「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第27号:特集のねらい
◆日本農業の真の担い手とは?
「地域に信頼され、地域の農地を生かしつつ守り、水利などの資源や環境の管理を行なうリーダーとしての役割も果たしているような方々こそが、私はこれからの日本農業の真の担い手だということを痛感」。本号の農政改革座談会で司会を担当していただいた今村奈良臣氏の感想です(三五頁)。
「食料・農業・農村基本計画」は、おおむね五年ごとに見直すこととされており、その見直しに向けての作業・論議が昨年八月から進められ、この八月にその「中間論点整理」が食料・農業・農村政策審議会企画部会から公表されました。重点的に検討されたのが、(1)「担い手を対象とした品目横断的政策の導入」(直接支払いによる所得補償)、(2)「担い手・農地制度の改革」、(3)「環境や農地・農業用水等を保全する政策の確立」。
この号は、担い手問題と経営安定対策を中心に特集を組みました。座談会で「中間論点整理」で述べている課題を深めるとともに、担い手問題等の当事者を中心に意見・要望を語ってもらいました。いま最も大事なことは、「集落の農業を担う担い手の存在であり、集落内の兼業農家・高齢農家は担い手と協力して農業労働に汗し、富の分配により老後が安定し、担い手はそこから相応の利益を得ることができるシステムをつくること」(七四頁)ということになりそうです。
◆地域農業の将来を具体的に描くなかで
今後、この「中間論点整理」をたたき台に、新たな「基本計画」の策定に向けた国民的議論を進め、来年三月を目途に新たな「基本計画」が決定されることになります。その際、具体的に地域の農業の将来像を地域の人たち全員で考え、そのなかから誰が地域の農業をこれから担っていくべきか、誰に担ってもらうべきか、さらにはその経営安定策をどうするかを詰めていきたい。すでに策定・実施している地域ごとの水田農業ビジョンを検証するなかで、新たな展望が開けてきます。
「食料・農業・農村に関する国民的な議論が広く展開されることを強く期待」(「中間論点整理」)し、本号をお届けします。
〈主な内容〉
○農政改革座談会 どうする? 「担い手」育成と「経営安定」対策/4
――「食料・農業・農村基本計画」の見直しをどうするか
・・・今村奈良臣/皆川芳嗣/今井延子/本山博文/神山嘉弘/馬場利彦(発言順)
○〈座談会を終えて〉農政改革の推進力は誰か――地域から信頼され選ばれた担い手を
・・・東京大学名誉教授 今村奈良臣/35
○〈座談会関連資料〉「新たな基本計画に向けた中間論点整理について」より/39
〈「中間論点整理」資料〉「中間論点整理」(全文)/42 関連データ集/59 用語集/66
○農村集落に元気を起こす農業へ
・・・長野県・農業 小沢禎一郎/74
○農地・農業用水等保全施策のありかたに対する提案
・・・元山口県農林部参事 農村女性・むらおこし推進室長 藤井チエ子/76
○求められる底辺からの構造改革
・・・兵庫県立農林水産技術総合センター・部長(普及担当)付専門技術員 森本 秀樹/79
○りんご生産者の立場から見た「攻めの農業」実践の課題
――GAP(適正農業規範)と、品質の担い手としての小規模家族経営体
・・・農業生産法人・片山りんご有限会社 代表取締役 片山 寿伸/81
○在所からもの申す
――ミカン専業農家の夢が破れた立場から
・・・佐賀県・農業 山下 惣一/84
○農業高校からみた担い手の育成問題
・・・元埼玉県立熊谷農業高等学校長 埼玉県東松山市きらめき市民大学・常務理事 松本 重男/87
○農政の基本戦略は何か
――「食料自給率の向上」と「ふるさと保全」
・・・(財)地球環境財団・地球環境総合研究所・所長 北村貞太郎/89
○都市民の「食」と「住」の意識変革を 農村空間が領導するチャンス
・・・(社)農山漁村文化協会・専務理事 坂本 尚/91
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