「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第35号:特集のねらい
◆消費者・実需者のニーズに応えた米つくり
「コシヒカリより安くて、しかも歯応えのある美味しさが、若い層に受け始めた」(石川県野々市町、ハナエチゼン)
「これまで手土産に持っていくものがなかったが、今では『吾左衛門寿し』がある」(鳥取県大山町、ヤマヒカリ)
いずれも硬めのお米。これまでは、“パサパサしている”と敬遠されがちだったが、地元で評判を呼び、静かに売れ筋になりはじめています。地域の条件を活かし、品種のもつ個性を伸ばす米つくり、消費者・実需者のニーズに応えた米つくりに取り組んできた結果。売れ行きは上々で、来年は作付けをもっと増やしたい意向です。
現在、美味しいお米ということで、コシヒカリを筆頭に知名度の高い特定品種へ作付けが集中しています(17年産、90.4%)。そんななか、お米の消費量は相変わらず減っており、価格は低迷気味。「消費者のライフスタイルの変化や食生活の多様化等を背景に、米の消費量に占める外食・中食等の割合が上昇し、家計消費の割合は低下している」(「平成18年度食料・農業・農村白書」)なかでのことです。
こうしたなか大健闘しているのが、例えば冒頭の2つの事例ですが、長年、お米の産直や直売に取り組んでいる4人に、実践のなかから提案していただきました。「“若者層に”とターゲットを絞って、『買ってもらえるお米』になるよう努力。硬めのお米は、お寿司や、どんぶり物、外食向けにピッタリ」(林氏、12頁)、「工夫してつくったブレンド米を消費地に持ち込んで、母ちゃんたちに“味くらべ”をして納得してもらいながら、定着させてきた」(平田氏、17頁)、「お米の産直の基本は『信用を築く』という一語に尽きる」(上田氏、22頁)、「人間同士の信頼関係があって、農産物が買っていただける」(島氏、28頁)。
この号では、消費者や実需者のニーズを重視し、地域や品種の個性を活かした「米つくりと販売」の提言と先行事例を紹介しました。お米の売れ行きのよい地域では、米の生産目標数量が増えています。競争ではなく、需要の掘り起こしで安定生産・販売を実現するために、この特集をお届けします。
〈主な内容〉
○消費者・実需者の「低価格」志向にどう応えるか
――消費者視点・マーケティングを基礎とした「加工用米」の開拓を軸に
高崎経済大学地域政策学部教授 吉田俊幸 /4
○需要を伸ばすお米の売り方、実践からの提案
・「買ってもらえるお米」づくりを
――“硬めのお米”ハナエチゼンは若者がターゲット
石川県野々市町(有)林農産社長 林 浩陽 /12
・地域の環境を守る 美味しいブレンド米で安定産直
――“味くらべ”しながら消費者からの信頼を得る
(農)山形おきたま産直センター組合長 平田啓一 /17
・お米の産直成功 七つの大切なこと
――熊本県の中山間地域(山都町)における「合鴨米」産直18年の取組みから
日本産直生産者協会会長 上田博茂 /22
・消費者と地域自然を守ることが これからの「売れる米つくり」
旭川市 農業生産法人(有)西神楽夢民村代表 島 秀久 /28
○食味に自信の米を地元業者等へ直接供給 東京の小中学校の学校給食へも供給開始
――山形県・JA鶴岡の「農協のこめや」が米の売込み /34
○町長やJA組合長を先頭に米販売 地元でも東京でも積極的に展開
――北海道・当麻町水田農業推進協議会の「需要に応じた米作り」の取組み /40
○良食味地域も、そうでない地域も集落ごとの特性を活かし顧客の要望に応じた米をつくり分ける
――福岡県・JA筑前あさくらの取組み /46
○実需者ニーズにこたえて 寿司好適米ヤマヒカリを契約栽培
――鳥取県大山町・JA(生産者)と地元食品業者が連携して生産を伸ばす /54
○棚田米と極低たんぱく米の二枚看板で 米の売上げを伸ばす
――佐賀県唐津市相知町・蕨野棚田保存会とJA唐津佐賀松浦地区の取組み /62
○飼料イネ栽培の導入で売れる米をつくりやすくする
――滋賀県・日野町水田農業推進協議会と日野アグリサポート等の取組み /68
知っておきたい基礎情報/加工用米に新しい動き/新たな米の品種開発/スギ花粉症緩和米の開発 /72
◇〈新連載〉農林水産省の重点政策関連情報コーナー /81
農地・水・環境保全向上対策の推進について/担い手の育成・確保に向けて/地産地消関連情報、全国&世界交流のお知らせ
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