「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第24号:特集のねらい
グリーン・ツーリズムとは、「農村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」とされています(農水省「グリーン・ツーリズム中間報告書」、平成四年)。
農水省では、「新グリーン・ツーリズム総合推進対策」(平成十五〜十七年度)を新規に立ち上げ、「グリーン・ツーリズムの新たなスタイルを提案・普及するとともに、(中略)グリーン・ツーリズムビジネスの育成及び地域資源を活用(再評価)した農山漁村の魅力向上のための地域ぐるみの自発的取組みの支援を内容とする総合対策を関係省庁と連携しつつ戦略的に推進し、都市と農山漁村を双方向で行き交うライフスタイル(デュアルライフ)の実現や農山漁村地域の活性化を図り、もって都市と農山漁村の共生・対流の実現に資する」としています。
グリーン・ツーリズムに対し、主役となる農山漁村サイドは、当初、都市住民のニーズへ一方的に迎合した自己犠牲的交流への抵抗感・負担感が大きく、その取組みに消極的さが目立ちましたが、近年、全国的に「継続的滞在型交流」の個性的な実践への気運が芽生えてきています。
この特集号では、「滞在型」の交流人口を増やし、それを持続させる地域住民が主役の総合的「交流ビジネス」としてのグリーン・ツーリズムの考え方と実践を紹介しました。行政による規制緩和の動きを踏まえ、メッカともいえる「(大分県)安心院町の会員制農村民泊(農泊)」の深化した実践、他県での個性的な取組みも紹介(農村の小学校の廃校舎を宿泊施設に、など)。いずれの取組みも、物見遊山的観光から「人に会う旅」へ、がキーワードです。
また、「ワーキングホリデー」など「協働」の場づくりによる「交流型農業」の実現、「滞在型市民農園」での集落支援交流など、「定住人口増加」の実現につながる実践を取り上げています。
農村の未来は農家だけでは描けません。都市の人々と「農的な生活」の楽しさを共有する、持続的なビジネスが求められています。
本号を、日本スタイルのグリーン・ツーリズムビジネス実現のための参考資料としてご活用ください。
〈主な内容〉
○グリーン・ツーリズム富国論
――デュアルライフを実現し、農山漁村地域の活性化を図る
・・・農林水産省農村振興局地域振興課・グリーン・ツーリズム推進室 松村広一/4
○中山間地域の「条件有利性」とグリーン・ツーリズム
――「日本型ワーキングホリデー」による「条件不利地域」の克服
・・・東洋大学社会学部教授(環境社会学) 青木辰司/20
○日本のグリーン・ツーリズムはヨーロッパを超えたか
――グリーン・ツーリズムを見た目によるGT推進策への注文
・・・明治大学農学部教授 山崎光博/27
○「農泊」っておもしろい! 受け入れ家庭も訪問者もいきいき輝く安心院方式の「会員制 農村民泊」
――グリーン・ツーリズムの輪を、さらに広げる大分県安心院町の取組み/34
○多彩な交流事業から定住、経済循環へ
――“滞在型市民農園”の先進地・兵庫県八千代町の取組み/42
○小学校の廃校舎を活用してグリーン・ツーリズムの拠点に
――徳島県勝浦町坂本地区の「ふれあいの里さかもと」/50
○小学校の廃校舎を活用したビジネスとしてのグリーン・ツーリズム
――宮城県志津川町・旧林際小学校卒業生の「運営事業組合=民間経営」の取組み
・・・グリーン・ツーリズムライフシステム研究所代表・旧林際小学校運営事業組合事務局長 平櫛賢治/57
○農作業の楽しさを都市民に提供するワーキング・ホリデーで農家と農村の活路を見つける
――岩手県遠野市のワーキング・ホリデーの取組み/64
○“交流型農業”が地域産業の担い手を呼び寄せている
――北海道鹿追町の多彩なグリーン・ツーリズムの取組み/72
○日本最北のグリーン・ツーリズム 親類づきあいの延長から始まったファームイン
――北海道稚内市の「ファーム&スペース・レラ」、新田由憲さん、みゆきさん夫妻の取組み/80
○「ほんもの体験」にこだわる 飯田市のグリーン・ツーリズム
――この二月に「第一回全国ほんもの体験フォーラムin南信州」を開催
・・・飯田市商業観光課 竹前 雅夫/85
◎「農家民泊」の規制緩和情報――大分県・国(厚生労働省)/90
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