月刊 現代農業2012年12月号 進化するロケットストーブ
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「ロケットストーブはおもしろい」コーナーより

進化するロケットストーブ

広島・石岡敬三

土間に設置した松永さんのロケットストーブ
土間に設置した松永さんのロケットストーブ

 2011年3月11日の東日本大震災を経て、たくさんの人がこれまでの生活スタイルを見直すようになったのではないでしょうか。エネルギーを自給したいと思う人たちが増えてきたように感じます。暖房や料理に使うために手作りできるロケットストーブにたくさんの関心が集まっています。

 今年の3月に、マニュアル本『ロケットストーブ』の改訂版を出版しました。今回はその中に加えた新たな事例をいくつか紹介したいと思います。

築100年の古民家で温かく暮らす

山口県周南市・松永隼人さん

 比較的温暖な気候の山口県ですが、山の上の村に建つ築100年の古民家での暮らしはさすがに寒いようです。原発反対の歌を歌う松永さん(don‐yagoroさん)にとって、冬を乗りきるために原子力や化石燃料に頼らない暖房器具であるロケットストーブを選択するのは当然のことでした。設置場所は家に入ってすぐの所にある土間。この土間からロケットストーブの温かいベンチを踏み段にして部屋に入ることができます。

 松永さんは、基本部分は日本ロケットストーブ普及協会のワークショップを通して近所の仲間と製作しました。その後の仕上げは、生まれたばかりの赤ちゃんの子育てと家のリフォームを同時進行させながら、レンガを上手に使ってとてもすてきなストーブに仕上げられました。ストーブができてからは、近所の人たちが楽しく集う機会が増えたとか。それにしてもいちばん快適な場所に陣取る猫とロケットストーブはよく似合いますね。

 煙突は基本の使用サイズ(直径200mm)ではなく、近所で入手できた直径150mmと100mmの両方を併設。外の煙突から出る煙を見た感じ、150mmのほうだけに煙が流れているようですが、充分使えているそうです。

径の小さい煙突を2本取り付けた お尻が温かいベンチに座る松永さんご夫婦
径の小さい煙突を2本取り付けた お尻が温かいベンチに座る松永さんご夫婦

土間ではなく板の間に設置

山形県川西町・太田毅さん

 日本によくある畳とスギ板の床が接するダイニングキッチンにロケットストーブを設置した太田さん。通常は土間や納屋などに設置することが多いのですが、太田さんはなんと畳に面したダイニング部分に設置されました。

 ダイニングに設置する場合の問題は床とストーブの間の断熱です。太田さんは厚さ12mmのコンパネにCチャンネル(C型の鋼材・60×30mm)を置き、その間にロックウールの断熱材、その上に厚さ3.2mmの鉄板をしいて本体設置、という方法でクリアされています。これは設置場所に悩む人には朗報かもしれませんね(くれぐれも火事には気をつけてくださいね)。

 メインのヒートライザー部分はきれいなステンレスのドラム缶に見えますが、実はステンレスの細い煙突を分解し、数枚を繋ぎ合わせたものだというから驚きです。最近では友達に頼まれいくつか製作中だといいます。今度はどんな物になるか楽しみです。

板の間に設置した太田さんのロケットストーブ。床とストーブの間の断熱に一工夫されている
板の間に設置した太田さんのロケットストーブ。床とストーブの間の断熱に一工夫されている

ペチカとの融合!?進化型のロケットストーブ

長野県上伊那市・片山浩二さん

一見壁のような片山さんのロケットストーブ。
この壁全体が心地よく暖まる
一見壁のような片山さんのロケットストーブ。 この壁全体が心地よく暖まる

 これ(左ページの写真)はロケットストーブの概念を越えたペチカとロケットストーブの融合です。ペチカはロシアの暖房器具で、レンガで作った壁の中に煙道を作り壁全体に蓄熱して部屋を暖めるものですが、片山さんはこのペチカ型ストーブを応用して燃焼部分にロケットストーブのヒートライザーを取り付けられました。

 焚き口に火をつけると、真上に伸びているヒートライザーに熱気が立ち上がり、その熱気がストーブの中のジグザグに組んである通路を通って最後は煙突から出るようになっています。ストーブの中を暖かい空気が細かく巡ることでストーブ全体を暖めるというものです。まさにハイブリッドな暖房器具です。木工家の片山さんは仕上げにも気を使い、レンガの表面に上手に土で化粧をされています。

 前例のない大きくてしっかりした構造物のロケットストーブですが、うまく燃えるかどうかわからない状態で作ろうと思った勇気に驚きです。最初の火入れはさぞかし心配だったと思います。これまでは輸入の薪ストーブを使われていたそうですが、今ではすっかりこのロケットストーブ暖房を使っているそうです。

 今回紹介させていただいたストーブのように、ロケットストーブは自分の家や身の回りにある材料を使いながらどんどん進化発展しています。それも一つの方向だけでなく、さまざまな方向へ進化中です。ロケットストーブに完成された技術はありません。それぞれ作る人によって自分のライフスタイルにあったストーブが生まれてきます。

 さあ、いよいよロケットストーブのシーズン。今年の冬、みなさんのロケットストーブはどんな進化をするか楽しみです。

(広島県府中市)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2012年12月号
この記事の掲載号
現代農業 2012年12月号

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