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「稲作・水田活用」コーナーより

水の力で前進しながら泥を掻き出していく排泥器

水の力で前進しながら泥を掻き出していく排泥器

水路の泥が勝手に消えるアイデア排泥器

兵庫県三田市・下良 勉さん

 定年退職農家の下良勉さん、以前から水路にたまる泥に困っていたそうだ。水路脇の法面が雨風やイノシシなどで崩されるのが原因とのこと。

「春は溝さらいをするけど、この水路だけで2000mあるんです。農家10戸ほどでは丸1日やってもやりきれない。そのあと水路が泥でいっぱいになると、ポンプで揚げた用水の6、7割がオーバーフローして途中の田んぼに入ったりする。下の田んぼに水を引くのに2倍も3倍も時間がかかってたんです。若い子は溝さらいなんかせんし、私らも70歳を過ぎて体力が落ちてくるし、なんとかならんかなと……」


底の泥を削りながら前進

 そこで考案したのが、身の回りのものを利用した排泥器だ。原理はいたって簡単。重石をつけた容器を水路に置いたまま水を流すと、容器が底の泥を削りながら下流へと進む。泥は泥水になって流されていく。

 途中、容器が泥でつっかえて前に進まなくなっても、堰き止められた水が落差で流れ落ち、小さな渦をつくる。底に溜まった泥を少しずつ巻き上げ、流していく。泥の量が減ると、また容器が動き出す。

 「一晩放っておけば、勝手に動き出しますわ」

 用水の流れが動力となって排泥器を前進させつつ、泥を水とともに流してしまうのだ(小石が多い場合は取り除く必要あり)。

バケツ利用の排泥器

丸底の水路用にバケツを利用。寸切りボルトで2個のバケツを貫通させ、重石として廃物のバーベルをはめ込んだ

丸底の水路用にバケツを利用。寸切りボルトで2個のバケツを貫通させ、重石として廃物のバーベルをはめ込んだ



排泥器を考案した下良勉さん(73歳)

排泥器を考案した下良勉さん(73歳)

道具箱利用の排泥器

四角い底の水路用。道具箱の前面に板をビス留めしている。底は2本の塩ビパイプがソリの役目を果たして進む

四角い底の水路用。道具箱の前面に板をビス留めしている。底は2本の塩ビパイプがソリの役目を果たして進む

泥でつっかえて前進しなくなっても、水流の落差で底の泥が巻き上げられ、しばらくすると進み出す

泥でつっかえて前進しなくなっても、水流の落差で底の泥が巻き上げられ、しばらくすると進み出す

安上がりでシンプル

 排泥器に使う容器は水路にぴったり合うものなら何でもOK。底が四角い水路のときは道具箱など四角いもの。底が丸いときはバケツ。水路の幅と深さに合わせて容器の大きさを変え、重石で容器が浮かないようにするだけ。本当に安上がりでシンプルな仕組みだが、やっかいな堆積物は勝手に流されてしまう。まさしく「魔法の青いバケツ」。なんで今まで誰も思いつかなかったのだろう?

 ただし、下良さん、心配ごとが一つあるようだ。

「滋賀の農家がみんなで作りだしたら、泥水がみな琵琶湖に流れ着いてしまう。滋賀県知事に怒られへんかな?」

 溝さらいも大切な作業であることに変わりはない。

取材時の動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。「編集部取材ビデオ」から。

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現代農業 2019年7月号
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現代農業 2019年7月号

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