「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第34号:特集のねらい
◆女性等のパワーが集落営農設立に大きな役割
「組合設立に当たって女性がパワーになってくれた」――兼業農家だけで、いち早く経理を一元化した生産組合を立ち上げた富山県黒部市の寺坪生産組合。そのリーダー役は集落に住む農協職員。設立に先立って、他県で集落営農に先進的に取り組む生産組合長から「集落営農とはこういうものなんだ、農産加工もできるんだ」と集落の女性に具体的に話をしてもらったと言います。同じく兼業地帯で協業組合を立ち上げた千葉県神崎町の立野ファミリー協業組合。リーダー役は、役場等に勤める若者たち。「家庭サービスの休みがとれるように」と、奥さんや両親を含め、ホンネで話し合った結果です。
集落での会合には、昔から家の代表者(男性)が出席するのが習わしのようですが、女性・若手(息子世代)、そして高齢者にも声をかけて参加できるようにし、「集落の農地・農業・暮らしをどうするか」の話し合いの場にすれば、様々な立場から多様な意見がでて、集落営農の実現へ向け、行動・実践が始まることを本号の先行事例が教えています。たしかに、高齢化・兼業化が進み「集落リーダーが不在で組織化の体制が整っていない」集落は多いかもしれませんが、各戸とも複数の参加ができるようにすれば、「集落リーダーになる人材は必ずいる」(北秋田地域振興局農林部普及指導課・三浦扶氏)はずなのです。
中心となる農家のいない集落で、なんとか集落営農(組織)を立ち上げようとしている現場に対し、農林水産省はこの春「集落営農育成・確保緊急支援事業」をスタートさせました。
この特集では、兼業化・高齢化の進んだ集落が、集落営農立ち上げに向け、一歩前進するための提言と先行事例を紹介しました。また、北海道の規模の大きな専業農家が、個別でなく、共同経営の集落法人を立ち上げた例も紹介しましたが、ここでも女性の知恵が新しい展開を支えています。
「女性や高齢者、担い手など集落のみんなが、安心してこれからも集落で暮らしていけるよう、農業・農村のシステムを築き上げていく」(兵庫県立農林水産技術総合センター・森本秀樹氏)ための話し合いの素材として、この特集号をお届けします。
〈主な内容〉
○集落営農の成否の鍵は 女性パワーが握っている
――女性たちの思考回路で元気な「地域営農システム」を
山形大学農学部教授 楠本雅弘 /4
○話し合いからの「おちこぼれ」をなくすにはどうするか
――小規模農家も大規模志向農家も進んで合意形成を
兵庫県立農林水産技術総合センター 森本秀樹 /10
○集落リーダー育成支援の場 「集落営農推進役員会」の設置を
――徹底討議から集落営農(案)作成を
秋田県北秋田地域振興局農林部普及指導課 三浦 扶 /18
○地域内外の知恵を取り入れた「集落起業」のススメ
――中山間地域の空洞化を乗り切るための個と地域の協働を促すマネジメントとは
関東農政局地域整備課・松村広一 /24
○女性が理解することで 全員兼業農家の生産組合設立がスムースに
――富山県黒部市・寺坪生産組合設立への取組み /32
○家庭サービスの休みがとれて みんなで農業が守れる集落営農を
――千葉県神崎町・立野ファミリー協業組合の取組み
神崎町・まちづくり課 石橋公夫 /40
○集落を守り、小規模でも山間地域で生きていける農業を実践
――島根県美郷町比敷集落の農事組合法人「ひじきドリーム」の取組み /48
○農村の活性化を目指し八集落の農家が大結集 まずは転作分で事業を開始
――京都府亀岡市・農事組合法人「ほづ」の取組み /56
○地域の人たちに雇用の場を提供する 一集落一農場の農業法人を実現
――宮崎県都城市・農事組合法人「きらり農場高木」の取組み /64
○県内一の高齢化村の農業を担い、周年雇用も実現
――福島県昭和村・有限会社グリーンファームの取組み /72
○北海道型集落営農は、所得倍増計画だ
――中富良野町地域水田農業推進協議会と「(農)Gウェーブ西仲」の取組み /80
◆<参考資料>集落営農育成・確保緊急支援事業等
(農林水産省経営局 経営政策課) /88
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