月刊 現代農業2012年3月号 トラクタ野郎の技自慢大会
月刊 現代農業
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●巻頭特集 続 トラクタを120%使いこなす

巻頭写真

もうすぐ、春作業本番。
大好きなトラクタは、
最高の力を発揮する準備ができているか。

トラクタ野郎の技自慢大会〜浅起こし集団、参上!〜

埼玉県川越市にて

 古くから東京近郊の野菜産地として知られる、埼玉県川越市。ここに『現代農業』の記事を見ながら、居酒屋で熱く語り合う若手農家グループがいる。

 とくに彼らの最近の関心はトラクタの使い方。ロータリで耕す深さや、サトちゃんの低燃費・高速耕耘法、トラクタのコース取りなどについて、自分たちの地域、自分の畑ではどうか、あーでもない、こーでもないと議論が盛り上がるそうだ。

 畑一枚は大きくないけれど、葉ものを中心にこまごま周年栽培で稼ぐ川越では、トラクタが働く時間も半端じゃない。トラクタをいかに有効に使えるかが勝負になってくる。

 そんな彼らが自慢の愛車(トラクタ)で畑に集合した! 日々研究し磨いてきたというトラクタの技を、お互いぶつけ合おうというわけだ。

「トラクタの技自慢大会」、開催である。

畑にトラクタで集まった川越の若手野菜農家(写真は倉持正実撮影、*以外)

宮岡信彦さん(33)
トラクタ:KL380(クボタ)6年目
経営:3.7haでニンジン、ホウレンソウ
機械マニア

飯野芳彦さん(35)
トラクタ:AF28(ヤンマー)18年目
経営:2.3haでエダマメ、トウモロコシなど
トラクタなどの機械はメンテと修理でなるべく長く使う

内田和彦さん(38)
トラクタ:KL25(クボタ)12年目
経営:1haでコマツナ、葉ダイコン、ホウレンソウ
「みんなに教えてもらっているところ」という就農5年目

早川和孝さん(35)
トラクタ:KL5150(クボタ)購入して2年目
経営:3.5haで周年コカブ、エダマメ
4人の中ではいちばん経営が大きい

畑にトラクタで集まった川越の若手野菜農家(写真は倉持正実撮影、*以外)

畑でも浅起こし、やってます。

飯野 よく『現代農業』で「浅起こしがいい」って記事ありますよね。会津のサトちゃんとかも、田んぼの耕耘は浅起こしだって。うちらは5年くらい前から畑でも浅起こしでやってます。

 浅起こしがいいって思うようになったのは、『現代農業』でも取り上げていた「土ごと発酵」の考え方を知ってからですかね。収穫残渣とか緑肥とかも、一生懸命深くうない込んでたときは嫌気状態で土がドブ臭くなってたけど、なるべく表層浅くに微生物のエサになる鶏糞と一緒にすき込むようになって、畑が明らかに変わりました。好気的に発酵してうまく分解するようになって、いい野菜がとれるようになりましたね。土は森林土壌の香りしますよ!

早速いつものように、熱く語り始めた4人
早速いつものように、熱く語り始めた4人

宮岡 親父たちの世代は、どんどん機械がよくなって、とにかく深く細かくうなうことをしてきたわけでしょ。それが今度はいい野菜がとれなくなってきて……、うちらはそういう現実を見てきたから、なんとかしなきゃって思って、しだいに集まった仲間なんです。

 20cmとか深く耕すのは播種直前の仕上げだけで、それ以外の収穫後とか、緑肥の処理とか、堆肥や肥料を振った後とかは全部浅起こし。せいぜい10cm。ロータリで耕盤ができるっていうのは、いつも同じ深さで耕すから、爪で叩かれて耕盤ができるわけですよね? 今のロータリは性能がいいから正確に同じ深さに爪が入っちゃうんです。「残渣は表面で分解させればいい」「草さえ生えなければいい」って考えると、仕上げの耕耘以外は深く起こす必要なんてないわけですよ。プラソイラも持ってますけど、そんなに使わなくなりました。たいした耕盤はできなくなったんだと思います。

エンジン回転数1500でも仕上がりは同じ

早川 サトちゃんの記事で目から鱗だったのは、エンジン回転数を落とす話。ちょうどトラクタを31馬力から51馬力に買い換えた後だったこともあって、「トラクタの馬力をフルに使わなくても仕事はできる」ってのを読んで、なるほどーって思った。

