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農文協のトップ月刊 現代農業2015年2月号>水田超フル活用で稼ぐ

「水田超フル活用で稼ぐ」コーナーより

23品種をフル回転
売り上げ800万円の転作エダマメ直売所

秋田県大仙市・菅原惣平さん

2haの転作田でエダマメを23品種つくる菅原惣平さん(農業共済新聞秋田支局提供)
2haの転作田でエダマメを23品種つくる菅原惣平さん(農業共済新聞秋田支局提供)

転作エダマメで800万円!

 ダイズよりは金になるだろうと思って始めた転作エダマメだった。トマトやピーマンと違って面積もこなせるし、カボチャのように育苗しなくてもいい。実際やってみても、マルチャーで15cmほどの高ウネを立てて黒マルチでカバーしておけば、ちょっとやそっとの雨では湿害にも遭わなかった。だが当時は、「転作をこなして、田んぼを荒らさない」という考え。ときにはウネ間をうんと広げて、タネ代をケチったりもしていた。

 ――10年前の菅原惣平さん(61歳)。その頃は、まさか転作エダマメが自分の経営の柱になるなんて思っていなかったのだ。

 転機は8年前。夕方、インターホンが鳴って出てみると「エダマメをわけてほしい」と知らない人が言う。通勤途中、エダマメを選別する車庫の前に積み上げられた残渣を見つけて、声をかけてきたらしい。当時は全量農協出しだったので、自家用のものをわけてあげた。

 まさか、自分のエダマメをほしがる人がいるなんて……。その年はとりあえず、車庫のシャッターを開けておいたり、家の前に手描きの看板を立てたりして、さりげなくアピールしてみた。そして翌年にはエダマメ専門の直売所として車庫を改装。幹線道路に面した好立地も手伝って、アッという間にお客さんは増えていった。

 今やすっかり、自他ともに認めるエダマメの人である。開店直後は直売3割、農協7割の割合だったが、今は直売所が9割だ。1日に訪れるお客さんは平均80人。県外からも100ケース(200kg)の注文があるし、エダマメのお客さんがほしがるので米の直売も始める始末。

 やがて4.5haの米の収入を追い抜き、2014年はついにエダマメの売り上げが800万円! これまでは1.5haの転作田と50aの畑でエダマメをつくっていたが、2015年はもう1haほど田んぼや畑を借りて、秋田市に2店舗目を構える作戦だ。

 快進撃の続く、「ソウヘイのえだまめや」にお邪魔した。

旬の味を伝えたいから23品種

 直売所の壁には手描きのエダマメの品種表が貼ってあった。菅原さんのエダマメは「少量多品種」栽培。3〜5日刻みで新しい品種が登場する。

「俺、エダマメの『旬の味』を伝えたいと思ってやってきたのよ」

 菅原さんが言う「旬の味」とは、青豆(白ダイズと青ダイズ)、ハーフ豆(茶豆風味の青豆)、茶豆、黒豆とそれぞれ味が違い、品種の早晩によっても甘みやコクが変わる、ということらしい。人気品種はなるべく多く播くようにしているが、一作の収穫適期は2〜3日。4回にわけて播種しても、同じ品種は10日前後しか出せない。目当てのものが売り切れでも、お客さんが好みのものを選べるように、様々な品種を揃えてきた。

2014年の品種構成

時期青豆ハーフ豆茶豆黒豆
極早生(7月)一力
あまおとめ
莢音
元気娘
早生(8月〜盆前)夏の声おつな姫福成快豆黒頭巾
中生(盆過ぎ〜9月)サヤムスメ
いきなまる
ゆかた娘
あきたさやか
青雫
湯あがり娘越後ハニー
晩酌茶豆
たんくろう
晩生(9〜10月)秘伝
一人娘
秋田香り五葉
雪音
越後ハニー
丹波黒

太字がメインの品種で4〜8リットルのタネを播く。他は1〜2リットル(1リットルで3〜4a播ける)。収量をとるために、極早生が18cm、早生〜中生が23cm、晩生が30cmの千鳥播き

 ▼極早生(7月)

品種のお品書き
品種のお品書き

 7月中旬。4月中旬に播種した極早生を皮切りに、エダマメ直売所がオープンする。そこから約80日間、盆を除いて休みなく営業。忙しい毎日が始まる。

 極早生は「その年最初に食べる地場産エダマメ」。同時期に関東から来る「くだりマメ(早出しエダマメ)」に負けたくないから、力が入る。寒い秋田では、遅霜を避けるためにハウスの中に置いた木箱に播く「伏せ込み(育苗)」をしないといけないが、この時期は逃せない。

