「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第32号:特集のねらい
◆日本林業への“追い風”に乗って
新たな発想で「魅力ある山村づくり」を
都会に働きに出ていた団塊世代が定年を迎えるのを間近に控え、現在は「田舎暮らしの第四次ブーム」だとか。自然に囲まれ、ゆったりとした時間のなかで、心の充実や農業などに生きがいを求める人が増えている、と言ってよさそうです。ある人は、子どもの頃、野山を飛び回って遊んだ懐かしい思い出を胸にいだき、またある人は、“生きがい”の感じられる充実した余生を過ごしたい、と。農山村は、そうした人々を迎え入れる“受け皿”をどうつくるかが課題となっています。実際、「定年後、農山村への定住を望んでいる」人たちは、「適当な仕事がある」ことを移住するための条件としてあげています。
森林は、その管理が行き届けば、木材はもちろんのこと、きのこや山菜などの食べ物、浄化された水、新鮮な空気、美しい風景など様々な恵みをもたらしてくれます。そして、日本は世界でも有数の森林の国。かつて日本の農山村には、森林など地域資源を利用した“生業”が多様にあり、暮らしが成り立っていたといいますが、それも「高度経済成長期にドラスティックに解体」、そして現在、「林業という仕事や山村の暮らし、森林自体の魅力」を求めてやってくる人が増えているとのこと(三井氏、4頁)。そうした人たちの力も借り、新たな発想で山村ならではの豊かな森林・山資源を生産・生活に活かす、新たな「仕事」(森業・山業)を創出することが求められています。
この号では、多彩な「魅力ある山村づくり」への提言と実践を取り上げました。野の花や山菜、きのこなど、里山の“宝”総出で魅力をつくる取組み。林業をレクリエーション化する試み。林業の「地産地消」といえる「顔の見える木材での家づくり」や住宅産直。牛の林間放牧で海と山をつなぐ動きなどなど。
「日本林業には、暖かい“追い風”が強く吹いている」(村尾氏)、この“追い風”に乗って、農山村に元気・魅力をつくる取組みが全国に広がり、一人でも多くの人を農山村に呼び込むことを期待し、この特集をお届けします。
〈主な内容〉
○山村における地域資源の活用と都市住民との連帯を求めて
――画期的な「森業・山業創出支援総合対策事業」
三重大学生物資源学部教授 三井 昭二 /4
○日本もようやく「木の文化」の国に
――零細・分散型の森林所有が林業生産の未来を明るくする
元愛媛大学教授 村尾 行一 /12
○都市と山村を「森の恵み」と「人のふれあい」で結ぶ
――森に生きる林業立村100年、諸塚村の村づくりからの提案
諸塚村産直住宅推進室事務局長 矢房 孝広(文責) /20
○「森・里・海連環」で持続可能な社会の実現を
――「近くの山の木で家をつくる運動宣言」から6年を経て
OMソーラー協会理事長 小池 一三 /26
*林野庁のすすめる<森業・山業創出支援総合対策>資料集 /33
○野の花、木の葉、山菜、きのこ等々 里山の“宝”総出で魅力アップ
――山形県・西川町産業振興課と西川町総合開発(株)の「山の恵み交流事業」 /38
○山村に元気・魅力をつくる「森業・山業創出」のビジネスプラン /46
・自然をたっぷり楽しむ滞在型レクリエーション活動(千葉県丸山町)/・丸太を豪快に削り作る創作活動を楽しみながら収入を確保(和歌山県龍神村)/・檜間伐材による手作りのイス「ひのきっこ」(香川県さぬき市)の「ひのきっこ・小さなイスづくり運動」/・竹炭・竹酢が簡単につくれる「簡易竹炭窯」を考案・製作(宮崎県日向市)
○農・林・漁業が連携、牛の放牧で海辺の森林再生へ
――島根県松江市鹿島町「森林再生型放牧」の取組み /58
○森の恵みを活かした公共施設づくり 町産材100%で小学校と保育園を建設
――岩手県紫波町「紫波みらい研究所」と町行政、森林組合、製材業者、建築業者の取組み /66
○広がりを見せる「顔の見える木材での家づくり」 /74
・安曇川流域の山の木を活かしたこだわりの家づくり(滋賀県安曇川流域)/・地元材・能登ヒバと伝統技法・拭き漆仕上げにこだわる家づくり(石川県輪島市)/・北の森林のまちで誕生した「下川生まれ、下川育ちの家づくり」(北海道下川町)
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