 浅起こしはすでにやってたけど、エンジン回転数を下げていいなんてこれっぽっちも思わなかった。51馬力に2m幅のロータリをくっつけて、31馬力のときと同じようにエンジン2500回転、PTOは1だからロータリは標準の540回転で使ってたんだけど、10cm浅起こしするならそんなに馬力必要ないんだよね。試しにエンジン回転数を1500まで落として、PTOは1のままやってみたら、仕上がりはほとんど変わらなかったからもうビックリ。作業時間はほとんど変わらずに、燃料は以前の半分! そもそも、うちみたいに軟らかい火山灰土の畑でロータリをブン回したところで、燃料の無駄使いになってただけなんだよ。ただ播種前の仕上げはもう少し深く丁寧にやってる。それでもエンジン回転数は1500だから、PTOは2でロータリは450回転くらいかな。

宮岡 エンジン1500回転でPTO1かあ。ずいぶん低回転ですね。うちは38馬力で1.8m幅のロータリだけど、通常の浅起こしも、仕上げの深起こしもエンジン1800〜2000回転でPTО2。飯野さんは?

飯野 俺のは28馬力で1.7m幅のロータリだから、浅起こしの時はPTOは2でもいけるけど、仕上げ(深起こし)はPTO1じゃないと苦しいかな。エンジン回転数は浅起こしでも仕上げでもめいっぱいの2500。

 うちら「仕上げ以外は浅起こし」って共通点はあるけど、結構やり方違うんだなー。せっかくだから、みんなでロータリがけやってみない?

飯野さん
飯野さん

みんなでロータリ耕耘チェック

 早速、いつもの浅起こしと、播種直前の仕上げの深起こしの2通りの耕耘を、各自にやってもらった。

飯野 小さいトラクタで、以前はPTOは1じゃないと無理だったけど、浅起こしで負荷が減ってPTO2が使えるようになったし、車速も速くなった。『現代農業』を参考にエンジン回転数を1800くらいまで落として走行ギアを上げてみたら、たしかにうまくいったんだけど、なんだか音が静かで……やっぱりエンジンは回したほうがいいように思えて2500回転に戻しちゃった。それでも車速を速くできたおかげで、稼働時間も使う燃料もずいぶん減ったよ。

 20cmの深起こしは、以前と同じでPTO2じゃ苦しいから1。でもそれまでにPTO2でけっこう土は細かくなってるから、仕上げの深起こしは「ほぐす」くらいでOKかな。

飯野さんの耕耘

飯野さんの浅起こし おー、エンジンブン回してんなー
飯野さんの浅起こし 早川さん

トラクタ28馬力 ロータリ幅1.7m
浅起こし
エンジン回転数:2500
PTO:2
車速:主変2‐副変3 時速3.5km

仕上げ
エンジン回転数:2500
PTO:1
車速:主変1‐副変3 時速2km

宮岡さん
宮岡さん

宮岡 1800回転だから静かでしょ? PTO2でロータリは650回転くらいかな。鎮圧ローラは、うちみたいなフワフワの火山灰で浅起こしするなら絶対おすすめ! 風の強い川越でも乾燥が防げるし、土ごと発酵には鎮圧で一定水分が必要だからね。

 浅起こしにしてトラクタの稼働時間はずいぶん減った。前は2ha弱で年に150時間だったのが、今は3.7haでも120時間くらい。

宮岡さんの耕耘

宮岡さんの浅起こし。ロータリ後部についているのが鎮圧ローラ
宮岡さんの浅起こし。ロータリ後部についているのが鎮圧ローラ

トラクタ38馬力 ロータリ幅1.8m
浅起こし
エンジン回転数:1800
PTO:2
車速:高速‐8 時速3.5km

仕上げ
エンジン回転数:2000
PTO:2
高速‐2 時速1.5km

早川さん
早川さん

早川 このくらいのゴロゴロだったら全然気にしないレベルだよ。だって収穫後の一発目から細かくならなくても、肥料振ったらもう一回PTO1で浅起こし、播種前に仕上げでPTO2の深起こし、時間置いて3回も入れればかなり細かくなるから問題ない。播種は管理機のシーダーを使うから、管理機のロータリでゴロ土は下層に入って、細かい土が表面に上がってくる。そのほうが発芽いいし、排水性もいい。トラクタにはなるべく仕事させたくないんだよね。51馬力のトラクタで、40馬力程度の仕事ができれば十分って感じでやってる。

