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イネから学んだリンゴ栽培3
主枝は車枝、側枝は魚の骨状に

福島・薄井勝利

ほぼ樹形が完成した植え付け10年目の樹。1m以内の低い位置で心抜きしており、主幹から5本の主枝が車枝となって出ている(写真はすべて依田賢吾撮影)

わい化栽培を始めたが……

 1970年に減反が始まり、水田を畑地化する義務が課せられ、減反作物としてリンゴのわい化栽培を取り入れました。74年にリンゴジュースの搾り粕から種子をとってタネを播いて台木をつくり、翌年にわい化台を中間台として接ぎ、翌76年にふじの穂木を接いでわい化栽培がスタートしました。

 主幹と側枝、結果枝のみの樹形も当初は戸惑いましたが、なんといっても早期着果が大きな魅力でした。しかし、2×4mの樹間を維持するために強せん定となりがちで、甘みが少なく酸っぱいリンゴしかできません。食味が売りの栽培にはよくありません。間伐をして4×4mの樹間とすることで食味の改善を図ることができ、現在44年目となります。

亜主枝が主枝を弱らせる

 わい化栽培を経験し、これを従来から続けているマルバ樹にも応用しようと考えました。

 主枝は4本仕立てで、そこから亜主枝を立てて、側枝、成り枝という順番で樹形をつくっていましたが、亜主枝を立てると隣の主枝の亜主枝とどこかでぶつかってしまいます。

 また、亜主枝のような太い枝をつけると主枝の力が分散されてしまいます。前号で説明したように、先刈りをせず、主枝と側枝、側枝と結果母枝(成り枝)と、それぞれ枝の太さ(維管束の大きさ)に差をつけることによって、養分を全体に行き渡らせる考えのもとでは、亜主枝は主枝を弱らせる大きな原因となるのです。

あえて車枝の主枝を立てる

 そこで、4本主枝のマルバ樹の場合なら、図1のようにわい化樹が主幹を中心に4方向に4本出ているのだと考えて、亜主枝のない樹形へと切り替えていきました。以前は2m以上の高い位置で主幹の心抜きをし、主枝候補枝を選んでいましたが、現在では植え付け2〜3年目の幼木を1m以下の低い位置で心抜きし、そこから主枝候補枝を選ぶようにしています。したがって、たいていは4本主枝のうち2〜3本が同じ年次から出た兄弟枝で、残りは翌シーズンに出た枝から選ぶことになります(心抜き時に10〜15芽残しておく)。

 同じくらいの高さから出た車枝の主枝が何本も伸びている樹形は、多くのリンゴ農家にとって異様な光景に見えるかもしれません。しかし、あえて車枝の主枝を残すことで、樹勢を落ち着かせ、養分を均一に配分するのです。

 また、主枝の数は制限することなく、空間があれば何本でも自由に臨機応変に立てていきます。一応の目安は、候補枝を6本おいて、実をならせながら10年程度で4本にする形です。

 ただ、亜主枝のない仕立てとはいえ、側枝、成り枝を真横に出せば、これが空間を邪魔し、光合成の障害となります。そこで、斜めと縦方向の空間を有効に使う手立てを考えました。

 

イワシの骨の形に枝をつくる

 

縦の空間を有効に使うために、成り枝は下垂させる

主枝の赤道より下から出た枝を側枝として残し、樹勢を落ち着かせる

 

植え付け2年目で心抜き

 

植え付け2年目の苗のせん定後の姿。主枝候補枝が全方向に6本以上出た(矢印)ので、低い位置で心抜きした(植え付け時に苗の樹勢が弱かったので先刈り実施。2年目からは先刈りしない)

上から見たところ。植え付けた翌年に心抜きした

 

側枝と成り枝はイワシの骨状に

 光合成能力を考えると、イネでは登熟期の葉の枚数が5枚と決まっているため、葉身の長さを長くし、葉鞘を広くして、かつ上位3葉を直立させて下位葉に光を入れることが大切です。リンゴの場合は枝を直立させるわけにはいきません。

 そこで、199ページの図1のように、側枝は魚の骨状に先端に向かって斜め方向に出たものを残します。かつ、樹を暴れさせず、落ち着かせるために、赤道より下から出ている枝とします(図2)。どうしてもこの枝がない場合は横枝を2〜3芽残して切り、次年度に方向を見つけていくのです。また、成り枝は図3のようにイワシの骨の形をイメージして下垂させ、縦の空間を有効活用します。

(福島県須賀川市)

取材時の動画が
ルーラル電子図書館でご覧になれます
「編集部取材ビデオ」から。
https://lib.ruralnet.or.jp/video/

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