扉が閉まります。踏み板の上に置かないと捕まらないことがあります。
エサをまきおわったら、最後に可動部(踏み板から扉につながる部分)に掛からないようにしながら周りの草を檻の上や横に少し置いて、ワナを隠します。
ワナを仕掛けたら、必ず一日に1回以上見回りをして、エサを補給します。長期間設置するとネズミにエサを食べられるようになりますので、設置から約2週間が勝負になります。
アライグマを含む野生動物の捕獲には、捕獲する場所の自治体が国の駆除許可を得ているか、または、捕獲者が有害鳥獣駆除の許可を市町村長から得ていることが必要です。また、ワナを無料で貸し出しているところもありますので、お住まいの各自治体有害鳥獣担当にお問い合わせください。また、捕獲と併せて農作物の被害対策を行なうことも肝心です。
(北海道月形町役場住民課)