早川さんの耕耘

飯野さん
飯野さん
早川さんの耕耘
早川さんの浅起こし跡。場所によって卵大のゴロ土もある
早川さんの浅起こし跡。場所によって卵大のゴロ土もある

トラクタ51馬力 ロータリ幅2m
浅起こし
エンジン回転数:1500
PTO:1
車速:高速‐5 時速2.9km

仕上げ
エンジン回転数:1500
PTO:2
車速:高速‐3 時速2.1km

飯野さんの浅起こしは10cm。他の人もおおむね10cmだった
飯野さんの浅起こしは10cm。他の人もおおむね10cmだった

うちらの浅起こしは10cm以下

早川 サトちゃんの記事で斬新だったのは、試し掘り!(2011年5月号127ページ) 実際に掘ってみてわかることっていろいろあるんだよね。

宮岡 俺も掘りました。結局、耕深調節ダイヤルいじってても本当の深さってわからないから、いろいろ試し掘りしてみたんです。そしたら運転席に表示される14段階のゲージ1目盛がロータリの2cm相当てことがわかった。あ、これはうちのトラクタの話ね。だからだいたい目盛5で浅起こし、目盛8で仕上げかな。畑の条件で変わるからあとは微調整は必要ですけどね。

飯野さんの浅起こしは10cm。他の人もおおむね10cmだった

浅起こしなら爪が長持ち

飯野 うちは川っぺりに砂利畑と砂利混じりの粘土畑があって爪の減りが早いから、400時間で交換してた。浅起こしにしてからは500時間は使えてるかな。タイヤの後の爪はタイヤが踏み締めた層を叩くから減りが早い。でも浅起こしならタイヤ跡を完全に割らずに表面だけほぐすので減りが遅い。10cmより深くまで硬く鎮圧されたタイヤ跡も、播種直前の深起こし1回でなくなる。

宮岡 うちは今ついてる爪が300時間くらい使ったとこ。今までなら500時間くらいで交換だったけど、浅起こしにしたおかげか、未だに爪の塗装が残ってる。もっと長持ちしそうだよ。

飯野さんのヤンマー純正ロータリの「快適爪」。1カ月前に替えたばかり 宮岡さんのクボタ純正ロータリの「スーパー反転爪」。約300時間使った
飯野さんのヤンマー純正ロータリの「快適爪」。1カ月前に替えたばかり 宮岡さんのクボタ純正ロータリの「スーパー反転爪」。約300時間使った

コースどり談義

図
ロータリがけのコース取りを書いて説明する飯野さん

飯野 ロータリがけのときのコースどりって、みんなどうしてる?

早川 うちはたいてい周回耕2周分残して真ん中を隣接耕。最後に外側を2周して出てくる。

飯野 うちってライムソワーで肥料をまく時も、マルチャーでウネ立てする時も、すべての作業がロータリ跡を基準にしてるから、ロータリ跡がとにかく真っすぐに、幅も重なりもピチーっとなってないとイヤなんだよね。だから最初の一本目は道路とかの直線を定規代わりにできる畑の端から耕す。1本目が曲がると全部曲がっちゃうでしょ。早川みたいに外周残して目測のフリーハンドで一本目耕すのはやりたくない。かといって、おやじたちみたいに、ウネっ引き(真っすぐウネを作るためにヒモを張って線を引く)こともやりたくない。

宮岡 うちも飯野さんと同じ。でも本当に真っすぐロータリ跡をつけるのは、播種前の仕上げの時だけ。緑肥をうなったり、収穫後の残渣処理は、早川さんみたいに隣接耕+周回耕。多少曲がっててもいいかな。

飯野さんのコース取り

残耕を最小限に減らす角の処理。マルチ2本分とか、短辺の距離が短い場合の枕地処理にも有効
残耕を最小限に減らす角の処理。マルチ2本分とか、短辺の距離が短い場合の枕地処理にも有効
図

飯野 えーそうなんだ。俺、収穫後からピチッとやりたいね。そうすればその後もずっとロータリ曲がらないし、従業員に仕事の段取り説明しやすいもん。

宮岡 飯野さんの畑は横の道がまっすぐで、畑もまっすぐなところが多いからできるってのもあるでしょ?

飯野 あと、畑の端から始める最初の一本目だけど、向こうまでいったら切り返して隣に入るんじゃなくて、同じラインを角から5mくらいロータリかけて戻ってくる。で、途中で斜めに隣のラインに出る。図で描いたほうがわかるかなー?(上の図参照)

宮岡 あ、うちも同じ。均平板の幅だけ耕さない部分が残るのがいやなんでしょ? うちらは畑を隅々までめいっぱい使う農業だからね。とくに冬の葉ものに必要な小トンネルのパイプが土に刺さらないと、あれが大変。硬いところは鍬使えばいいって人もいるけど、なるべく俺一人でトラクタでやれることはやっちゃって、その分両親には出荷調製とか別の仕事をやっててもらいたいから。

早川 うちの回り方って飯野みたいにバックの回数が多くないでしょ。その分作業時間が短い。肥料だって畑1枚の面積で計算はするけど、ウネの本数で考えたりまでしない。パイプの刺さりやすさも考えないな。大雑把なんですよ(笑)。

