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台風襲来の直前。防鳥ネットを張ってネギの倒伏を防止(83ページ、写真提供:モリタネ)

山採りキノコのシーズンがやってきた。
もっと身近に、畑も庭先もキノコで埋め尽くして、
直売所で手軽に稼ぎたい。
使い終わった廃菌床は土にも抜群だ。

ナメコ

【滑子】

◯ ぬるぬる食材の王者。天然物はとくにぬめりが強い。ニオイにクセがないからシイタケ嫌いにも人気

◯ 腐生菌。多くの広葉樹はもちろん、スギやヒノキ、カラマツの間伐材も原木に使える

◯ シイタケよりも湿った場所が好き

短木栽培1年目のナメコ
(山形県最上総合支庁提供)

その年の秋から収穫できる
ナメコの短木栽培

山形・小野喜栄

菌回りも収穫も早い

 真室川町という田舎で楽しく暮らすうえで、大自然を使わなくては損をしている気になります。身近に里山がありましたので、「真室川キノコ山菜研究会」を立ち上げました。近代文明だらけの生活とは違った生き方として、少年、少女だった頃のように里山で遊ぼうとしているグループです。

 研究会の活動として原木ナメコのオーナー制を行ない、「短木栽培」にも取り組んでいます。ナメコは普通は植菌して2〜3年目から収穫しますが、原木を短く切る分、菌が一気に回り、春に接種してその年の秋に採ることもできます。どなたでも簡単にできるものなので紹介したいと思います。

筆者。オーナー制キノコ園に取り組む(2018年11月号参照) (赤松富仁撮影、以下Aも)

短木栽培のやり方

▼長さ30cmに玉切り

 原木はナラの木などを普通は90cmほどに玉切りしますが、短木の場合は字のごとく、短く30cmに切ります。

種菌を練って挟む

 種菌、米ヌカ、オガ粉、水(1:1:3:3)を混ぜて練り合わせます。水分は手でやや強くにぎった時、指の間から水が出てくる程度とします。

 30cmの原木をさらに半分に玉切りし、切った面を上にして置き、片方に種菌を塗ります。種菌をサンドするようにもう片方を重ねて1個の原木とします。玉切りする時、切れ目にチョークなどで印を入れておくと、上下を戻しやすくなります。

 種菌を塗る際、面の外側にやや多めに盛るのがポイント。面を合わせた時にぴったり密着させるためです。

また印を合わせたら、種菌を挟んだ部分をガムテープでぐるぐる巻きにして雑菌が入らないように固定します。さらにヒモで上下を十文字に結ぶと安定し、運びやすくもなります。

林床に重ねて仮伏せ

 普通の原木栽培のように、林床などに重ねて寒冷紗をかけて仮伏せとします。ナメコは、シイタケなどよりも湿度の多い所で発生しますので、湿り気がある、とくに朝霧などが出る場所を選ぶなど、十分に気を付けてください。

 7月頃、ホダ木は木口に白い菌糸が出てきているようであれば、菌が回った証拠なので完成です。

本伏せは地面に接着

 本伏せでは、ヒモをとって上下を外し、種菌の面が上になるよう地面に立てて置きます。土面を少し掘って、作業しやすい間隔で並べ、土を戻して固定します。土跳ねしないように周りに落ち葉を敷くなど工夫してください。

 あとは収穫を待つだけ。発生は、菌の種類によって違いますが、気温が10℃以下の日が続いてからです。

ホダ木作りの材料は種菌、米ヌカ、オガ粉、水、ガムテープ、ヒモ、使い捨て手袋(介護用)など。手袋は種菌を練る時、雑菌が入らないように使う。ホダ木作りは雑菌との戦いだ

種菌とオガ粉、米ヌカ、水を練ったものを、15cmに玉切りした原木で挟み、ガムテープとヒモで固定する

仮伏せ。固定したまま、積み重ねて寒冷紗をかけておく。場所は地面に湿り気があって、かつ水はけと風通しのよい山中。広葉樹林でもよいが、針葉樹林のほうが木陰が一定で、湿度も保たれるように感じる(A)

乾燥と水はけに注意

 短木はホダ木が扱いやすく、菌回りも早くて収穫が早いことが利点です。雑菌の混入も比較的少ないように思われます。ホダ木は、秋に仕込むより、春(なるべくなら雑菌が少ない早い時期)に仕込んだほうが菌の回りがよいでしょう。

 ただしホダ木の寿命は、普通の原木が5〜6年もつのに比べてずっと短く、2〜3年になってしまいます。

 原木が短い分、乾燥もしやすいので、十分注意してください。逆に水分が多すぎてもよくないので、水はけが悪い場所は避けることです。このことが後々、ナメコの発生の良し悪しにつながるようです。

 日頃より温湿度に気を配ってホダ木を覗いてあげれば、菌は順調に伸び、秋にはホダ場一面にナメコが発生する光景を目にできるでしょう。

 普通の栽培より多少手間はかかりますが、道具をさほど必要としないので誰でも取り組めます。秋を楽しみに頑張りましょう。

真室川キノコ山菜研究会のナメコ短木栽培(露地)

本伏せ。植菌した面を上にして地面に立てて置く。写真は2年目の様子。木口には白い菌糸が見える。場所は仮伏せと同じでよい。少し間隔を開けたほうが菌の生長が旺盛になるし、収穫作業もしやすい(A)

(山形県真室川町・真室川キノコ山菜研究会)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2018年9月号
この記事の掲載号
現代農業 2018年9月号

特集:秋、キノコにわくわく
稲作:モミすりスピードを上げる/野菜:転作タマネギ6tどり/果樹:大玉・多収は秋のせん定から/畜産:子牛が変わるエサのやり方/機械・道具の盗難対策/暮らし:ナスジャムのもっと上手なつくり方/炊飯器でマタタビジュース ほか。 [本を詳しく見る]

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きのこの絵本

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