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「ハロウィン需要を ねらう」コーナーより

近年は日本でも
大盛り上がりのハロウィン。
農家にとっては、新たな販路を拓く
絶好のチャンスだ。

産地で売り上げ5000万円突破
ハロウィンカボチャが大ブレイク

北海道・吉澤 淳

遮光ネットとブルーシートを被せたハウスで、ハロウィンカボチャを乾かす

遮光ネットとブルーシートを被せたハウスで、ハロウィンカボチャを乾かす

ハロウィンカボチャを12品種栽培

 わが家は北海道中西部にある秩父別町で水稲14ha、ソバ2.5ha、おもちゃカボチャ(ハロウィンの観賞用カボチャ)1.2haを栽培しています。水稲とソバは私が、カボチャは主に妻が担当しており、繁忙期を除き2人で作業しています。

 おもちゃカボチャは今年12品種3000本を作付けており、近郊の1市6町で構成する北空知広域農業協同組合連合会花き事業部(以下、北空知広域連)を通じて全国の花き市場に出荷されます。

 北空知広域連は管内の花生産者組織が1998年に合併したことを受けて、集出荷施設を整備し一元販売をするようになりました。現在の販売額はスターチス(シニュアータ、ハイブリッド)を中心に年間約15億円。北海道有数の花産地です。

筆者と妻の真由美

筆者と妻の真由美

生産者も出荷量もうなぎのぼり

 おもちゃカボチャは広域出荷を始めた約20年前、関東の大手花き卸よりハロウィン需要を見込んだ生産の依頼があり、わが家も二十数年前から生食用のカボチャをつくっていた関係で声がかかりました。最初は4、5名でのスタートでした。

 その後、徐々に需要が高まり、関東の巨大テーマパークでハロウィンのイベントを行なうようになってから認知度が急上昇し、生産者も出荷量も順調に増えていきました。さらに、ここ数年はクリスマス前のイベントとして若者を中心に一気にブレイク。おもちゃカボチャは生産者70名、販売額5000万円を超える品目に成長しました。

直径5〜7cmの「ミニパンプキン」を箱詰めしたところ。箱もハロウィンらしいデザイン

直径5〜7cmの「ミニパンプキン」を箱詰めしたところ。箱もハロウィンらしいデザイン

見た目をよくするために

 おもちゃカボチャも食用のカボチャも栽培の基本は同じですが、食用が「味」を第一に求められるのに対し、おもちゃカボチャは観賞用ですから当然「見た目(外観)」が求められます。

 そのため栽培にあたっては、次の点に気をつけています(ほとんど妻が作業していますが……)。

・擦り傷防止のため、つるをピンで固定する。

・色むら、傷防止のため、大玉と中玉は果実に皿を敷く。

・果実が日焼けしないように株間やウネ間を狭めて、葉が重なるようにする。特につるがあまり伸びない品種は密植する。

・病害虫防除を徹底する。

・品種特有の色が出てから収穫する。ただし、完熟させないほうがいい場合もある。白系の品種は色が悪くなる、食用にも向く品種(プッチィーニなど)は糖度が上がり貯蔵性が悪くなる、また、大玉品種のなかにはヘタのまわりに亀裂が入りやすいものもあるので、これらは収穫を遅らせない。

・収穫後は速やかに泥を落とし風乾する。水洗いするときはタワシやスポンジでこすり、溝やヘタのまわりの窪みには歯ブラシを使う。

・腐敗を防ぐため、風乾場で扇風機をまわし、換気に努める。

 さらに出荷にあたっては、次の点を心がけています。

・十分な風乾期間をとり(大玉は10日、小玉は1週間以上)、腐敗果のチェックを徹底する。

・目揃い会で示された出荷規格を順守する。

・ミックスして箱詰めするときは、色と形のバリエーションに気を付ける。

 こうやって書き出してみると改めて作業の大変さを感じます。

ハロウィンカボチャの種類

オータムオレンジ直径25〜30cmの大玉で、ジャックオーランタン(次ページ)用

オータムオレンジ
直径25〜30cmの大玉で、ジャックオーランタン(次ページ)用

スノーボール
直径約20cmの中玉。白くて、ころんとしている

スノーボール
直径約20cmの中玉。白くて、ころんとしている

スイートタンブリング
直径約10cmの小玉。クリーム色に濃い緑色のストライプ

スイートタンブリング
直径約10cmの小玉。クリーム色に濃い緑色のストライプ

ベイビーベア
直径約20cmの中玉。濃いオレンジ色で、皮がかたい

ベイビーベア
直径約20cmの中玉。濃いオレンジ色で、皮がかたい

フーリガン
直径約10cmの小玉。クリーム色にオレンジ色のストライプ

フーリガン
直径約10cmの小玉。クリーム色にオレンジ色のストライプ

ギャラクシーオブスターズ
直径3〜10cmの小玉。星形でヘタが長い

ギャラクシーオブスターズ
直径3〜10cmの小玉。星形でヘタが長い

食用カボチャより収益が上がる

 わが家では2年前に食用カボチャの生産をやめ、おもちゃカボチャに専念しました。その理由は、第一に果実が小さくて軽いため体への負担が少ないことです。大玉の収穫は私が、中玉と小玉の収穫は妻が担当しています。

 また、おもちゃカボチャは1果あたりの単価が安いのですが、ある程度収量が見込めるので、収益性は今のところ食用のカボチャを上回っています。基本的に1株からつるを3本伸ばし、大玉で3果(つる1本に1果)、小玉で15果以上(つる1本に5〜6果)とっています。

 収穫したカボチャのなかには期待した色や形でないものもありますが、それはそれでバリエーションの一つとして販売できます。無駄が少ないこともメリットだと思います。

カボチャをくり抜いてつくった提灯「ジャックオーランタン」

カボチャをくり抜いてつくった提灯「ジャックオーランタン」

子供も大人も楽しそう

 おもちゃカボチャはわが家の経営の大きな柱となっています。そのため普段は作業の忙しさと大変さばかりを感じてしまう毎日ですが、毎年10月に本町で開催しているイベントに出店させていただき、ジャックオーランタン(写真)の製作体験を行なっています。毎回、子供から大人まで体験している皆さんの本当に楽しそうな姿を見て、自分たちがつくったものが人に喜んでもらえていることを実感し、元気をいただいています。

 ハロウィンでのおもちゃカボチャの需要は続きそうですが、現在のイベントなどでのディスプレイ中心の需要から、個々の家庭での需要を増やしていくことが安定した生産を継続することになると思います。今後も産地の多くの仲間とともに、皆さんにもっと喜んでいただけるカボチャの生産に努めてまいります。

 この記事を読んでいただいた皆さんもご自分で楽しむところから始めてはいかがでしょうか? ひょっとするとその先にビジネスチャンスが……。

(北海道秩父別町)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2018年11月号
この記事の掲載号
現代農業 2018年11月号

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