月刊 現代農業2010年10月号 土質ごとの地力が知りたい
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●巻頭特集 地力探偵団が行く 土質の悩み 有機物のギモン

巻頭写真

改めて、日本にはいろんな土がある。
でも農家は「わが畑の土」とつきあっていくしかない。
土質の性格を読み、有機物のやり方を探る。
――今年の10月号は「地力」という壮大なテーマを探偵!

失礼します!

『土質を探偵 砂地、粘土質・火山灰土』 コーナーより

土質ごとの地力が知りたい
真行寺孝先生(千葉県専門普及指導室)に聞く

 ナルホド、全国津々浦々(そんなに多くはないけど)聞き込み調査してきた農家の土質はいろいろだった。地力は土質によってもずいぶん違うようだし、作物によっても最適土質は違う…。よし、次は土質についてもっとスルドク探偵してみよう。

 土質のことなら、千葉県の土の専門家・真行寺孝先生(専門普及指導室)に相談だ。証拠物件として収集してきた全国の農家の土もリュックで持っていって見てもらおう。

土質を指のスリスリで見る

ヌルヌルの粘土、
ザラザラの火山灰土…

 土をリュックに背負い、先生のいる千葉県庁に到着し、扉を開くと、広いフロアにいた職員たちがいっせいにジロリ(緊張…)。先生はその端のほうに机を用意して待っていてくれた。

「今日は土質ごとの特徴と改善法がテーマでしたよね。最初に言っておきますが、農家の皆さんは『土質』と言いますが、われわれは『土性』と言います」(土性!? 話が難しくなったらどうしよう…)

 まずは、9つある土を並べて、一つひとつ土の由来を説明しようとすると、「情報は要らない。土を見ればわかる」。そう言って先生はいきなり立ち上がり、ビニール袋の上から土を触り始めた。

 最初に注目したのが兵庫の和田さん(60ページ参照)の粘土だ。「ヘビーグレーだな」と先生がつぶやく。おもむろに土を取り出し、人差し指と親指で土をつまんで、事前に用意されていたペットボトルの水を少し加えながら、指でスリスリし始めた。(唖然…)。先生、黙々とスリスリ。

指のスリスリ
指のスリスリ
先生の言うとおり探偵団もやってみた。人差し指と親指で土をつまんで、水を少し加えながらスリスリ…。写真の火山灰土だと最初はヌルヌルしていたが、そのうちにザラザラとしてきた。ヌルヌルしたのは粘土で、ザラザラしたのは砂とのこと(写真はすべて黒澤義教撮影)

「あー、この粘り。完全な粘土だな。あっ、でも壌土が少し混ざってる。この指の感触で、土の性質はだいたいわかりますから」

 探偵団もいっしょにやってみた。粘土は粒子が細かいのでヌルヌルしている。何の違和感もないのだが、スリスリを続けると、たしかに少しザラザラした感じが指につく。これが粘土より粒の大きい砂だという。

よい土はその粒の大きさと詰まり方で決まる

 さらに先生はこう続けた。

「土性を大きく分けると粘土、火山灰土(壌土)、砂の3つになるが、それらは粘土、シルト、砂の粒の割合が違う。だから指のスリスリでわかる」

 土の粒の大きさは、砂、シルト、粘土の順に小さくなる。でも、農家が指のスリスリで土質を見分けるのはちょっと難しそうだ(左ページ参照)。

「そしてよい土かどうかは、その粒の大きさと詰まり方で決まる。結論からいうと、いちばんよいのは火山灰土。土を100ccの缶擦り切りいっぱいに取ったとき、火山灰土は粘土と砂の中くらいの粒が約3割詰まっている。あとの7割は空気と水。スポンジのように隙間をいっぱい持っているので、水持ちも水はけも、根張りもいい土なんです」

土の色は黒いほど有機物や腐植が多いが…

 ちなみに、土の色は黒いほうがよい土なのだろうか。

「この北海道の火山灰土(左ページ中央写真)はホントに黒いな。土が黒いっていうのは有機物や腐植が多いこと。作物はつくりやすい」

 なるほど、たしかに今回探偵した土は改善後に黒くなっているものが多い。

「お持ちいただいた改良前と改良後の土を比べると、少し黒くなっているものもあるから、これはこれで土がよくなっていると見ていい。だけど、ホントの腐植ができて黒くなっていくのには何年かかると思いますか? 1年や2年そこいらでは黒くならない。1000年くらいかかる。火山が噴火して、火山灰が降り積もる。その多くは軽石の白、レンガのような赤い石。基本は白と赤。そこへ次第に草や木が生えてきて、落ち葉や枯れ草が分解されて土に還っていく過程を繰り返してだんだん黒くなっていく。そういう世界の話です」

(……)。

 なお、鉄が多いと赤みが増し、還元(酸欠)が進むと灰色や青みが増すとのこと。

現場での土性の簡易判定法

粘土と砂との割合の感じ方 ザラザラとほとんど砂だけの感じ 大部分(70〜80%)が砂の感じで、わずかに粘土を感じる 砂と粘土が半々の感じ 大部分は粘土で、一部(20〜30%)砂を感じる ほとんど砂を感じないで、ヌルヌルした粘土の感じが強い
分析による粘土 12.5%以下 12.5〜25.0% 25.0%〜37.5% 37.5%〜50.0% 50%以上
区分 砂土 砂壌土 火山灰土(壌土) 埴壌土 粘土(埴土)
簡易な判定法 棒にもハシにもならない
棒にはできない
鉛筆くらいの太さにできる
マッチ棒くらいの太さにできる
コヨリのように細長くなる

(前田・松尾、1974を一部改変「だれにもできる 土壌診断の読み方と肥料計算(農文協刊)」

茨城・原さんの砂(54ページ)。コヨリはできなかった 北海道・中藪さんの火山灰土(106ページ)。けっこう太めにできた 兵庫・和田さんの粘土(60ページ)細長くなった!

