「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第19号:特集のねらい
今回の特集は、昨年の本誌8月号(14号)で特集した「直接支払制度をどう活かすか」の第2弾として、「高齢化集落を元気づけるため」の提言と実践事例をお届けします。
「中山間地域等直接支払制度」は3年目を迎えて、「耕作放棄地を出さない」ための集落協定の締結率が8割(対象農地比)に達しているものの、「高齢化率・耕作放棄率の高い地域で取組みが遅れている」(農水省・中間点検)とされています。
本制度の目的である「農業生産の維持を通じて、多面的機能を確保する」ためにも、高齢農家を元気にするための創意工夫が第一に求められています。
「過疎であるということは、それだけ集落にゆかりのある人たちが地区外にたくさんいるということ」(提言(1)・守友裕一氏)だと過疎化を逆手にとった、転出者も含めた都市住民との交流・協働関係の形成により、高齢農家を元気づけている事例が本号にも数多く登場しています。帰省者と住民の交流会を開き、アンケートも行なって集落活動への協力の輪を広げている福島県西会津町出戸集落の取組み、「高齢農業者集団」が少量多品目の栽培を行ない、むらを出た息子たちがやがて「定年帰農」できる条件づくりに励んでいる埼玉県神泉村や高知県土佐山田村の取組みなど。
もちろん高齢農業者だけでなく、集落全員の力を借りなくては本制度の目的は達成できません。高齢化が進みかつ集落協定締結率の高い島根県では、集落営農組織が定着しており、さらにその発展形としての「農事組合法人」も高齢者の生きがいの場として味噌・梅干しなどの加工部門を拡大して集落機能の維持に寄与しています(提言(2)・谷口憲治氏)。
本号第3部で紹介した「農業の多面的機能を増進する活動」も、自然との関わりのなかで育まれる「本当の豊かさ」の「農村から都市への提案」(提言(3)原田津氏)の取組みだと言えましょう。
第4部では、本誌14号で紹介した山口・大分・北海道の先行事例を継続追究し、次なる飛躍をめざす取組みを紹介しています。
本号を「活動への激励」の情報源としてご活用ください。
〈主な内容〉
●提言(1) 高齢化集落を支える地域の支援体制とむらづくり活動
――福島県指定の重点対象地区の2事例から
・・・福島大学経済学部教授 守友裕一/4
●提言(2) 高齢化が進む集落で 協定の締結・集落再生をどう進めたか
――協定締結率の高い島根県を例にして――
・・・島根大学生物資源科学部教授 谷口憲治/12
●提言(3) 都市と農村の関係史をひもとくと中山間地域の未来が見える
・・・原田 津
○旧村単位で「複数集落一協定」 高齢化集落を地域全体で支援
――高齢化率40%の新潟県川西町仙田地区の取組み――
・・・(フリーライター)おおいまちこ
○高齢者が無農薬・減農薬野菜の産直で 「週末に若者が帰る集落づくり」
――高知県土佐山村高川地区と「夢産地とさやま開発公社」――
・・・(農業資源研究会)西村良平/36
○「高齢農業者集団」が少量多品目の高付加価値農業
――子どもたちが安心して「定年帰農」できる条件づくりに励む埼玉県神泉村住居野集落――
・・・(フリーライター)酒井喜久子/42
○耕作放棄の荒地が牛の放牧でみるみる蘇る
――「牛の舌草刈り」の威力を生かす山口県柳井市の取組み――
・・・(フリーライター)種森ひかる/48
△傾斜のきつい遊休農地はヤギの力を借りて復元したら?
――高知県土佐町「嶺北山羊BANK」の取組みからの提案
・・・(農業資源研究会)西村良平/54
◎事務処理を一手に引き受ける支援
△町の発案で専任事務員を配置
・・・大分県直入町経済課課長補佐 柏木良知/56
△営農組合が6協定の共通事務局を担当
・・・岩手県北上市農林部農林課 伊藤一成/58
○農地保全に市民ボランティア 交流から広がるむらづくり――京都府舞鶴市杉山集落(工原謙一)/60
○ホタルが飛び交う里づくり――岐阜県川辺町鹿塩中部集落(桜井直明)/63
○棚田を保全 「ハザかけ米」の販売を――石川県珠洲市真浦集落(室谷道成)/66
○共同の草刈り、コスモス等の作付けで 農村らしい空間に――千葉県三芳村西之谷集落(佐野敏明)/69
○グランドカバープランツによる畦畔法面対策――島根県頓原町とんばら門営農組合(竹山孝治)/72
○「耕作保険方式」で名を馳せた山口県周東町ひよじ地区のその後
・・・(フリーライター)種森ひかる/76
○全国で初めて集落協定を締結した大分県竹田市九重野地区のその後
・・・大分県竹田市議 大塚 広/80
○「自然を活かした酪農王国」をめざす北海道浜中町のその後
・・・北海道浜中町農林課農業振興係長 吉家裕明/86
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