飯野 早川みたいに面積があって畑の回転数も多いうちはそうかもしれないけど、うちは直売向けに多品目野菜もやってて、マルチ2本分だけ耕すなんてこともあるから、早さよりはもっと丁寧さが要求されるってことかな。

農閑期がないからこまめなメンテが大事

宮岡 川越は農閑期がないんですよ。トラクタも管理機も1年中動いてる。メンテはまとめてする時間がないから、こまめにやらないと絶対に故障する。エアクリーナーの掃除とか、グリスアップはしょっちゅうだよね。

飯野 それはいえるよね。メンテは「あとでやればいいや」だと、不思議と大事な時に限って壊れるのな。「気がついたらやる」のと、「ついでにやる」のが大事じゃない? グリスガン持ったついでに、あそこもグリスしとこうとか。ちなみにみんな、エンジンオイルの交換の頻度ってどのくらい? うちは30時間に1回やってる。

全員 へーー!

早川 うち100時間に1回。

宮岡 うち80時間に1回。100時間でもマメにやるほうでしょ。飯野さんのトラクタ長持ちするわけだー。

飯野 30時間はやり過ぎかもしれないけど、親父の時からそうしてて、今のが18年目で1750時間乗ってるし、もう1台32年物の現役は2400時間。1度買ったものは、最後まで大事に使いたい性格なんだよね。

内田さん
内田さん

宮岡 オイルも大事だけど、エアクリーナーをこまめに掃除するほうがエンジンは長持ちすると思う。とくにこの辺りは軽くて飛びやすい火山灰土で、砂埃がひどいから。もう1カ月に1回とか、緑肥をうなったり残渣処理したり埃っぽい作業の時はその都度やらないと。

飯野 うちらみたいにトラクタを1年中ガンガン働かせる農業なら、ちょこちょこメンテと、機械に負担かけない浅起こしの両方が揃って、トラクタを100%、120%使いこなせてることになるんじゃないかな。

内田 みんなすごいなー。自分は機械のメンテとかまったく構わないほうだから、機械屋に聞いて「ぼちぼちじゃないですか」っていわれたらやってもらうくらい。

宮岡 まだ1台目だからじゃないですか? 自分でトラクタ買って、2〜3台目になってくると、「あそこをあーしときゃよかった」って考えるようになるかも。

飯野 そうそう。失敗したら勉強になりますから、早く壊して新しいの買ったほうがいいですよ(笑)!

畑での浅起こし うちらの狙いは「土ごと発酵」 飯野さんの話

浅起こしで表層に残したブロッコリー残渣。この後鶏糞を振ってもう一度浅くロータリをかける せん定チップと鶏糞を表層に施して土ごと発酵させた飯野さんの畑。チップに食いついた好気性微生物の菌糸と団粒構造がわかる(*)
浅起こしで表層に残したブロッコリー残渣。この後鶏糞を振ってもう一度浅くロータリをかける せん定チップと鶏糞を表層に施して土ごと発酵させた飯野さんの畑。チップに食いついた好気性微生物の菌糸と団粒構造がわかる(*)

 うちらが浅起こしする一番の狙いは、最初にいったように「土ごと発酵」です。炭素率の高い有機物を、微生物のエサになる鶏糞とかと一緒に浅くすき込むと、好気性微生物が爆発的に増えて団粒化が一気に進みます(詳しくは2005年10月号、2010年10月号など参照)。

 この辺は砂埃がすごくて、とくに3月の彼岸から2〜3週間は5m先が見えなくなるほど。でも団粒化したうちの畑では砂埃が起きにくい。従業員が???になってますが、土を見りゃわかるだろ!て突っ込んでます。

 マルチを張ったり、播種するために、仕上げは深く細かく耕しますが、すぐに電気的にくっついて団粒は戻ります。仕上げ以外は普段から「浅く、有機物は表層で」を合言葉に、土壌団粒の形成と維持に精進してます。

 もちろん燃料半分、機械長持ち、作業短縮! 浅起こしならではのプラスの連鎖。やめられません。

ビデオマーク この取材時に撮影した動画(ロータリの技自慢大会)が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。 http://lib.ruralnet.or.jp/
「グリスはこまめに打つべし」の関連ビデオもあります。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2012年3月号
この記事の掲載号
現代農業 2012年3月号

特集:続 トラクタを120%使いこなす
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現代農業 2011年11月号 現代農業 2011年11月号』農文協 編

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現代農業 2011年05月号 現代農業 2011年05月号』農文協 編

特集:管理機名人になる! [本を詳しく見る]

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