土質ごとの性格を知る

 砂質土壌

砂は有機物が早く分解されてしまう
砂は有機物が早く分解されてしまう
粒子が大きくて重たいので団粒はできにくい。水と空気は入りやすく、地温も上がりやすいので、有機物は微生物にすぐ分解されやすい(団粒のでき方については102ページ参照)

有機物の分解が早く、団粒ができにくい

 では、それぞれの土質にはどんな特徴があるのだろうか。まずは砂地から聞いてみた。

「砂はもともと粒がでかくて重いから、くっつくのが大変。だから団粒ができにくいんです。それと粒どうしの隙間が大きいから水が抜けやすい。すると空気も入りやすいから、微生物が活動しやすくて有機物を分解するのが早い。だから砂地は有機物や腐植が蓄積されにくい。有機物や腐植が多いと土は黒くなるけど、砂は黒くないでしょう。団粒をつくる接着剤の役目をする腐植も少ないから、そういう意味でも団粒ができにくいわけです。だから保肥力は小さい」

 むむっ、よい土にするのはなかなか大変そう…。

余計な肥料が効かなくて、つくりやすい面も

「ただし、保肥力が小さいということは作物によってはコントロールしやすいということでもある。余計な肥料を効かせたくない場合や、とくに着花が大事な果菜類などはいいでしょう」

 粘土質土壌

粘土は養分リッチだけど詰まりやすい
粘土は養分リッチだけど詰まりやすい
粒子が小さいので、表面に養分をたくわえる力が強い。くっつきやすく、有機物があると団粒をつくりやすい。水持ちもいいが粘る

保肥力もあるし、団粒もできやすい

 粘土はつくりづらそうな印象があるが…。

「たしかに粘土はもともと粒が小さいので、詰まりやすい。空気の層が少なくなれば作物の根も張りにくいです。しかし粘土のいちばんの特徴は粒が小さいことで、粒は小さければ小さいほど土の活性が高くなる。それは化学性でいうと肥料の吸着力が高いということ。物理性だと団粒ができやすいということになる。粒が小さいから粒どうしの接着面が多くてくっつきやすい。だから砂に比べると保肥力も保水力も高くなりやすいんです」

 なるほど、粘土質の土にモミガラやカヤを入れてよい土にしていた農家は、この粘土の能力を生かしつつ、空気の層も作ったから、いいものがとれるようになったのだな。

 火山灰土壌

火山灰は水持ちも水はけも優等生だけど、
リン酸が効きにくい
火山灰は水持ちも水はけも優等生だけど、リン酸が効きにくい
粒子が中くらいで、有機物が多くて団粒ができやすく、水持ちも水はけもいい。火山灰土に含まれるアルミニウムがリン酸を多く吸着するのでリン酸が効きにくい

水持ちも水はけもいいが、
リン酸が効きづらい

 火山灰土はどうだろう。全国的にも、真行寺先生在住の千葉県にも多い土だ。

「千葉の火山灰土は世界的にもいちばん優れている土だといつも農家に言ってるんですよ。それくらい火山灰土は生産力が高い。粘土より大きくて砂よりも小さい中庸の粒がそこそこあって、固相(土の粒)率が極めて低い。高くても30%で、残りは空気(気相)と水(液相)だから、作物が根を伸ばす物理的な条件としては非常にバランスがいい。耕耘作業もしやすいし、水持ちも水はけもいい。だけど唯一の欠点は、リン酸吸収係数(リン酸を吸着して効きづらくしてしまう力)が高くてリン酸が効きづらいこと。リン酸を効きやすくするためにも、有機物を1tずつとか適量入れ続けるといい」

耕しすぎ、深耕は避ける

「ただし、火山灰土も耕し過ぎると単粒化する。最近の天候だと局地的に大雨が降って、そのあと畑にトコトコと入るとボッコンと足が埋まる。とくに深耕すると、そういうことが起きる。土はむやみにいじらないことだ。一夜にして劇的に変えるような改良法はおススメできない。改良する場合は、その土の本来の力を知って戦略を立てるべきです」

 なるほど、耕し過ぎるな、か…。土質を活かすには深いコトバのような気がする…。いずれにしても、土質のことが少しずつわかってきたような気がしてきた。

探偵団が集めた農家の土(黒澤義教撮影)
探偵団が集めた農家の土(黒澤義教撮影)

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現代農業 2010年10月号
この記事の掲載号
現代農業 2010年10月号

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