月刊 現代農業
ルーラルネットへ ルーラル電子図書館 食と農 学習の広場 田舎の本屋さん

facebook ツイート
稲作・水田活用

無コーティング! ボート散播!? 初冬播種!!??
ラクラク直播最前線

10a20分のラジコンボート直播

鳥取・徳田要介

筆者(67歳)。2019年まで鳥取農試で農業機械を開発し、退職後は稲作を営む。メイン品種は「きぬむすめ」(小倉隆人撮影、以下Oも)

マークは本誌128ページに用語解説あり

動力散布機は重くて辛い

 2016年から湛水直播を続けています。以前は動力散布機を使い、催芽モミを10a5kg播種していましたが、20a以上の田んぼだと種子量が10kgを超し、散布機と合わせると25kg。背負うのが辛くなり、なんとかラクに播種できないものかと悩んでいました。ドローンでの播種も考えましたが、価格が高く免許も必要……。そこで思いついたのが、ラジコンボートに播種機を装着する方法でした。

 当初、ボートの船体はポリカーボネート板を加工して作りましたが、手間がかかりすぎるしスタイリッシュじゃない。そこで、ウインドサーフィンのボードを半分にカットして使うことにしました。次に動力ですが、草刈り機の4サイクルエンジンを加工し、プロペラを装着。田んぼの近くには住宅地がありますが、4サイクルなので騒音が抑えられます。

 実際に水田で播種してみると、強風に流され操縦が難しいことがありました。そこで、ボートの底の真ん中に直進性を確保するプラスチックのガイド(長さ10cm、深さ2cm)を装着したところ、風の影響をある程度防げるようになりました。

ラジコンボート。エンジンと散粒機にもサーボ(自動制御装置)が付いており、信号に応じてスピードや進行方向、散布のオンオフを切り替える。中古品を活用したので約5万円、1週間でできた(O)

 

受信機からサーボに信号が伝わると、サーボが後ろの舵(風を受け進行方向を変える)を動かす。水車の軸は散粒機の散布部分につながっており、回転してかき混ぜることでモミの詰まりを防ぐ(O)

 

除草剤もボートで散布

 2020年、初めてボートを実際の栽培で使ってみました。私個人の田んぼ1.1haの他、4軒から1.4haの播種作業を受託。まずは種モミの準備ですが、散粒機でスムーズにモミが散布できるよう、コーティングはしていません。温湯処理した種子を、播種当日に洗濯機で脱水。10a当たり催芽モミ5kg播種します。

 ボートを座礁させないため、代かき後、播種時まで水深5cmを保ちました。雑草の繁茂やスズメの食害を避けるため、播種後も基本的に湛水状態を保ちます。また、カモの食害を防ぐために、田んぼの外周に防鳥糸を張っていますが、20年は面積が増えて被害が分散されたためか、カモの食害はほとんどありませんでした。

 播種後の除草剤も同じボートで散布します。播種直後に初期除草剤、20日後に中期除草剤を散布。10a当たり20分あれば散布できます。20年の平均反収は485kgとなりました。16年には、ボートこそ使っていませんが、同じ管理方法で反収580kgとれています。

 

6月13日、播種20日後の田んぼ

 

持続可能なイネつくりのために

 初めてボートで播種して一番感じたのは、作業がとてもラクになったということです。操縦には慣れが必要ですが、一度に全部播くのではなく、田んぼ全面を2、3往復させれば、均一に播けると思います。

 国は「スマート農業で機械化し、補助金を出して農業を持続させる」そうですが、現実はどうでしょう? 鳥取では耕作放棄地が増えています。今のイネつくりは、お金がかかりすぎるのです。いったん放棄された土地には雑草が繁茂し、ひどくなると樹木まで生えてしまう。これを食い止めるためには、生産経費の削減が必要不可欠です。

 私が湛水直播を始めたのも、どうしたら持続可能なイネつくりができるか考えた結果です。安いボートで直播できれば、苗を買う、つくる必要がなく、10aで2万円ほど軽減できます。播種時間は10a20分。時間、経費、作業性、どれを見てもいいことばかりです。

(鳥取市)


取材時の動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。「編集部取材ビデオ」から。
http://lib.ruralnet.or.jp/video/

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2021年1月号
この記事の掲載号
現代農業 2021年1月号

特集:農家が教える 免疫力アップ術
無コーティング! ボート散播!? 初冬播種!!?? ラクラク直播☆最前線/環境制御に欠かせない生育診断/縦の枝を生かすカンキツのせん定/イチから知りたい放牧技術/売り上げもさらに伸びーる ひと味違う、農家のもち/コロナだから、もっと人とつながる ほか。 [本を詳しく見る]

田舎の本屋さん 

もどる