水稲育苗器と除湿機で作った乾燥機でカビ問題を克服
広島・松原 徹
筆者(74歳)(編)
干し柿のカビをなんとかしたい
わが家には昔から渋柿の樹があり、毎年10〜11月にかけて自家用に干し柿を作って楽しんでいます。ただ、乾燥に適したよい天気の日は続きません。すると、どうしてもカビが出てしまい困っていました。
そこで、次のような乾燥機を作って、干し柿作りに使ってみたところ、カビを出さずに作れたので紹介します。
育苗器と除湿機を 組み合わせるだけ
乾燥機の作り方は次のとおりです。
まず、使わなくなった水稲育苗器(縦1m×横1・3m×高さ1・6m)を用意し、上半分の育苗棚を利用して育苗器の最上部に、干し柿を吊るすためのパイプ(直径22o)を横に渡します。パイプは廃材です。
育苗器の外側に、外気が入らないようビニールを張ります。これは新しいものを購入しました。透明のビニールなどを張るだけでもよいと思います。
育苗器の下には除湿機を置き、これで乾燥させます。
除湿機には集水タンクがついていて、動かしていると次第にタンクに水が溜まり、水量がある程度まで増えると自動で電源が切れるようになっています。除湿機を使って干し柿を乾燥させると、最初の数日間はカキからかなりの水分が出るので、すぐに水が溜まって電源が切れてしまいます。そこで、あらかじめ集水タンクの中ほどに穴を開け、ビニールホースをつないで水を室外に出すようにしました。これで終日運転が可能になります。
さらに「おんどとり」という計測器を設置して、育苗器の中の温度と湿度も計れるようにしました。実際にはカキの様子を直接見て除湿機を操作しますが、パソコンを立ち上げれば計測したデータを後で確認できるので、便利です。
自作乾燥機で しっかり乾燥
干し柿の作り方は次のとおりです。
自作乾燥機。乾燥させるときは、まわりに張ったビニールを閉じておく(編)
おんどとり(矢印)で中の気温、湿度を簡単に確認できる(編)
▼皮をむいてヒモで結ぶ
カキの皮をむき、ヒモ1本に6〜8個結びます。できるだけ均一に乾燥するよう、カキ同士の間隔を揃えたい。そこで、丸い穴を等間隔に開けた板にカキを並べて結んでいます。乾燥する前のカキはかなり重いのですが、これならラクにきれいに結べます。
ヒモの端にはトマト栽培で使う誘引クリップを結び付けます。乾燥機に吊るす際、クリップでパイプにとめれば、熱湯消毒やカキの移動でヒモを外すときに簡単に外せます。
カキをヒモに結ぶときに使う板。等間隔に開けた穴にカキを並べてヒモに結ぶ
▼熱湯消毒して育苗機に吊るす
カキをヒモに結び終えたら、熱湯に一度くぐらせ、表面にカビがこないように消毒します。その後水気をよく切ってから、育苗器の上部に吊るし、除湿機の電源を入れます。このとき、カキが除湿機より上にくるように吊るさないと乾燥ムラができてしまいます。
▼乾燥させる
あとは乾燥させていくだけですが、晴れた日は乾燥機に張ったビニールを外して外気に当てます。可能ならヒモを一度外し、日当たりも風通しもよい屋外に出せるとなおよい。夕方は忘れずに乾燥機へ戻し、除湿機の電源を入れ、夜間も乾燥させます。
雨や曇りの日は終日除湿機をかけて乾燥させます。カキがほどよく乾くまでこの繰り返しです。
▼取り出して冷凍保存
乾燥を続けていると干し柿はいくらでも硬くなっていくので、好みの硬さになったところで取り出します。
そのまま、すぐに食べられますが、たくさん作ったときは、1〜2個ずつラップで包み、フリーザーバッグなどに入れて冷凍庫で保存します。解凍すれば好きなときに食べられます。
焼酎は最後の手段
自作乾燥機を使っていても、どうしても出し入れが遅れるなどして、稀にカビが出ることがあります。その場合は最後の手段として、35度の焼酎を歯ブラシなどに含ませ、表面に出ているカビをそぎ落としてから、一個ずつ焼酎にさっとつけて拡大を防ぎます。
乾燥機は干し柿以外にも役立つ
自作乾燥機を使って甘柿の百目柿でも試してみましたが、やはりよい干し柿ができました。
その他、干し柿以外にもこの乾燥機はいろいろ利用できます。たとえば、正月のおせち料理に使う黒豆を乾燥させれば甘納豆が作れます。干し納豆もできます。切り干し大根やニンニクの乾燥にも使えます。
高価な野菜乾燥機も売っていますが、リサイクルセンターなどで除湿機だけ数千円で入手できれば、立派な乾燥機が自作できます。
(広島県北広島町)