 極早生は一力(カネコ、種苗メーカーの連絡先は296ページ)が主役。以前つくっていた極早生のグリーン75よりも甘みが強く、メインの座を奪った実力派品種。それと一緒に店頭に並べるのが莢音(雪印)だ。マメの甘みは一力にはかなわないが、より大莢、大粒で華がある。「食べごたえ」を求める人が買っていくそうだ。

「お客さんが選べるようにどの時期も2品種以上は揃えたい」

 品種構成は、お客さんの評判に合わせて毎年進化する。実験的につくったあまおとめ(アサヒ農園)は一力よりも甘みが強いと評判なうえ、豊産。メインの一力も安泰ではない。

 ▼早生(8月上旬〜盆前)

 イベントも多く、ビールがほしくなる盆前は、エダマメのかき入れどき。

 お客さんから「姫」と呼ばれて愛されているおつな姫(サカタ)が大活躍する。これは「その年に初めて出るハーフ豆」。ハーフ豆とは、莢はきれいな緑色なのに、茶豆独特の香りがする「茶豆風味」の青豆のことだ。同じような品種の湯あがり娘(カネコ)が待ちきれない人にはこれを勧める。

 だけど、ハーフ豆だけではおもしろくない。3年前からは、黒豆では珍しい早生の快豆黒頭巾(タキイ)が、コクのある黒豆好きの心も掴んでくれる。

 ▼中生(盆明け〜9月)

朝の風景。前日夕方に株ごと収穫したエダマメを近所の母ちゃん5〜6人が手もぎし、タオルで拭いてていねいに袋詰め。脱莢機にかけると、莢に傷が付いたり毛が抜けて鮮度が落ちるから使わない
朝の風景。前日夕方に株ごと収穫したエダマメを近所の母ちゃん5〜6人が手もぎし、タオルで拭いてていねいに袋詰め。脱莢機にかけると、莢に傷が付いたり毛が抜けて鮮度が落ちるから使わない

 農協出しの頃は、盆を過ぎると、エダマメの市場価格はぐんと下がったが、直売所では値下げはいっさいしない。

 人気の湯あがり娘がメインになるが、「それだと道の駅と一緒」。その年、最初の茶豆福成(タキイ)と、黒豆のたんくろう(丸種)で売り場を彩り、菅原さんが「別格」と太鼓判を押す晩酌茶豆(武蔵野)と、秘伝並みの甘みを持つ「エダマメらしい、エダマメ」の青雫(雪印)につなぐ。

 ▼晩生(9〜10月)

 秋田香り五葉(秋田県育成)のほか、菅原さんが「湯あがり娘の姉妹」と呼ぶハーフ豆雪音(雪印)、秘伝(佐藤政行種苗、以下佐藤)が主役になる。それ以降は、晩生でじっくり登熟した本当においしい青豆さかな豆(米三)や一人娘(佐藤)がそれらに続き、最後は「黒豆の王様」丹波黒(野口のタネ)がトリを飾る。

 もっとも、晩生は早生や中生の品種を買いそびれた人の予約でほぼ埋まる。特に丹波黒は店頭に並べる余裕もないほど、「1年のシメに」と買っていく人が多い。

いろんなお客さんがいるもんだ

「旬の味」を表現するには、収穫時期も大事だ。極早生なら開花が揃ってから30〜35日後、晩生ならそれより遅く40〜45日後を目安に株を観察し、適宜収穫していく。早生は3日間、晩生は5日間。それくらいのあいだしか、おいしいエダマメにならない……、と、これまでは思っていた。

防曇袋に貼ったラベルに品種名のハンコを押す。その品種のファンを作る
防曇袋に貼ったラベルに品種名のハンコを押す。その品種のファンを作る

「ところがいるんだよ。ちょっと遅れたもののほうが好きな人が」

 そのほうが、マメがやや硬く、濃厚な香りがするので「食べごたえがある」と若い人には人気らしい。特に、茶豆やハーフ豆好きはこの傾向がある。

 いっぽう「ちょっとこれは若莢だよ」と言っても「それがいい」と好む人もいる。「茹で上がりが早い」「やっこいから食べやすい」と年配の人が買ってくれる。

 エダマメ好きにはいろんな人がいて、深い世界があったのだ。

 たかが、エダマメ。されど、エダマメ

 直売所の壁に貼られたソウヘイさんの標語。そこにはこんな深い実感が込められていたのだ。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2015年2月号
この記事の掲載号
現代農業 2015年2月号

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