月刊 現代農業
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「スピード作業機で耕耘新時代」コーナーより

高速で粗く起こす
スタブルカルチってどんな作業機?

巻頭写真

むらに新しい作業機がやってきた!
スタブルカルチ、パワーハロー……
スピード作業で効率アップ、
土の団粒を壊さず、
作物の根にもよいらしい。
おっと、ロータリだって負けちゃいない。
なんでもできる万能選手。
高価な作業機を買わなくたって、
使いこなせば、効率・収量・品質アップ。

今回はオレが案内してやろう スタブルカルチで刈り株の残る田んぼを粗耕起。

スタブルカルチで刈り株の残る田んぼを粗耕起。時速4〜8kmで粗く起こしていく(倉持正実撮影、以下Kも)

一定の深さでなめていく

 じゃあ、稲株が残る圃場を粗く耕してくところを見てもらおうか。

 8本の爪(チゼル=鑿)がついてるだろ。鑿で木を削るみたいに土を削っていくんだな。それぞれのチゼルにはウイングもついてるだろ。前列と後列のウイングの幅がきっちり重なるように設計されてるから、例えば18cmの深さにチゼルを入れたら、両脇のウイングできっちりその深さをなめていく。カマボコに包丁を滑らせて板から切り取るようなもんかな。圃場全面に一定の深さでナイフを入れるから、下からの毛管水が途切れる。圃場の乾きも早くなるってもんだ。

これがスタブルカルチだ!

上の画像の機種:スタブルカルチC258EB。作業幅250cm、重量745kg、8本爪、適応トラクタ重量3200〜4800kg(およそ70〜90馬力)、税抜定価85万円(画像提供:スガノ農機)

上の画像の機種:スタブルカルチC258EB。作業幅250cm、重量745kg、8本爪、適応トラクタ重量3200〜4800kg(およそ70〜90馬力)、税抜定価85万円(画像提供:スガノ農機)

高速で引っ張って粗耕起

 本場のヨーロッパでスタブルカルチっていったら、その名のとおり刈り株(スタブル)を処理するための作業機なんだよ。プラウで土を深く反転して刈り株とか残渣を下層に入れるだろ。でも、生のまま反転すると、空気の少ない下層では分解が進まない。だから、いったんスタブルカルチをかけて刈り株や残渣を土にまぶす。その後にプラウで反転すれば、分解がスムーズに進んで、有機物循環がうまくいくってわけ。

6本の爪で起こした土塊を均しタイン(オプション)で崩しつつ、カゴローラーで割っていく(K)

6本の爪で起こした土塊を均しタイン(オプション)で崩しつつ、カゴローラーで割っていく(K)

Pチゼルのひねりで反転性を高める。粘土質の圃場などでは、カットナイフ(オプション)で浮き上がった土塊を真っ二つに切ることもできる

Pチゼルのひねりで反転性を高める。粘土質の圃場などでは、カットナイフ(オプション)で浮き上がった土塊を真っ二つに切ることもできる

 ただし、日本では刈り株処理というよりも、高速で粗耕起(荒起こし)するために使われてるな。ロータリみたいに動力で爪が回転するわけではなく、ただ引っ張られるだけだから、重くて牽引力のあるトラクタが必要だけど、とにかく高速で作業できちまうから、面積が増えてる農家にはありがたがられるよ。

浅くなった作土層を回復

 スガノ農機さんでスタブルカルチが爆発的に売れるようになったのは、Pチゼルっていうひねりが入った板をつけるようになってからだそうだ。これで土の反転性が高まったことで「田んぼの荒起こしに使える」って農家が感じたんだろう。プラウほどの反転性はないが、よく見ると前列と後列でひねりが逆になっているだろ。左右両方にひねられてるから、プラウみたいに土を片側に寄せるってこともない。

 それに水田農家ってのはさぁ、冬の間に雑草を生やすのが嫌で、ロータリを3回も4回もかけたりするだろ。スタブルカルチをかけて土を乾かしておけば、ロータリで砕土するのは1回で済んじゃうよ。

 そもそもロータリで何回も田んぼに入ると、細かく砕土されて見た目はきれいだけど、タイヤの踏圧とか、爪で叩かれて土が練られちまう。さらに、代かき作業でも踏んだり練ったりするから、作土層が浅くなってネリネリ状の耕盤層が増えていくみたいだな。ネリネリの層の下から爪を入れれば、イネの根張りも改善するぜ。

いろいろいるぞ! スタブルカルチの仲間たち

チゼルプラウ (写真提供:石村鉄工)

チゼルプラウ (写真提供:石村鉄工)
耕盤を粗く削って、圃場の乾きをよくする。ウイングがついておらず、全面耕起ではなく部分耕起。また、耕深も深め(30〜40cm程度)で、スピードの速いプラソイラ的にも使える。
チゼルプラウの名は、爪で引っ掻いて粗耕起する作業機の総称として用いられることもある。

ヘビーカルチ (写真提供:石村鉄工)

ヘビーカルチ (写真提供:石村鉄工)
ウイング付きの全面耕起。スタブルカルチよりも浅く10〜15cmを削って整地・砕土。30馬力から引けるものもあるが、スピードが速いほど砕土効果も高まる。ヘビーカルチの名は、石村鉄工の商品名。

スピードカルチ (写真提供:石村鉄工)

スピードカルチ (写真提供:ニプロ)
ニプロが出しているスタブルカルチ。土が硬い圃場でも、爪のささり込みがよい。スピードカルチの名は、ニプロの商品名。

 この取材時に撮影した動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2018年3月号
この記事の掲載号
現代農業 2018年3月号

特集:耕耘新時代 ロータリ&スピード作業機
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