「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第23号:特集のねらい
来年四月から改正食糧法が施行され、米政策改革大綱(昨年十二月農林水産省決定)が描く「需要に見合う、売れる米つくり」「本来あるべき米つくり」を目指して、生産調整はこれまでの生産目標面積配分から米の生産目標数量を配分する方式に移行します。また、これまで全国一律だった転作助成金は廃止され、新たに地域提案対応型の「産地づくり対策」(「産地づくり推進交付金」)が設けられます。そして、その交付の要件として求められているのが、「地域水田農業ビジョン」の策定。そのビジョンには、地域の米つくりや、麦・大豆・飼料作物等転作や畜産飼養を含めた水田利用、米・麦・大豆等農産物の地域独自の販売方針、地域農業の「担い手」などを明確にして盛り込む必要があります。
現在、各地で「水田農業ビジョン」作成へ向けて協議会が設置され、市町村ぐるみで議論が始まっていることと思います。ただ、議論が地域の農業をどうするかになかなか進めないところも目につきます。その原因の一つは、「担い手」をどうするかでは…。そんなとき、ぜひ議論のベースに据えていただきたいのが、渡辺好明農林水産事務次官の提言「地域に根ざしたビジョンづくりの議論を―ベースとなる4つの視点」。なかでも「面積規模自身は最終目標ではありません。生涯所得として地域の他の産業に従事する方と均衡するということが目的です」を、ぜひ共通の認識にしていただきたい。
そのうえで、「水田農業ビジョンの策定に英知の結集を―10項目の策定と実践に全力を傾けよう」(今村奈良臣氏提言)で自らの考えを整理し、自分の経営、地域の農業をどう把握し、どうつめてビジョン化するか。それぞれが自分の案を描き、それを持ち寄って整理したものを基本にタタキ台をつくり、地域の合意を形成しつつ地域農業の将来像を描いて、「地域水田農業ビジョン」を策定したい。単に交付金を受け取るための受け皿づくりではなく、高齢者も女性も、新規参入者もそれぞれがいきいきと活動できる、地域ごとの個性的な暮らしの夢(「地域コミュニティづくり」)を描きたい。
この冬には、県・市町村・各集落で「地域水田農業ビジョンつくり」へ向けて議論が行なわれることになると思いますが、その参考資料・素材として、この特集号をご活用ください。
〈主な内容〉
○地域に根ざしたビジョンづくりの議論を
――ベースとなる4つの視点
・・・渡辺好明農林水産事務次官に聞く/4
○水田農業ビジョンの策定に英知の結集を
――10項目の策定と実践に全力を傾けよう
・・・東京大学名誉教授・JA−IT研究会代表 今村奈良臣/14
○中山間地域の小規模な集落営農の活路
――「NPO型地域再生法人」構想
・・・山形大学農学部教授 楠本雅弘/24
○「担い手」に最新情報を提供し、集落ごとに水田農業ビジョンづくり
・・・岩手県&花巻地区の取組み/32
○「オーダーメイドの米づくり」を増やしていきたい
・・・福岡県・JA筑前あさくらの取組み/40
<カコミ>「売れる米づくり」に取り組んでよかった!
──甘木市・福田ライスセンター理事 松尾彰さん(五四歳)の話/45
○独自の「拡大と集約」で皆が生きる「農業ルネッサンス」
――北海道栗山町の取組み/46
○田園空間博物館整備事業の取組みを わが町の水田農業ビジョンに活かす
――生産者と消費者の関係を楽しみながら深める
・・・宮城県山元町産業経済課・技術補佐兼土地改良係長 寺島一夫/52
○小規模でも山間地域で生きていける農業、米つくり
――島根県邑智郡大和村比敷集落の集落営農組織「ひじきドリーム」
・・・代表理事 西嶋二郎/56
○“牛の舌草刈り”で棚田保全
――各地で広がる畜農連携事例から/60
○イネしかつくれない強湿田で稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)の生産
――千葉県干潟町の取組み/68
<1>知っておきたい基礎情報/74
この六月成立の改正食糧法・何がどう変わった?/冷害下の米需給の現状/小麦の利用のされ方と国産麦の生産動向/大豆の利用のされ方と国産大豆の生産動向等
<2>販売に活かす消費拡大情報/80
米粉パン(新潟県黒川村、山梨県都留市)/おにぎり(「おむすび権米衛」)/讃岐うどん(香川県)/学校給食(埼玉県学校給食会、岐阜県学校給食会)
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