埼玉県川越市での生きもの調査。金魚網を持ってアゼに並び、採取する
カバーをはずしたモミすり機。ゴムロール幅4インチ、グルメマスターGPS450、サタケ
サトちゃんと、20年前に中古で購入したモミすり機
耕作くん
Uターン就農で11年。サトちゃんに稲作を学んだが、相変わらず失敗が多い
昨年9月号でサトちゃんと一緒に乾燥機の中を探検した耕作くん。
今年はモミすり機の構造を教えてもらいに、サトちゃん宅を訪れた。
モミすり機の掃除って、むずかしいんだよね。ブロワーで飛ばしても、あとからあとからモミクズが出てきてさー。去年は、最初に刈ったもち米の数袋に、一昨年のうるち米が少し混ざっちゃったよ。サトちゃん、モミすり機の掃除って、上手にやる方法ないの?
「乾燥機やモミすり機って、ホントは収穫作業を終えたらすぐに掃除するのがいいんだけど、オレも12月にイタリア旅行に行ったりしてさー、ちゃんとできてないんだよね……。みんなだいたい、お盆の後くらいにようやく掃除するって感じでしょ。
まぁ、ちょうどいいや、この際本格的に掃除してみよう。モミすり機のカバーをとって、素っ裸にしちゃえば、機械の構造もわかっておもしろいよ」
え、サトちゃんもまだ掃除してなかったの? なんかちょっと安心したなー。毎年、徹底的に掃除するわけではないんだ?
「20年くらい前に中古で買ったモミすり機だけど、本格的にバラしたのは3回かな。それで、モミガラを吹き飛ばす羽根を1回交換したね。あと毎年チェックするのは、簡単にメンテナンスできる脱ぷ部のゴムロールとか、Vベルトの交換。接合部のグリスアップ。おおまかなメンテナンス箇所はその辺かな。今日は、一つずつチェックしようと思うけど、その前に耕作くん、モミすり機の構造は知ってるかな?」
いやー、そういうのってあんまり考えないタイプなんだよね。イメージとしては、乾燥機から出た大量のモミが飲み込まれる箱? 大きな音を出してぶるぶる振動してさ、すんごい勢いでモミガラを吹き飛ばしながら、モミを玄米に変身させちゃう。みごとなもんだよねー。
「あちゃ、ホントざっくりな理解だなー。モミすり機って一言でいうけど、じつはモミすりは脱ぷ部っていわれる最初の工程だけなんだ。あとは、搬送部、選別部があって、これらが一つになってできてる。昔でいえば、臼を使ってモミすりして、唐箕(風選)でモミガラを飛ばす。それを万石(篩選)でモミと玄米に選別する。玄米は保管して、モミはもう一度臼に戻す。この作業を農閑期に延々とやってたわけだけど、これが一台でスムーズにできちゃうんだから、すごいもんだよね。じゃあ、まず脱ぷ部から見てみようか」
脱ぷの方法はさすがにオレも知ってるよ。ゴムロールではさみ込んで割るんでしょ。あれ、結構擦り減るのが早いから、3年に1回は交換してもらってるんだよね。
「耕作くんの耕作面積は4町だったよね。それで3年に1回の交換はちょっと早いなー。うちも4町だけど4年に1回だよ。ゴムロールは右と左で回転速度を変えてあるから、モミガラがズリッと破壊されるんだ。だから、ほら、ロールの擦り減り具合が左右で違うでしょ。速度の速い右側のロールのほうが、モミと接触する時間が長くなる分だけ、擦り減りが速いんだよ。だから、途中で1回左右のゴムロールを入れ替えてやるといいよ。
新しいのを取り付けるときにはゴムロールの厚さを見て、内側から1cmのところにマークしておく。そうすれば、交換時期が来たかどうかが一目でわかって便利。たったこれだけで、寿命が延びるし、脱ぷ率も落ちない。ちなみに、オレは交換の1年くらい前から新しいゴムロールを取り寄せるよ。新品をすぐに使うより、1年くらい寝かせておいたほうが、ゴムが熟成して擦り減りスピードも遅れるから」
へー、そうなんだ。いっつも機械屋さん任せだったから、左右の違いまでチェックしてなかったなー。
「それともう一つ。ゴムロールってモミガラをズリッと裂くだけで、たいていはきれいに脱がせられてないんだ。ロールの下にある受け板(鉄板)に落ちたときの衝撃でパラッとモミガラが脱げるわけ。だから、ほら、受け板もだいぶ摩耗してくぼみができてる。これも今回交換しとこう」
2年前に交換したゴムロール。昨年左右を入れ替えたので、高速のほうが擦り減りが少ない
内側から1cmの位置にマークを入れる。遅く削れるほう(低速回転)がマークの位置まできたら、左右を入れ替える
交換後のゴムロール。下に受け板が見えるが、モミガラの衝撃で中央部が摩耗している(矢印)
取材時に撮影した動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。
この記事の掲載号
『現代農業 2017年9月号』
巻頭特集:夏の石灰欠乏に挑む |